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「小さいころから動物が好きでした。ペットショップで働きたいなぁと母に何げなく言ったら、『それならトリマーなんて、どう?』と提案され、素直に『それだ!』って。以来、ずっと憧れの仕事でした。卒業文集にも書いてあったと思います(笑)。小学校でもう、進路が決まっていたようなものでしょうか」
高校卒業にあたり、家族から就職を勧められるも「トリマーになりたいから」と、就職活動もそこそこに、トリミング専門学校の門を叩く。地元の北陸から名古屋へ。貸与奨学金をもらい、授業後はアルバイトをしながら、2年間の学生生活を送った。
「好きなことを勉強していたので、生活費の捻出のためにアルバイトをするのは、全く苦にはなりませんでしたね。それよりも仕事がきついと思ったのは、専門学校卒業後、ペットショップでトリマーとして働き始めてから。週6日、朝8時から夜8時までの勤務でした。さすがに体調を壊して、1年半で辞めたんです。それで、これからどうしよう、と」 |
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そんな時、紗弥香さんが思い出したのが、高校2年の時に行った語学研修。国際文化コースに在籍していた紗弥香さんは、シドニーで3週間の語学研修を経験していた。
「語学学校に通うのに、生徒たちはそれぞれ、自分の希望にできるだけ沿うような形でホームステイ先を割り当てられるんです。私?もちろん『動物がいる家』と希望を出しました(笑)。念願かなって、大きな犬がいて、暖炉があって、というイメージ通りの大きな一軒家の家族にお世話になって。この3週間がとても楽しかったので、またオーストラリアに行ってみたいなと思ったんです。半年後、ワーホリでシドニーに出発しました」
英語に触れながら生活し、働くこともできる――海外でのライフスタイルに漠然と憧れを抱き、ワーキング・ホリデー・ビザでオーストラリアに渡る若者は多い。もちろん、ただ楽しかったで終わることを良しとするなら、それもひとつだろう。ただ、自分らしさや、本当に自分のやりたいことを探しに来るのであれば、自分の背中をもうひと押しできる力が求められるのかもしれない。
「ホームステイやシェアをしながら語学学校に通いました。トリマーの仕事を日本でしていたこと、できればオーストラリアでその仕事をまたしてみたいということを、機会があれば周囲に伝えるようにしていました。たまたま学校の先生が、それならあそこの通りに店があったよ、って教えてくれて。先生もただ見たことがあるだけの店だったので、紹介してもらうとか、話をつけてもらうとか、そんなことは一切なく、自分でレジュメ(履歴書)を作って、飛び込みで面接をお願いしに行きました」
その結果、みごと採用が決定。「飛び込みには勇気が要りましたが、やはり、行ってみるものですね」と紗弥香さんは笑顔を見せる。恐れを知らない行動派、と言うよりは、いかにも気立ての優しいお嬢さんといった風貌である。レジュメを持ち、英語で直談判に向かうということは、いかにオーストラリアで働きたいかという強い意欲の表れなのだろう。
オーストラリアは資格と経験がモノを言う社会である。しかし、日本のトリマー、すなわちオーストラリアで言うところのグルーマー(Groomer)あるいはグルーム・アーティスト(Groom Artist)には、オーストラリア国内で取得しなければいけない資格はない。紗弥香さんのように日本で専門学校を卒業し、経験を積んでいれば、仕事を見つけるのは決して難しいことではない、と彼女は言う。
「オーストラリア国内で技術を判断する資格考査がないこともあり、手先が器用で、グルーミングが丁寧だからと、日本でトリマーの経験を積んだ人がそのまま雇用機会に恵まれ、重宝されることも多いようです。一般的に勤務態度がまじめな人も多いですし(笑)」 |
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仕上がったペットと一緒に。
着用のエプロンは毛が付かないビニル製で、仕事中は必須 |
ワーキング・ホリデーの有効期限である1年を過ごした紗弥香さんは日本へ帰国。しかし、紗弥香さんの仕事ぶりを評価したグルーミング・サロンのオーナーから「ビジネス・ビザ*1)を出すから帰っておいで」と言われ、急きょ観光ビザで、再びシドニーの地を踏んだ。しかし、やって来たはいいものの、移民局からビジネス・ビザの許可がなかなか下りない。
基本的にオーストラリア人の雇用機会をできるだけ確保したい連邦政府が、トリマーのように技能資格がなく、オーストラリア人でも雇用の機会が十分にある職種には、外国人に対して就労ビザを許可するのに難色を示す傾向があるからだ。
技術と経験があるのに、稼ぎ、自立するという、社会に出るのに当たり前のことができない苛立ち。観光ビザの期限は迫り、紗弥香さんは結局、ビジネス・ビザ取得を諦めた。代わりに申請したのが「スペシャル・プログラム・ビザ*2)」。要は「文化交流や見聞を広めるためのビザ」で、働くためでもなく、学校に通うためでもなく、たとえば、日本語教師アシスタントなど、文化の相互理解を深めるための特別プログラムに適用する1年間有効のビザである。紗弥香さんはインターンシップ会社に登録し、プログラムを受けることにした。
「オーストラリアでグルーマーの資格試験を新たに受けるわけでもないし、経験は充分に積んだと見なされ、実はトリマーとしての技術研修インターンではなかったんですが、オーナーのサロンでショップ・マネジメントの研修を受けるという名目で、ようやく認められて」
有給インターンではあったが、賃金は正規雇用の7割程度。週2〜3日は語学学校に通ったり、図書館で本を読んだりと、英語力を伸ばすための時間にも充てた。一方、仲良くなった友人が次々に日本へ帰っていく寂しさや、呼び寄せてくれたオーナーに対して仕事の質で応えられているのかどうか、ずいぶん悩んだ時期もあった、という。「本当にこのままシドニーに居続けていいのか?」
しかし「娘のようにかわいがってもらっている」オーナーのもとで働き続けたいという意思は変わらなかった。紗弥香さんはスペシャル・プログラム・ビザ期限終了後、弁護士と相談しながらビジネス・ビザに再チャレンジ。ようやく許可が下りたのである。 |
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スペシャル・プログラム・ビザ滞在中、
悩んでいた時に心の拠り所となって以来、
礼拝に参加している教会で:最左 |
日本人の細やかな気配りと技術力が、オーストラリアでも高く評価されているというトリマーの仕事。「お客さんは仕事の出来を、きちんと見ているんですよね。仕上がった自分のペットの劇的な変化に驚くやら喜ぶやら。ペットをきれいにすることはもちろんですが、お客さんの反応を見るのはいつも楽しいです。お客さんには、常にペットに気をかけてあげている人もいれば、手の施しようのないくらい毛玉だらけになったペットを連れてくるような人もいますけどね(笑)。ペットに引っ掻かれた傷もよくできますし、腰や肩が痛くなったり、集中しすぎて頭痛になるなんてことも(笑)。体力勝負なんです」
ショップ・マネジメントとしてインターンをした経験があるため、肩書は「カスタマー・サーヴィス・マネジャー」。客との交流はもちろん、電話応対なども仕事のうちだ。ビジネス・ビザを取得してから1年が経過した今、客とのやり取りが面白くなってきた、と紗弥香さんは目を輝かせる。
「今は、店にいるほかのスタッフのトレーナーの役割も任せられています。来年にはTAFE*3)でトレーナーとしての技術を学ぶコースを勉強するつもりです。将来的には永住権を取得して、オーストラリアで自分のグルーミング・サロンを持ちたいです」
就労ビザ取得の思わぬ壁に折れることなく、夢に向かって少しずつ前進していくことは可能なのだと思わせてくれる紗弥香さん。こうしてオーストラリアに生き続ける日本人女性も、決して少なくないのだ。 |
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平日の休みを中心に最近始めたゴルフ。
今いちばん没頭しているアクティビティかな!(笑):右 |
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| 8:00 |
自宅出発
「最近、車の免許を取得して、車通勤になりました!快適です」紗弥香さん談 |
| 8:30 |
始業
「一人だいたい6匹くらいが毎日の持ち場です。ランチは時間ができたら20〜30分で」紗弥香さん談 |
| 17:00 |
帰宅
「週2回程度、終業後にそのまま友人と外食することが多いです」紗弥香さん談 |
| 17:30 |
夕食
「仕事終わりはおなかがとても空いているので、結構早めの時間帯です」紗弥香さん談
テレビを見たり、自宅にいる犬や鳥と遊んだり。
インターネット、読書など |
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| 8:00 |
教会へ。礼拝のセットアップ
「オーストラリアに来てから洗礼を受けました。日曜は日本人の集まる礼拝があるので毎週参加しています」紗弥香さん談 |
| 9:00 |
起床
「時々、昼まで寝ていることも(笑)。ゆっくり朝食をとって、掃除と洗濯をします。それから買い物やゴルフなどのアクティビティに没頭!」紗弥香さん談 |
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| やりたいことを口に出すこと、でしょうか。「オーストラリアで仕事をしたい」と周囲に言っていたから当時の語学学校の先生から情報が得られたわけですし、「オーストラリアに住んで仕事がしたい」とオーナーに明確に意思を伝えていたからビジネス・ビザを出すよと呼び戻してもらえました。それから、相手から言われたことに対しては躊躇せずに。少しでもチャンスがあると思ったら受けることです。それから自信を持つこと。私も途中で失いかけたことがありましたが、これまでにやってきたことを信じることが大切と思います。 |
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