夏苅先生の講演会

IMG_9633

昨日は夏苅先生の講演会に行ってきた。タイトルは「心病む人が自立するために必要なこと」~当事者・家族・精神科医の3つの立場を持つ私から伝えたいこと~

IMG_9635

かつて、私が統合失調症の母親への対応で悩んだ際、一番役にたったのは、同じ体験をしているご家族の話と病気の当事者の方の体験談だった。

専門職では、日常をともに見てくれている、地域活動支援センターのスタッフのアドバイス。生活そのものを見ていない精神科医は、まるで他人事のようなアドバイスや、理想的だけれど現実感のない話ばかりで、ほとんど役に立たなかったのだ

夏苅先生の話はとても現実的で、腑に落ちる話ばかりで、最後までうなずきながら聞いた腑に落ちる話というのは、心に入ってくる。心に入ってきた内容は忘れないものだ。おおいに刺激を受けて帰ってきた

夏苅先生は当事者・家族と医師の間の壁を取り除くために、動いてくださっている。家族会で「主治医とうまくコミュニケーションできない」という相談を多く受けたことが、この壁について考えるきっかけにもなったそうだ。

かくいう私も、母の主治医とのやりとりには、相当に苦労してきた家族である。母の主治医は発病からの36年間に13人ほど変わり、医療機関は民間の精神科病院が5つ。大学病院が1つ。町のクリニックが2つ。計8つにかかっている。

家族の私の評価としては、本当の意味で対等に話ができた医師は2人だった。医師と対等に話せるというのは、本当に「楽」妙な人間関係(上下関係や医師の機嫌など)を気にせず「病気のこと」そのものに集中できるからだ。

以前ちゅまログでも紹介したけれど、夏苅先生が当事者・家族と医師の壁をとりのぞくためにやっている活動のひとつである、有志の先生方と作った「質問促進パンフレット」を講演会でいただいた。直接手に取ってみたが、とても見やすい。

IMG_9636

ネットからもダウンロードできるので、興味のある方はこちらを→クリックしてください

このパンフレットがあっても、医師に質問をするのにとても勇気のいる患者さんも多いとのこと。また、待っている他の患者さんを気遣って、時間をとらせては申し訳ないと遠慮される方もいるそうだ。

夏苅先生は医師側からのアドバイスとして、

『「今日はこの質問を教えてください」という聞き方をするとよい』とおっしゃっていた。「今回はこの質問」という形で聞くと、他の患者さんも待たせ過ぎないし、医師も安心して答えやすいそうだ。

医師は「質問される」ことで考え伸びるので「質問する」ことをあきらめないで粘ってほしいとのこと。

そして、現在やっているクラウドファンディング「精神科医のコミュニケーション能力」の評価の冊子制作企画は、当事者・家族の本音を医師や医療者に伝える(届ける)ためのものだ。家族や当事者は他の人たちがどんな評価をくだして、どういうところを見ているのかの参考になるだろう。

昨日夏苅先生の想いを改めて聞いて、この冊子を手に取るのがますます楽しみになり、より多くの人の手に渡ってほしいと思った

私は機会があると、精神医療業界以外の方には「精神疾患に興味がおありですか?」という質問をするのだけれど、「周りにいないので、まったく興味がありません」という答えが返ってくることがある。

タキさんにその話をしたら、

「高齢者介護の仕事をしていると、精神科はとても身近だよ。だって、認知症でかかる診療科だから」との答えが返ってきた。

精神科は誰しもが関わるかもしれない診療科だ。もし、自分が、自分の家族が、友人が、かかった時に安心して受診できる、信頼できる医療機関であってほしいと切に願う。医師とともに対等な関係で、協働できる診療になりますように…。

夏苅講演会

講演会に行くことを知らせていなかったので、先生のリアクションが面白かった