レビュー
吉永小百合劇場を堪能
なぜ私は、こんなにも吉永小百合を観たいのか? たおやかな美しさ! 70オーバーにして、この透明感! 吉永小百合さんが出演しているだけで「映画」になる。 おそらく最後の“銀幕のスタア”でしょう。 見ているだけで、うっとりと幸せな気持ちになれるところは、オードリー・ヘップバーンの映画を観たい気持ちと限りなく近い。 もはや彼女を見られるだけで満足なのですが、表面的な美しさだけではなく内に秘めた芯の強さにも惹かれている気がします。 真っ向から戦いはしないけれども、絶対に折れない。そんな非暴力非服従のストイックさに痺れます! ようは、運命に翻弄されながらもひたむきな小百合ちゃんが見たいのです。( ̄∀ ̄) 『いのちの停車場』は、そんな魅力が堪能できました。 西田局長が探偵ナイトスクープを引退されてから、とても心配しています。 車椅子の役が多いように感じますし、体調がおもわしくないのでは? それぞれに日本映画を引っ張ってきたお二人の共演はとても貴重ですし、これからの1本1本をファンとして丁寧に見守る所存です。( ̄^ ̄)ゞ すごく軽めの演技に終始されていましたが、本当のラストはビシッと決める。 医師としての言葉がズッシリと響きました。 すごく重いテーマに言及するので、欲を言えば、もっと深く切り込んで欲しかった。 もちろん泣く気満々で観たし、実際にかなり泣けましたが…なんだか音楽と照明に泣かされた気がしてなりません(^◇^;) いい感じの「感動」に着地させられたような…。 お二人の葛藤する演技をもっと見たかったなぁ。 タブーに挑むようなエグい映画が好みなので、つい勿体ないと感じてしまいました。 でも、吉永小百合さんにエグさは似合わないですね。 失礼しました; そんなお二人から日本映画のバトンを引き継ぐのは、松坂桃李くんと広瀬すずちゃんってことですかね? 役者の芝居で見せるシーンが多く、そんな思いがよぎりました。 なかでも、田中泯さんの渾身の演技が素晴らしい!! 田中泯さんは、どの映画にも重厚な存在感を刻みつけていますが、人間のギリギリの姿に鬼気迫るものがありました。 すっかり日本の映画になくてはならない方ですね。『HOKUSAI』も楽しみ。 広瀬すずちゃんも、セリフに繋げにくい感情を自分の中に落とし込んでいて、さすがでした。 おそらく原作のエッセンスを2時間に凝縮した作りになっていると思うので、端折られる部分があるのは仕方ない。 そこを繋げられるのが、映画に必要とされる俳優さんなのでしょうね。 思いのほか子役が良くて。 患者さんの女の子はもちろん、記号としているだけのように見えていた男の子が突然イキイキしだしたのには驚きました。 個人的には、ちょっとしたところが気になってしまって、ストーリーに集中出来なかったのが残念でした。 海外ドラマのERのイメージが強すぎて、セリフのスピードを遅く感じてしまったり。 家の間接照明にも違和感があって、やっぱ美術の先生だから歳をとってもこだわりがあるのか??とか。 とは言え「泣ける映画」確定です。 私の涙なんて安物なのでアテになりませんが。ほぼ2本に1本の割合で泣いてますから。 歳をとるごとに涙腺がゆるゆる。 「泣けました」と言って喜んでもらえるのなら有難い。