たちあがる女

2019-02-19
(C)2018-Slot Machine-Gulldrengurinn-Solar Media Entertainment-Ukrainian State Film Agency-Koggull Filmworks-Vintage Pictures

<第91回アカデミー賞(R)アイスランド代表作品>生きていく中で一番大切なものを気付かせてくれる、ユーモア溢れる人間ドラマ

風光明媚なアイスランドの田舎町に住むハットラは、セミプロ合唱団の講師。彼女は周囲に知られざる、もう一つの顔を持っていた。謎の環境活動家“山女”として、密かに地元のアルミニウム工場に対して、孤独な闘いを繰り広げていたのだ。
そんなある日、彼女の元に予期せぬ知らせが届く。長年の願いだった養子を迎える申請がついに受け入れられたのだ。母親になるという夢の実現のため、ハットラはアルミニウム工場との決着をつけるべく、最終決戦の準備に取り掛かる――。

処女長編作『馬々と人間たち』で鮮烈なデビューを飾り、アキ・カウリスマキやロイ・アンダーソンの後に続く、北欧の才能と目されるベネディクト・エルリングソン監督の最新作。本作は、ジョディ・フォスター監督&主演でハリウッドリメイクされることが決定している。
雄大なアイスランドの自然と叙情的な音楽に彩られた現代のおとぎ話ともいえる物語は、とぼけた味わいとコミカルな笑いを醸しながらも、いまの人間社会において見逃してはいけない問題を皮肉たっぷりに描いている。
「自分らしく生きる一人の女性」を通して、人間の強さと優しさ、そして寛容を謳い上げ、生きていく中で一番大切なものを気付かせてくれる。

2019年アカデミー賞(R)アイスランド代表作品
2018年カンヌ国際映画祭 批評家週間 劇作家作曲家協会賞受賞

3月9日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開
公式サイト

キャスト

ハルドラ・ゲイルハルズドッティル、ヨハン・シグルズアルソン、ヨルンドゥル・ラグナルソン、マルガリータ・ヒルスカ

スタッフ

督・脚本:ベネディクト・エルリングソン『馬々と人間たち』
2018年 / アイスランド・フランス・ウクライナ合作 / アイスランド語 / 101分 /
カラー / 5.1ch /英題:Woman at war / G / 日本語字幕:岩辺いずみ
後援:駐日アイスランド大使館
配給:トランスフォーマー

レビュー

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なぜ、彼女はたちあがるのか

評価: ★★★★★ (4点) 投稿者:とえ2019-03-12

これはなかなか面白い映画だった! 原題は「Woman at war(戦う女)」 アイスランドの田舎町に暮らす主人公の女性ハットラが戦う話である では、ハットラは何と戦っているのか 彼女が戦う相手は、地元に進出してきた中国系の工場である ハットラは、その工場が撤退することを願って、工場につながる送電線を切り続ける いつか政府に逮捕されるかもしれないという恐怖を感じながらも、国と工場に立ち向かっていく なぜ、彼女はそこまでして戦い続けるのか そこには、アイスランドならではの理由がある アイスランドは、国土の約11%が氷河に覆われている そのため、温暖化が進んでその氷河が溶けたら、アイスランドの美しい景色は失われ、国土が水で溢れてしまうのだ 彼女が戦う理由はそれだけではない ハットラに念願の養子縁組が決まり、娘ができることになった だからこそ、将来、娘が生きる未来を考えて、このまま、環境破壊を続けさせてはいけないと考えたのだ そして、これは、ハットラとアイスランドだけの問題ではない 日本にだって、黄砂と共にやってくるPM2.5による健康被害が心配されている しかし、そのことに対して、誰も具体的な策を練ろうとはしない だから、ハットラが立ち上がったのだ そして、この物語では、アイスランドと共に、重要な意味を持つ国としてウクライナが登場する なぜ、ウクライナなのか ウクライナは、冷戦時代のアメリカとの競争で、急激な工業化を行った結果、チェルノブイリ原発事故が起きた国である その後、ウクライナはどうなったのかという映像がここで描かれるのだけど、それは、工業化したアイスランドの未来を暗示している 便利になって、町が豊かになっても、人々が暮らせない土地になってしまっては意味がない… ハットラは、女性だからこそ、美しい景色と、草花や、未来の子供たちの心配をするのだ この映画を観たジョディ・フォスターは感動し、ハリウッドでの リメイク権を買ったのだという アメリカでは、トランプ大統領が「温暖化など起きていない」と言い、工業化を進める宣言をしている そのアメリカで、ジョディ・フォスターがどう立ち上がり、戦うのか その企画が進んで、トランプ大統領の任期中に映画化されることを願っている これは、今、世界中で起きている問題なのだ