レビュー
固定概念との闘い
野球少女と聞くと『野球狂の詩』の水原勇気が思い浮かぶ世代なので、華奢で小柄な主人公の頑張りを応援せずにはいられません! ストレートに心に響く物語でした。 女子野球という選択肢もあるなか、あくまでもプロにこだわる主人公の無謀とも言えるチャレンジに、最初は否定的だった周りの人々が動かされていきます。 登場人物たちの成長や心の変化がドラマの醍醐味だとすると、それぞれの物語がコンパクトに詰め込まれているので、見どころが盛りだくさん! 幼馴染とのエピソードは爽やかだし、女子選手のエピソードは胸熱。 韓国の社会問題も描かれるので、見る人によって響くエピソードが違うと思いますが、私の心に響いたのは、主人公スインと母親との関係でした。 なんでですかね…。母親と娘って、つい言い過ぎて傷つけてしまうんですよね。 ちょっとした言い方に腹が立って、売り言葉に買い言葉で。他人には絶対言わないような言葉を投げてしまったり。 同性で分かり合える部分が多いから、良くも悪くもお互いに遠慮がない。 母親は娘の中に過去の自分を見て助言したくなり、 娘は母親の中に自分の未来を見て反発するのかもしれませんね。 身につまされます(-_-;) とにかく母親役のヨム・ヘランさんの、リアルな存在感と繊細な演技が素晴らしくて貰い泣き。(;ω;) 『無垢なる証人』も観たくなりました。 投球スピードだけが全てでは無い。 野球界の固定概念を捨てて、選手の個性を活かしたパフォーマンスが「どれだけチームに貢献できるか」で評価して欲しい。 そんな思いでスインの為に奔走するコーチですが、その考えに至ることでコーチ自身も救われたと思えます。 選手の特徴を見抜いて的確なアドバイスが出来ることも特別な才能。 自分の個性を活かしたパフォーマンスで「野球界」に貢献していると言える。 コーチの夢も一緒に背負ってプロを目指すスインですが、既にコーチはスインとの出会いによって自分自身の新たなポジションを掴んだのだと思えました。 …ってことは、監督が一番の策士かも。素敵すぎます。(*≧∀≦*) そんな固定概念との闘いのなか、“女だから”という理由で苦労しているスイン自身ですら、母親に手料理を要求したりする。(-_-) そこは家族で助け合って父親が料理をしても良い筈では? 身についた固定概念の根深さを感じますが、それでも挑まないことには何も始まらない。 スインの背中を見て、次の世代も繋がっていく。 爽やかな高揚感が胸に残る映画でした。