J005311

2023-03-13
(C)2022『J005311』製作委員会(キングレコード、PFF)

第44回ぴあフィルムフェスティバルで満場一致のグランプリ受賞!暗闇で彷徨う ふたつの魂が生んだ、切望の物語

神崎(野村一瑛)は何か思い詰めた表情で、街へ出かける。タクシーが捕まらず、背中を丸め道端に座り込んでいると車道越しにひったくり現場を目撃。一心不乱に走り出した神崎は、ひったくりをしていた山本(河野宏紀)に声をかけ、100万円を渡す代わりにある場所へ送ってほしいと依頼する。山本は不信に思いつつも渋々承諾し、二人の奇妙なドライブが始まった。気まずく重い空気が漂う中、孤独な二人が共に過ごす歪な時間。この旅路の行きつく先は―。

新人俳優・野村一瑛と、今回初監督にも挑んだ河野宏紀が主演を務めた本作は、世間に取り残された孤独感を痛々しく描き切り、生きづらさを抱えた二人が己を投影し作り上げた意欲作。なお、『J005311』というタイトルは、光ることなく浮遊していた二つの星が、奇跡とも呼ばれる確率で衝突し、再び輝き出した星をもとに名づけられた。

4月22日(土)より、ユーロスペースほか全国順次公開
公式サイト

キャスト

野村一瑛、河野宏紀

スタッフ

監督・脚本・編集:河野宏紀
撮影:さのひかる/録音:榊 祐人/整音:榊 祐人、河野宏紀/衣装:河野宏紀、野村一瑛
撮影協力:ROCKY、和田裕子、谷口巳恵
英語字幕:蔭山歩美/字幕チェック:Janelle Bowditch/英語字幕データ制作:廣田孝
【2022年/日本/カラー/DCP/90分】
映倫:G-123858
配給:太秦

レビュー

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PFF2022文句なしのグランプリ

評価: ★★★★★ (5点) 投稿者:Shiron!2023-03-24

背中から始まる映画に弱いので、しょっぱなから引き込まれました。 ダルデンヌ兄弟監督を彷彿とさせるハンディ長回しがたまりません。 結局私は、見えていない部分を覗き込みたいのです。 誰?何?どこ? 最小限のヒントを読み取ろうと、ポンコツ頭がフル回転して、人物の心情に入り込んでいきます。 一人暮らしの身支度は、遅刻しているのに急いでない。 窓の外と同じ息苦しさから、ただならぬ空気を感じとります。 車道に出ただけで、まさか轢かれる気なのか?と心配してしまう程。 優しすぎるが故の生きづらさ。 ATMの外で待つシーンとタバコを拾うシーンが見事。これまでの彼の生き方が垣間見えて、胸が詰まりました。 常にギリギリ感が漂っていますが、とくに神社のシーンは祈るような気持ちで見届けました。 相容れない筈の二人が、かけがえのない存在になっていく。 車の横で所在なさげに立つヤマモトが、まるで捨てられた子供のように見えて…。 不意にヤマモトから、大切な人を失ったイメージが湧き上がってきました。 ネグレクトだったのか、不慮の事故だったのか。。。帰ってきてほしいと待ち続けて叶わなかった孤独な魂が見えました。 怒りと悲しみと、無力だった自分への苛立ちの中で生きてきて、二度と目の前の人を失いたくない思いが行動させたのか。 カンザキはヤマモトに救われて、ヤマモトもカンザキに救われた。 緊張感を維持した長回しは、役者には相当キツイ撮影だと思うのですが。 そもそも役者のお二人なので、むしろ望むところだったのでしょう。 その実力を見せつけられました。