レビュー
新しい“カウボーイ”の西部劇
西部開拓時代、男らしい男たちの気を悪くさせないようにしている料理人が未開のオレゴン州で一匹狼の中国人移民と意気投合 その地へ初めてやってきた牛からミルクを盗み、それで作る甘いドーナツで一攫千金を狙う新しい“カウボーイ”の西部劇 キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのリリー・グラッドストーンも出てます
牛乳を盗む…誰から?
どの映画もファーストシーンにはこだわっていると思うので、そこを語るのは野暮なのですが…それを承知のうえで。 四角い画面(スタンダードかな?)を活かす演出に心を掴まれました!! ゆっくりと近づいてくる船… まだ船……まだ船……船デカッ!笑 映画で見えていることは切り取られている一部に過ぎないことを再認識させられると同時に「このサイズ感の驚きと興奮をもたらす映画ですから。」と観客に向かって語りかけてくる。 実際、物語の展開がスリリングで、終始ドキドキハラハラ。 先に結末を知っているにもかかわらず、ラストは祈りながら観ていました。 「どうか、どうかお願いだから!」 お願い?誰に?何を? ここまで2人にのめり込んでいる自分に驚きました。 悲しくも幸せな、複雑な高揚感に包まれます。 2人が出会ったから夢が描けた。 腕は良いけど優し過ぎる男と 商売っ気はあるけど元手が無い男 1人で完璧な人間を目指すのは大変だけど 2人で補い合えばちょうど良い。 四角い窓から薪割りするキング・ルーの姿が見える…自然に箒を手に取るクッキー。 これをワンショットで納めるセンス! 最高やね。 家族でも恋人でもない、友情ともちょっと違う。でもお互いに必要不可欠な存在。 あらすじにも書かれてある通り、ミルク泥棒の話しです。 でも牝牛は自分の仔牛の為に母乳を蓄えているわけで…そもそも人間はそれを横取りしているのよね。 しかも本人の知らないところで売り買いされて連れてこられて。 クッキーの優しい心に触れて、感謝の気持ちが溢れてきました。 過去から地続きに今がある。 1人でも生きていける世の中ですが、お互い頼り合ったほうが半分で済むこともある。 人間も動物なんだし、みんなの凸と凹を合わせて一人前で良いんじゃない?