第78回カンヌ国際映画祭にてパルム・ドール(最高賞)を受賞した、イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督最新作『シンプル・アクシデント/偶然』の本予告と本ポスターが公開された。

本作は、不当に刑務所に投獄された人々が、復讐を果たそうと試みる姿をスリリングに、ユーモアたっぷりに描いた復讐劇。パナヒ監督自身の投獄経験と、同じ境遇の人々のリアルな声から着想を得て物語へ織り込み、映画へと昇華した。
公開された本予告は、荒野に停めたバンから男の足を掴み、引きずり出そうとするワヒドの姿から始まる。「お前は俺の人生を奪った“義足のエグバル”だ」かつて自分の人生を台無しにした男を偶然見つけ、咄嗟に拘束したワヒド。溢れ出す怒りのまま叫びながら猛然と荒野に穴を掘り、“エグバル”を生き埋めにしようとするが、「人違いだ!やめろ!」と訴える男の言葉に、ふと我に返る。「あの男は、本当に復讐相手なのか?」
実はワヒドは、エグバルの顔を一度も見たことがなかったのだ。もし本物のエグバルでないなら、殺すわけにはいかない。「ついに“義足”を見つけた」「だが、本人か確信できない」。真相を確かめるため、ワヒドはかつて不当に拘束された仲間たちを訪ね歩くことになる。
書店を営む恩人、ウエディングフォトを撮影中のカップル、そしてカメラマン――彼らはそれぞれ、取り戻したはずの日常の姿のまま、再び過去の悪夢に翻弄されていく羽目に。「あいつの正体を暴く」「どうするつもり?」疑惑、怨念、怒り、葛藤、愚かさ、そしてユーモアなど、幾重にも重なる人間の感情が絡み合う映像となっている。
2010年から反政権を理由に禁錮6年の有罪判決を受けていたパナヒ監督。映画制作や海外渡航が20年間禁止されていたが、2023年に海外渡航禁止が解かれ、最初に着手した本作品で2025年にカンヌ国際映画祭に正式参加し、イラン映画としては28年ぶりに最高賞を受賞。『チャドルと生きる』(2000)でベネチア国際映画祭金獅子賞、『人生タクシー』(2015)でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞、そして本作のパルム・ドール受賞により、世界三大映画祭すべての最高賞を受賞するという快挙も成し遂げた。
カンヌ渡航前に「イランに戻れなくなるのでは︖」という質問に対して、パナヒ監督は「この映画は製作されなければならなかった。私が完成させたわけだから、どんな結果も⽢んじて受け⼊れる」と語っていた。そんな中、2025年12⽉、アメリカで本作のプロモーション活動中だったパナヒ監督は、明確な容疑が開⽰されないまま、イスラム⾰命裁判所から突如判決を受けた。内容は<反体制プロパガンダ活動を⾏った>とする⽋席裁判での懲役1年に加え、2年間の渡航禁⽌、さらに政治・社会団体および派閥への参加禁⽌という厳しい措置である。
さらに、今年1⽉31⽇には本作でパナヒ監督とともに共同脚本を⼿がけ、アカデミー賞脚本賞ノミネートにも名を連ねるメーディ・マームディアンが、イラン政権の⾏為を⾮難する声明を発表後逮捕されるという事態も発⽣。パナヒ監督が公式声明を発表したことも世界のニュースを駆け巡った。

ストーリー
かつて不当に投獄されたワヒドは、ある偶然の事故によって、⼈⽣を奪った残忍な義⾜の看守と出会う。ワヒドは咄嗟に男を拘束、荒野に⽳を掘って埋めようとするが、男は「⼈違いだ」と⾔う。実はワヒドは、看守の顔を⾒たことがなかった。男は、本当に復讐相⼿なのか︖⼀旦復讐を中断し、看守を知る友⼈を訪ねるが…。
『シンプル・アクシデント/偶然』
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
監督・脚本:ジャファル・パナヒ
2025年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103分/日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
協力:ユニフランス
配給:セテラ・インターナショナル
(C)LesFilmsPelleas
simpleaccident.com
5月8日(金)、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開