『災 劇場版』劇伴をまとめたオリジナル・サウンドトラック配信決定 香川照之と中村アンの対面シーン公開

映画『災 劇場版』のオリジナル・サウンドトラックが公開日の2月20日に配信されることが決定し、音楽担当・豊田真之のインタビューコメントが到着。併せて本編映像が公開された。

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本作は日本民間放送連盟賞を受賞したWOWOW「連続ドラマW 災」を再構築。ドラマとは全く異なる「新しい形の恐怖」を描いた物語として生まれ変わった。

斬新な映像表現が国内外で注目を集める監督集団「5月」の関友太郎と平瀬謙太朗が監督、脚本、編集を務め、長編デビュー作『宮松と山下』に続き、スペイン語圏最大の歴史あるサン・セバスティアン国際映画祭(第73回・2025年)で2作連続かつコンペティション部門での正式招待という快挙を成し遂げた。前作からの再タッグとなる香川照之が主演を務め、中村アンをはじめとする主役級のキャストが脇を固める。

様々な音を駆使し「災」を表現している劇伴に、予告編を見た人々や、すでに試写で鑑賞した観客から「音楽が怖すぎる」「観た後もずっと頭から離れない」との声が続出。本作の「新しい恐怖」を増幅させる大きな役割を担っている。手掛けたのは、映画、CM、教育番組など多岐にわたり音楽制作を手掛ける豊田真之。監督の関、平瀬とは大学院時代の同期であり、これまでの「5月」短編作や前作『宮松と山下』などほぼ全ての音楽を手掛けてきている。

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映画『災 劇場版』
オリジナル・サウンドトラック

サウンドトラックの配信決定にあたり、豊田へのインタビューが実施された。劇伴を作るにあたり、求められたのはとにかく新しい怖さ。「『サイコ』や『ジョーズ』の革新的なスコアのように、自分なりの新しい『怖い』『恐ろしい』を発明しようと努めました」と語る。また「まだ撮影が終わっていない段階から何十曲もデモを作っていて、使用楽器についても手を尽くして色々試しました」と何十通りものパターンを作成し、綿密な試行錯誤を重ねながら、本作の劇伴を構築していったという。

さらには、ドラマから映画版を再構築するにあたり、音楽も異なる「恐怖」が必要で「説明を減らして解釈に余地を残すこと、そして、温度を低くして魅力的な世界観を再構築しました」と語った。(インタビュー全文は、本記事下に掲載)

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豊田真之

今回公開された本編映像は、中村演じる刑事・堂本と香川演じる“ある男”が対面するシーン。小鳥のさえずりが朝を告げるなか、目を覚ました堂本は、無造作に端末を手繰り寄せ、時刻を確かめる。場面は一転、堂本の勤務先である神奈川県警本部の署内。閉まりかけていたエレベーターのボタンを押し、中に滑り込むとそこには一人の清掃員(香川)の姿があった。言葉を交わすことのないまま、狭い密室に張り詰めた沈黙が流れる。先にエレベーターを降りる堂本。彼女を気に留めることもなく、閉めるボタンに手を伸ばすこともなく、清掃員は虚ろな瞳でエレベーターに乗り続ける。その胸元に付けられた“大門宏樹”という名前が意味ありげにクローズアップされ、映像は終わる。

中村演じる堂本と“ある男”の接近について、平瀬監督は「わかりやすく『羊たちの沈黙』(1991年)を引用しています」と明かす。平瀬監督が言うように、男性の姿しか見えない警察署内に佇む堂本の姿は、『羊たちの沈黙』でレクター博士に翻弄されるFBI女性捜査官のクラリスの姿と重なる。

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さらに関監督は撮影の國井重人と本作のイメージを共有するにあたり、「作調についてはこういうトーンにしたいとお伝えして、参考にしたのはすべて洋画なのですが、例えばヨルゴス・ランティモスの『聖なる鹿殺し』などを見てもらいました」と話している。

そして2月20日からの上映劇場(※一部)にて、ロゴを大きくあしらった御札風ステッカーが入場者特典として配布されることが決定(数量限定・なくなり次第終了)。配布劇場は作品公式サイトや公式SNSをご確認いただきたい。

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映画『災 劇場版』入場者特典の御札風ステッカー

豊田真之 インタビュー全文

―豊田さんの音楽は、作曲家バーナード・ハーマンが生み出すスコアがヒッチコック映画の恐怖を何倍にも増幅するすばらしい効果をもたらしているように、『災 劇場版』の作品の魅力をさらなるものに押し上げていると思います。監督たちからは『災 劇場版』の音楽について、どのような相談を受けましたか?もしくは話し合いましたか?

音楽を作るにあたって、監督たちからは、とにかく「怖い」「恐ろしい」といった言葉をキーワードとして繰り返し聞きました。ただ、作品そのものが「新しい怖さ」を目指していたので、音楽もすでに世の中に存在するようなものでは全くダメで、新しいホラー劇伴の発明になっていないとOKが出ないだろうし、自分としても面白いものにならないことは自明でした。なので、それこそ『サイコ』でバーナード・ハーマンがたった一つの音符の繰り返しで恐怖を生み出したように、『ジョーズ』でジョン・ウィリアムズがたった二つの音符の繰り返しで恐怖を生み出したように、自分なりの新しい「怖い」「恐ろしい」を発明しようと努めました。また、監督から「不協和音」「不快」というキーワードも繰り返し提示されたのですが、敢えて言い切れば、音楽である以上は不快であると同時に美しくなければならないので、その言葉を裏ごしするようにしてじっくりとスコアに落とし込んでいきました。

―『災 劇場版』のスコアでは、比較的アコースティックな響き(特徴的なコーラスやピアノ、コントラバスもしくはチェロの低音)から電子的な質感(シンセサイザー的な)まで、非常に幅のある音像が印象的です。使用した主な楽器や機材、音作りのアプローチについてこだわったことを教えてください。

今回、一番大切なメインテーマを中心に、まだ撮影が終わっていない段階から何十曲もデモを作っていて、使用楽器についても手を尽くして色々試しました。どのスコアにも共通してこだわったポイントとしては、装飾的な音を最小限に抑えていることが挙げられます。ミニマル・ミュージック的なアプローチをしている曲も、そうでない曲も、音数自体が少なめで、骨組み・構造で勝負する音作りになっています。これは、作品そのものが、露骨な残虐シーンであったり、ジャンプスケア的な表現ではなく、構造で怖さ・面白さを作り出していることとシンクロしているのだと思います。

―『災 劇場版』はドラマ「災」からアプローチを変えたと監督から伺いました。具体的にどのような違いがあるのか、どのように試行錯誤されたのか教えてください。

概してテレビドラマは視聴者に対して「感じ方」を丁寧にリードする必要があり、音楽も「このシーンは悲しい場面です」といった説明的な役割を担う部分があるため、今作のドラマ版でもその点は意識しました。
一方、映画はノイズを遮断した映画館という場所でしっかり集中して観てもらえることを前提に作るので、むしろ説明を減らして解釈に余地を残すこと、そして、温度を低くして魅力的な世界観を再構築することを目指しました。

―これまで「5月」の作品の多くを手がけてこられましたが、『災 劇場版』の音楽は、ご自身の中でどのような位置づけの作品になっていますか?

「5月」の作品に限らずですが、今までは音楽を作るとき、ポップス寄りの音楽か、実験的でアブストラクトな音楽か、という、自分の中で大きく二つのモードがあるような感覚がありました。ところが、『災』の劇伴は、その二つの間の領域で、自分の力を統合して自由に作れたような気がしています。二本の道の間に広大なスペースがあって、そこに入っていけることに気づいたような感じです。これは自分のキャリアの中でも、かなり大きな転機だったように感じています。

―ご自身でも特に映像と音楽が相乗効果を生んで納得のいく仕上がりになったと考えるシーン、もしくはお気に入りのトラックはありますか?

やはり、災いが起こるシーンでかかる「body」という曲は、ドラマのオンエア時にもSNSで「怖い」「怖すぎ」などと言及してくださった方がたくさんいたので、うまくいったのではないかと思っています。他には映画の終盤のあるシーンで流れる音楽も、中村アンさん演じる堂本刑事の中で「男」の実在が大きく揺らいでしまう瞬間を、音楽で効果的に演出できた気がしています。

―サウンドトラックとして聴いたときに、映画を観た方、これから観る方にそれぞれ注目してほしいポイントがあれば教えてください。

映画本編の流れを感じながらも、また少し違う、一つのアルバムとしての物語を描くようにして、曲順や曲間の秒数にもこだわってマスタリングしました。なので、再生時間21分の一つの組曲だと思って聴いていただけたらすごく嬉しいです。また、そうするにあたって収録を断念した曲もあり、それらは映画本編でしか聴けないので、ぜひ映画館でも楽しんでいただけたら嬉しいです。

『災 劇場版』
出演:香川照之
中村アン 竹原ピストル 宮近海斗
中島セナ 松田龍平 内田慈 藤原季節 じろう(シソンヌ) 坂井真紀/安達祐実 井之脇海
監督・脚本・編集:関友太郎、平瀬謙太朗
音楽:豊田真之
原案:5月
制作プロダクション:AOI Pro.
劇場版製作幹事:電通
製作著作:WOWOW
2026/日本/カラー/DCP/5.1ch/128分/PG12
配給:ビターズ・エンド
(C)WOWOW
https://www.bitters.co.jp/SAIdisaster/

2月20日(金)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開

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