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『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』に三宅唱監督、竹林亮監督ら総勢15名から絶賛コメント到着!本編特別映像も解禁

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたジェームズ・グレイ製作・監督・脚本による最新作『アルマゲドン・タイム ある日々の肖像』(5月12日(金)公開)に著名人から寄せられた絶賛コメントと、本編動画が解禁された。

1980年代、ニューヨーク。ユダヤ系アメリカ人の中流家庭の末っ子ポール(バンクス・レペタ)は、公立学校に通う12歳。PTA会長を務める教育熱心な母エスター(アン・ハサウェイ)、働き者でユーモラスな父アーヴィング(ジェレミー・ストロング)、私立学校に通う優秀な兄テッド(ライアン・セル)と何不自由のない生活を送っていた。しかしポールは、クラス一の問題児である黒人生徒ジョニー(ジェイリン・ウェッブ)と親しくなったことで、複雑な社会情勢が突きつける本当の逆境を知ることになる。

あるとき、ポールとジョニーが学校でやらかした些細な悪さが、彼らの平穏な青春の日々に大きな波乱をもたらす。その解決しがたい問題に直面したとき、ポールは家族、特に強い絆で結ばれている祖父アーロン(アンソニー・ホプキンス)に頼ることができたが、家庭環境に恵まれないジョニーには支えてくれる大人が誰一人としていなかった。そして、このことが2人の行く末を大きく分けることになる――。

賞レース常連の豪華キャストが競演する本作は、差別と格差が根付く80年代NYを舞台に、多感かつ繊細な12歳の少年ポールが培っていく友情、そして微妙な変化を迎える家族との関係を通して、時代を取り巻く理不尽や不公平を浮き彫りにする。生きづらさのなかに滲む<理解と愛>に寄り添い、同時に、自分の<無力さ>を噛みしめ、世の中に折り合いをつけながら日々を営む人々の姿を、変わらぬ愛と変わりゆく自分を通して見つめる、痛烈で鮮烈なエモーショナル・ドラマとして描き出す。

そんな本作をひと足早く鑑賞し、コメントを寄せたのは、映画監督の三宅唱監督(『ケイコ 目を澄ませて』)、竹林亮監督(『14歳の栞』)、ノンフィクション作家の石井光太(「君はなぜ、苦しいのか―人生を切り拓く、本当の社会学」)、ゲームクリエイターの小島秀夫ら15名の著名人。

あわせて解禁された本編映像は、ポールにとってこれからの人生の指針となるような、大事な時間を切り取ったもの。

進学校に転校、環境が代わって元気が無くなったポールを心配した祖父アーロン。「新しい学校はどうだ?」と問いかけると、ポールは友人間で交わされる人種差別的な会話について、うんざりはするけども「何もしない」と、“学校で<生きていく>ためにはそれが当然”という諦めた態度を取ってしまう。

しかし、祖父のアーロンは「お前は行動や言葉で示さなくては」「高潔な人となれ」と優しく、強い意志を持って諭していくー。「握手とハグだ」「大好きだよ」お互いを真剣に思いあう、かけがえのない2人の絆を描いたシーンとなっている。

目次

コメント全文(敬称略・50音順)

石井光太(ノンフィクション作家)
「社会で成功をつかむには、差別や格差といった不条理に目をつぶらなければならない」子ども時代に散々反発しながら、成長と共に大人たちに慣らされ、忘却の彼方に消し去った社会の非情な原理。平穏な今を享受していたはずの私は、本作によって今更ながらにそのことを突き付けられ、どうすればいいのか!

今村久美(教育支援NPO代表)
社会の規範とされることからはみ出さないように生きること、それを良いこととして、私たちは今を生きる子どもたちに強いてはいないか。心を殺し、あげられない声をくみとれないまま、明日の「悪い子」をつくっていないか。
この、アメリカ社会の昔話は、いま日本で生きている私達に大切な問いを投げかけている。

大島育宙(芸人/映画・ドラマ解説者)
騙されるな!思い出せ!子供時代は痛くて息苦しかっただろう?
世界の監督の間で空前の自伝的映画ブームだが、ジェームズ・グレイの回顧は頭ひとつ抜けて苦い。
80年代への憧憬は絶える気配のないブームだが、時代をファッションとして消費することをこの映画は許さない。
甘いノスタルジーに流れることなく、社会の不条理を複雑なまま映画に焼き付ける。
わかりやすい物語に絡め取られず、複雑な世界を複雑なまま受け継ぐことこそが、世界への信頼と愛なのだと思い出させてくれる映画だ。

大空幸星(特定非営利活動法人あなたのいばしょ理事長)
目に見えない社会の規範は不条理さと孤独を想起させる。そこから逃げようと試みる主人公たちの行動は人間の本能そのものだ。
この映画が醸し出すノスタルジアと社会の現実を誤魔化さずに描いている事実との格差が面白い。これを観た後、我々はしばらく答えのない問いと向き合う事になる。

金原瑞人(法政大学教授・翻訳家)
「え、ここで終わるの?」という気持に襲われたのだが、エンドロールをながめるうちに、エンディングにこめられた監督の深い絶望とかすかな希望が伝わってきて、ぞくぞくするほどの感動がこみあげてきた。観客にまったくこびることのないこの作品は、映画を愛する観客への深い信頼から生まれたに違いない。

北村道子(衣装デザイナー)
12才の多感な少年は学校、家族から逃げだす。今、リアルな社会問題ではあるが、まったく緊張感が生じることなく観る事ができるのは監督と俳優達の才能なのだろう。

小島秀夫(ゲームクリエイター)
誰にでも身に覚えのある子供の頃の幼い”出来心“。オトナになるために犠牲にした家族や親友との大切な瞬間。それらの喪失を悔恨させる。しかし、成長した今、我々大人達は理解する。あの頃にタイムトラベルしたとしても、やはり同じ“選択”をするだろうことを。郷愁を破壊する、優しく残酷な映画。感動とは違う身悶えする“感傷”が燻る。

竹林亮(映画監督)
アマゾンの奥地、火星の向こうの海王星の次は、ジェームズ・グレイ監督個人の記憶の中の生々しい経験への旅でした。リアルな「アメリカンドリーム」の光と影の中で揺さぶられて炙り出された家族の結びつきは矛盾と葛藤に満ちていて、尚且つ暖かくて、まったく整理がつかないところが好きでした。そして、そんな家族の繋がりは、いくら少年が背中を向けて逃げたくなっても、今までどこかで彼を守りつづけてきたのだという証がこの映画そのものであることに気がつき、胸が熱くなりました。

ダースレイダー(ラッパー)
僕は80年代にロンドンのユダヤ人地区に住んでいた。食事で招かれた近所の友人宅では友人の祖父が自分の祖父母の話をするのを聞いていた。通っていた学校にはバスで通学する黒人の友達もいた。これは僕の話だ。12歳のポールの体験はシュガーヒル・ギャングのビートと共に彼の生き方を決定づけるだろう。

テラシマユウカ(GANG PARADE)
人生の物差しをつくるきっかけとなった祖父と過ごした時間が次々と蘇る。無邪気に思うまま生きることと、社会の不条理を飲み込むこと、成長痛とはこんなにも刺すように痛いものか。

中井圭(映画解説者)
子どもたちが直面する現実社会の理不尽な分断。それは、ジェームズ・グレイの作品群で反復された人間関係の破綻と歪んだ社会への警鐘へと繋がる。自伝的作品である本作が映したのは、作家性の原点だ。

西野理子(家族社会学者)
1980年代の経済成長を遂げたニューヨーク。出自による差別を経験した白人家族が、ある程度の豊かさを達成した一方で、黒人への差別は過酷だ。成熟社会で少年ポールは、祖父、母らに救われていながらも、心の傷が重なっていく。将来の夢を見ては、心が折れていく。経済成長後の現在の日本社会の子どもたちが、少年の姿に重なる。

三宅唱(映画監督)
映画一本で世の中全部がひっくり返るとは思わないが、誰かの生き方に革命が起きるくらいの力は余裕である。10代の主人公たちが高潔に生きようとするように、ジェームズ・グレイ監督も、高潔であろうとすることを一切諦めていない。本気の映画だ。10代の自分やかつての友人たちに見せたい。今、一番ヒットしてほしい!

矢部華恵(エッセイスト/ラジオパーソナリティ)
Life is unfair. 父の言葉が、悲しく響く。まだそれをわからない少年は、危なっかしく純粋で、あまりに脆い。時に、目を背けたくもなる。少年を見ていると、自分の幼い心が震え出し、先がわかっていても、少年と一緒にしっかり傷つくのだ。

山崎まどか(コラムニスト)
親密で切実な友情と家族の物語だからこそ、80年代のニューヨークの空に広がる雲のような“分断の時代”の兆しが鮮やかに浮かび上がる。少年と祖父が飛ばすおもちゃのロケットがあまりに切ない。

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