映画『君の顔では泣けない』の公開記念舞台挨拶が、公開初日の11月14日にTOHOシネマズ 新宿にて実施され、芳根京子、髙橋海人、林裕太、そして坂下雄一郎監督が登壇した。

原作は、2021年9月に発売され、瞬く間に話題となった君嶋彼方によるデビュー作「君の顔では泣けない」。
高校1年生の坂平陸と水村まなみは、プールに一緒に落ちたことがきっかけで心と体が入れ替わってしまう。そこから15年、一度も元に戻ることのなかったふたり。しかし、30歳の夏、まなみは「元に戻る方法がわかったかも」と陸に告げる。リアルとフィクションの境を繊細に編み、入れ替わったまま大人になっていくふたりの時間を切なく、瑞々しく描き出す。
全国約196の映画館で生中継される中、ステージにラインナップした一同。中継カメラに向かって手を振りつつ、坂平陸を演じた芳根は「公開を迎える事が出来て本当に幸せです。みんなで大切に育ててきた我々の子供を皆様に『届け!』とする今日はなんだか夢のようです!」と念願の封切りに胸がいっぱいの様子。

水村まなみを演じた髙橋も「暑い中で撮影を頑張って苦楽を共に過ごした仲間たちとの日々を思い出してエモーショナルな気持ちになります。上映前のワクワクした観客の皆様の顔を見ながら、嬉しい気持ちでいっぱいです」と心境を打ち明けていた。

映画化にあたり、15歳から30歳の新たな“男女入れ替わり”という点に新鮮味を感じたという坂下監督。キャスティングについては映画『Arc アーク』の芳根、連続ドラマ「だが、情熱はある」の髙橋に注目したそうで、「自分が思う、演技が上手い人にお願いしようと思った。『Arc アーク』「だが、情熱はある」のお二人はトリッキーな役だったけれど、今回の役もトリッキーな役なので、親和性があるのではないかと思った」と理由を述べた。
陸の弟・坂平禄役の林は「入れ替わる事のコミカルさがあるのかと思って物語を辿って行ったら、思いがけず人間の色々なところが見えてくる物語だった。自分の体や心の距離についても考えさせられて面白かった」と本作ならではの魅力を口にした。

そんな中、原作者の君嶋彼方氏よりサプライズで手紙が届いた。「(芳根と髙橋の)お二人は、本当に見事に陸とまなみを演じきってくださいました。性別を主張しすぎない細やかな演技は言わずもがなですが、何よりもお二人の醸し出す雰囲気が素晴らしく、原作者にもかかわらず『もっとこの二人のやり取りを見せてくれ!』と思いました。『君の顔では泣けない』は小説としてはもうこれ以上書くことのない作品だと思っていたのですが、芳根さんの陸を見て『もっと陸のことが書きたい』と強く感じてしまいました。髙橋さんのまなみも素晴らしく、原作ではほとんど内面が見えない難しいキャラクターだったにもかかわらず、感情豊かに表現してくれていました」と、じんわりと心に広がる手紙に会場も、あたたかな雰囲気に。
芳根は「とても嬉しいですね。原作の先生がどう思われるかって、私たちも怖い部分でもあって、それでも、”もっと陸を好きになる”、なんて嬉しいんでしょう。そんな光栄なことあるんだなって思います。そしてその先の陸私もぜひ読ませてもらいたいなと思ったので楽しみにしております」と感激。
髙橋も「グループとしての活動の時もそうだけれど、世の中の皆さんに自分たちの作品を出す前に、自分たち作る側の人間が満足した気持ちで送り届ける事がエンターテインメントとして素敵な事だと思っています。作品を作る中でハードルが高いのが原作の先生を納得させることでもあるし、原作者の先生は作品を作っていく中でのボスでもあるので、凄く安心しました。ムチャクチャ嬉しかったです。胸を張って皆さんに観ていただけると思いました」と原作者の太鼓判に胸を撫でおろしていた。
さらに、坂下監督も「この物語の0を1にした方なので、初号試写にいらっしゃった時、本当に一番緊張しました。緊張するというか、この方が“ダメ”と言ったら、他の人全員が“良い”と言っても、それは何か違う気がするというような方なので、そう言っていただけてすごくよかったです」と率直な気持ちを吐露。

最後に、林が「この映画を観て、色々な思いを抱えてくださると思うんですが、“誰かのことを好きになる”というのは、“その人がその人でいるから好き”ということで、そう言えるのはその人を本当に愛しているということなんだなと、僕は思えました。この映画を観終えると、それぐらい自分のこと、他者のことを考えられるような作品だと思っています」と真っ直ぐに想いを伝える。
続いて髙橋は「自分の人生で選択する分岐点は沢山あると思うけれど、それを自分の考えと体を持って選んで進んでいけるのは幸せなことだと気づかされました。それから今まで歩んできた自分の道のりがかけがえのない素敵なものだと自分を肯定できるような、そんな気持ちにさせてくれる『君の顔では泣けない』に出会えたことに胸がいっぱいになりました」と目を潤ませながら感謝。
同じく主演の芳根は「この作品が少しでも皆さんの心に残れば良いなと、今はそう思います」と声を震わせながら「この場をお借りして髙橋君、本当にありがとうございます!撮影中も初号を見ても不安で…でも髙橋君と色々な取材を受ける中で少しずつ氷が溶けていく感覚というか、怖いけれど、髙橋君とだったら大丈夫だと思えた。本当にまなみが髙橋君で良かったなと思うし、一緒に戦うのが髙橋君で良かったなと思う。あ、なんだか泣きそう。お互い?」と感極まって、髙橋も「芳根ちゃんの顔を見ていると泣きそうになります」とウルウルだった。

しかし髙橋が青色のハンカチをポケットから取り出し、芳根に紳士的に渡そうとすると、芳根は「あ、一旦大丈夫!」と意外と冷静に受け取るのを拒み、すかさず林が飛び出して「僕が泣きそう!」と青色のハンカチで目元を拭って場内からもすすり泣く声と笑いが起こるアットホームな空気となった。
芳根は「またご一緒出来るのかなと、これからが楽しみになりました。この場をお借りして、ありがとうございました!」と改めて髙橋に頭を下げると、髙橋も「こちらこそありがとうございます」と感動ニッコリ。そして最後高橋は、映画のイメージカラーでもあるブルーのハンカチをひらひらさせ、会場および全国に手を振っていた。
『君の顔では泣けない』
出演:芳根京子 髙橋海人 西川愛莉 武市尚士 中沢元紀 林裕太 石川瑠華 前野朋哉 前原滉 ふせえり 大塚寧々 赤堀雅秋 片岡礼子 山中崇
監督・脚本:坂下雄一郎
原作:君嶋彼方「君の顔では泣けない」(角川文庫/KADOKAWA 刊)
音楽:Inyoung Park
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(日本映画製作支援事業)独立行政法人日本芸術文化振興会
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(c)2025「君の顔では泣けない」製作委員会
https://happinet-phantom.com/kiminake/
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