舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、藤井道人監督が登壇 『港のひかり』初日舞台挨拶レポート

映画『港のひかり』の初日舞台挨拶が11月14日に東京のユナイテッド・シネマ豊洲にて開催され、舘ひろし、眞栄田郷敦、尾上眞秀、そして藤井道人監督が登壇した。

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左から藤井道人監督、眞栄田郷敦、舘ひろし、尾上眞秀

本作は映画『正体』で第48回日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した藤井道人監督とキャメラマン・木村大作が初タッグを組んで撮影した、北陸の港町が舞台の完全オリジナル作品。過去を捨てた元ヤクザの漁師・三浦と目の見えない少年・幸太の、十数年にも及ぶ年の差を超えた友情と再会のものがたりが描かれる。

元ヤクザの“おじさん”を演じるのは7年ぶりの単独主演作となる舘。歌舞伎界の新星として注目を集める尾上眞秀が少年時代の幸太を、成長した青年時代の幸太を眞栄田郷敦が演じる。

まずは登壇者からそれぞれ一言ずつ挨拶が送られると、いよいよイベントがスタート。現在映画公式Xでは、【コメントを投稿して感動を受け継ごう―心を照らす港のひかりキャンペーン】が実施中。舞台挨拶では、鑑賞者から寄せられた感想をもとにトークが展開された。

まず舞台挨拶で読み上げられたのは、「古き良き日本映画でした。この令和の時代にこの作品が生まれたのが良いなと思いました」という感想。木村大作キャメラマンが映し出した美しい能登の風景の数々は情緒に溢れどこか懐かしさも漂うが、冒頭ではキャスト陣に向け完成した本作を初めて目にした時の印象についての質問が。

舘は「フィルムの映画がなくなっている中で、今回は木村大作キャメラマンのこだわりで35mmフィルムで撮影しているんですが、画の奥深さみたいなものを感じました」と語り、フィルムだからこそ表現できた情緒あふれる映像美に心を掴まれたそう。

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続く眞栄田は、「フィルムの良さももちろんですが、物語のテーマも“自己犠牲”。ザ・日本映画という感じだなと思ったんですが、僕ら世代も出させていただく中で、舘さんと監督、大作さんの年齢差もあったり、いろんな世代との融合や新しさもあって、見応えのある作品になっているなと思いました」と魅力を語った。

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尾上は「昭和(っぽい)というのがよくわからないのですが…(笑)」とジェネレーションギャップを明かし会場の笑いを誘いながら、「大作さんにフィルムで撮ってもらえたということが、貴重なことなんだなと後々知って、すごく宝物というか…嬉しい気持ちです」と笑顔を見せた。

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そして、監督は「僕自身もフィルムで撮るのは初めてで、今までやってきたこととは真逆でした」と初めての経験も多かったと述べ、「何度も撮り直して練度をあげていくというのとは違い、1発で本番OKを調整しなきゃいけないので、これまでとは違う映画作りを楽しめましたし、俳優さんたちの感想を聞くとやって良かったなという安堵感もあります」と語り、胸を撫で下ろしていた。

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次に読み上げられたのは、「舘ひろしさんが今回、渡哲也さんの姿に被って見えた」という感想。この感想を受けて、MCから、自身の中でも恩師のような存在を思い浮かべる場面があったか問われると、舘は「そういうふうに演じようと思っているわけではなかったんですが、渡さんと初めてお会いして40年ずっと一緒でしたから。どこかいつも渡さんを見ていたので、似てくるんでしょうね、やっぱり」としみじみ。「顔は似ていないと思いますが(笑)」と冗談を交えながらも、「(自分で見ても)雰囲気が似ているところはありました。ちょっとした佇まいとか、顔の角度とか」と分析していた。

また、感想の中には、眞栄田演じる青年期・幸太について、「少年時代の幸太とおじさんを経て、青年になってからの二人の再会の場面は本当に涙を誘いました」といった声も。少年期の幸太を演じる尾上からバトンを受け取り、約12年の時を経て大人になった幸太の姿を好演している眞栄田。演じるにあたって「おじさんと出会ったことで幸せに生きていたこととか、おじさんから教わった強さや優しさを心の中で思い続けている。それを見せられたらいいなと思いました」と意識したことを明かしていた。

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感想では尾上演じる少年期の幸太と三浦の何気ない時間をともに過ごすシーンについて挙げる鑑賞者も多く、「おじさんと少年が輪島の朝市で買い物をしているシーンが幸せそうで心に残っています」という感想も。

MCから舘との共演について触れられた尾上は、「舘さんはすごく優しい方で。撮影で船に乗るシーンがあったんですが、その日波が荒れていて…。僕が酔いそうになっていたんですが、舘さんにそれを伝えたら“波を楽しめばいいんだよ”と伝えてくれて。それで酔わなくなって、気を遣ってくださいました」と撮影中のエピソードを披露。尾上からの褒め言葉に舘は「ありがとうございます(笑)」と照れ笑いを浮かべつつ、「(尾上が)自分で酔いそうと思い込んでいたので、“遊んじゃえ”って。ジェットコースターに乗ったような気持ちで楽しめばいいんじゃないかと伝えたんです」と付け加えていた。

さらに感想の中には、「少年期の幸太の“目”は光を感知していないように感じ、三浦の“目”は善悪を露わにしているなど、“目”で物語ることが多い作品であったように思いました」という鋭い考察も。この感想に、「今日はお越しいただいたお三方を見ていただいてもわかるように、素晴らしい目を持った俳優さんとご一緒することが叶いました。舘さん演じる三浦が幸太を見る目と、三浦が極道にいた時の目というものを演じ分けることも自然にやってのけてくださいましたが、目というのはキャスティング時点で大事にしていました」と“目の表現”を大事に考えていことを明かす監督。「少年期の幸太を演じる眞秀は本作が映画初出演でしたが、目の見えない少年を演じるために一緒に学校を通ったり体験をしたり、訓練をたくさんしてくれて。それがフィルムの中で写ってくれていたらいいなと思っていました」と語った。

次に「舘さんの演技がすごかった。佇まいや仕草が素晴らしい!」という感想が読み上げられると、トークはキャスト陣が好きなキャラクターについての話題に。

舘は「僕はやっぱり、郷敦くんがよかったなと。これからのスターになっていく人ではないかなと。僕の推しです」と愛情たっぷりにコメント。さらに「それとやっぱり、(八代役を演じた)斎藤工くんですね。眉毛を剃って、あの役に挑んでくれた。俳優が自分の体に傷をつけるということは、すごく勇気がいること。それをしてでもこの作品に向かってくれたあの気持ちが嬉しいですよね」と感謝の言葉を伝えていた。

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続く眞栄田は、「舘さん、眞秀くんはもちろんですが…石崎役を演じられた(椎名)桔平さんですね」と椎名の名を挙げ、「急に歌い出すところだったり…本当に良い意味で気持ち悪くて。怖いし不気味で…急に歌い出すシーンは、今後のお芝居で真似したいなと」とリスペクトを込める。

続く尾上は「僕は舘さんです」と迷わずコメント。「声がすごく温かくて、ホッとさせてくれる声ですごく好きです」と微笑むと、そんな尾上に舘も「ありがとう」と優しい眼差しを向けていた。

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そして終盤で読み上げられたのは、「孤独だった少年のために、おじさんがついた優しい嘘に胸が締め付けられた」という感想。三浦が幸太のためについた“優しい嘘”に心動かされたという感想も多く寄せられているが、舞台では劇中で描かれる物語のようにキャスト陣が誰かのためを想いついた“ウソ”についての話題に。

この難問の解答に頭を悩ませるキャスト陣。「難しいなぁ…」と呟く舘は、「僕はアイスクリームが好きなので、1日に2個か3個くらい食べていたら奥さんからダメだと。内緒で食べていたら“あなた食べてるでしょ”って…、“食べてない”って嘘をついたことはあります(笑)」と最近ついた微笑ましい嘘を絞り出し、会場の笑いを誘っていた。

舘の嘘トークに尾上も、「僕もお母さんから“今日薬飲んだ?”と聞かれて、“飲んだよ”って答えるんですけど、たまに飲んでない時があります(笑)」と乗っかり、まさかの“自分のためについた嘘”トークが続出する事態に。

一方、「僕は正直嘘がつけないので、あまり(こういったエピソードは)ないんですが…」と前置きする眞栄田は、「こういう正解がない世界にいると、“良かったよ”とか“かっこよかったよ”って言ってくださることが多いんですが、それを疑ってしまう自分がいて…。それは嫌だなと思うことはあるんですよね。今回はこの作品で本当の意見を聞かせていただきたいなと思っています」と訴える。

そんな眞栄田をよそに、舘は「僕は嘘でもいいから褒めて欲しい!私は褒められて伸びるタイプなので(笑)」とアピールし、会場の笑いを集めていた。

“誰かのためについた嘘”に関するトークが出てこないまま、ついに監督のターンに。「舘さんは現場ですごく気を遣ってくださって。フィルム撮影など僕もなれないことも多い中、舘さんが“大丈夫?楽しんでる?”って何回も聞いてくださって救われたんです」と振り返る監督。「その度に“楽しいです!”って返していたんですが、本当は楽しくない時もありました(笑)」とまさかの暴露に会場は再び笑いに包まれていた。

そして締めくくりでは、舘から観客に向けてメッセージが。客席に向け「本日はお忙しい中お越しいただきありがとうございました。本当に素晴らしい映画になったと思います。一度のみならず二度、三度と観ていただいて、この映画の素晴らしさをお友達、ご家族にお伝えいただけたら嬉しいです」と語りかけると、会場からは再び盛大な拍手が湧き起こる中、初日舞台挨拶は幕を閉じた。

『港のひかり』
出演:舘ひろし 眞栄田郷敦 尾上眞秀 黒島結菜 斎藤工 ピエール瀧 一ノ瀬ワタル MEGUMI 赤堀雅秋 市村正親 宇崎竜童 笹野高史 椎名桔平
監督・脚本:藤井道人
企画:河村光庸
撮影:木村大作
美術:原田満生
音楽:岩代太郎
配給:東映 スターサンズ
(C)2025「港のひかり」製作委員会
https://minato-no-hikari.com/

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