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【レポート】『Blinded by the Light』(原題)、東京国際映画祭でピーター・バラカン氏×森直人氏、濃密な音楽トーク!

Blinded by the Light

2019年のサンダンス映画祭でプレミア上映され、観客と評論家に大絶賛を受けた『Blinded by the Light』(原題)が、2020年の日本公開を前に第32回東京国際映画祭で特別招待作品として公式上映された。

パキスタンに生まれ、現在は英国でジャーナリストとして活躍し、自身もブルース・スプリングスティーンの大ファンであるサンフランズ・マンズールの回顧録を元に描いた本作は、1987年のイギリスを舞台に、パキスタン移民の少年ジャベドがスプリングスティーンの音楽に影響を受けながら成長していく姿を描いた青春ドラマ。

そして、第32回東京国際映画祭で日本初お披露目となった上映後、トークイベントにブロードキャスターのピーター・バラカン氏と、映画評論家の森直人氏が登壇。当時のイギリスの時代背景と共に、世界中で愛され続けるブルース・スプリングスティーン、そして本作の魅力が語られた。

目次

第32回東京国際映画祭
『Blinded by the Light』 公式上映トークイベント

日にち:11月3日(日)
登壇者(※敬称略):ピーター・バラカン(ブロード・キャスター)、森直人(映画評論家)
会場:TOHOシネマズ六本木 スクリーン7

本編上映終了とともに老若男女、幅広い年齢層の観客が集まった会場から拍手が起こり、いち早く映画を観た観客の熱気が冷めない中、MCの呼びかけによりピーター・バラカン氏森直人氏が登場。本作の主人公と同じ1987年に16歳だったという森氏は、その頃からバラカン氏の大ファンで、楽屋からずっと緊張していたと明かし、和やかな雰囲気でトークショーがスタート。

まずMCより映画の率直な感想を求められると、バラカン氏「とても面白かったです。この時代は僕はイギリスにいなかったのですが、親子の関係など、描かれている状況はものすごく普遍的なことだと思っていて、おそらくどこの国でも共感できるものだと思いました。」と述べると、森氏「僕もすごく面白かったです。一番は時代的なことが気にかかりました。社会背景や政治性みないなことがかなり全面化しているなという印象でした。スティーヴン・フリアーズ監督の『マイ・ビューティフル・ランドレット』やマンチェスター郊外が舞台になっている『ぼくの国、パパの国』などといった作品が思い浮かべられるなと思います。」と答えた。

作中では、パキスタンからの移民としてイギリスで暮らす少年が、町の人からの偏見や家庭での伝統・ルールといったものに苦しむ様子が描かれており、そのことについてバラカン氏「インドにしてもパキスタンにしても非常に保守的な家庭が多く、子供が自分で結婚相手を決めるなどといったことはまずありえないです。そして、残念ながら当時のイギリスには“パキ・バッシング”というものがありました。とてもありふれていたことで、これがいけないことだと感じてない人もいたかもしれません。今はだいぶ感覚が変わってきたと思いますが…」と当時の様子を説明。MCからの80年代後半のイギリスを描いているが、今とは状況は違うのか?という問いに対しては「そこまでひどくはないとは思いますが、移民排斥の空気は再び出てきてはいますね。」と回答。森氏「ちょうど今、選挙戦が始まったところですが、ブレグジットに揺れるイギリスで今この映画が作られてたっていうのはすごく興味深いですよね。EU離脱の問題が出始めた頃に充ててきたのかもしれないですよね。」と述べると、続けてバラカン氏「原作はもっと前のものですが、おそらくそういったことも考えているのではないかと思います。」と同意した。

そして、本作の一番の注目ポイントであるブルース・スプリングスティーンの音楽について、彼は当時どんな存在だったのか問われると、バラカン氏「彼の一番売れたレコードは『Born in the U.S.A.』です。1984年に発表されましたが、この映画で描かれている時代のたった3年前になります。アメリカでは、その後5枚組のライヴのボックス・セットが発売されていて、この映画の時代と同時期に1位になっています。イギリスとアメリカとで温度差はありますね。10代の子たちの話なのですが、ブルースの音楽は2,30代の人たちが好んだのかなと、映画を観て改めて考えさせられました。また、70年代と80年代は音楽が全然違い、70年代後半からディスコがものすごい人気になりました。イギリスでは80年代に入るとニュー・ロマンティックと呼ばれたポップ・ミュージックが主流になっていきました。こういうものからポップ・ミュージックを聴き始めた若者にとってブルース・スプリングスティーンの音楽はごつい感じだったりちょっと古い感じがありましたよね。」と回答した。

本作のタイトルである「Blinded by the Light」はブルース・スプリングスティーンのデビューアルバムの1曲目でもあるが、バラカン氏が初めて聴いたのはセカンドアルバムとのこと。そのことについては「ファースト・アルバムが出たときに、第二のボブ・ディランという大々的な宣伝が行われていて、あんまり聴かなくてもいいかなと思ったんですよね(笑) ですが、二作目が出たときにライヴのビデオを見て、これはすごい!と思ってすぐにレコードを買いに行きました。そこでブルースのファンになりました。」と述べ、セカンドアルバムが一番好きだと発言していることについては「自分が初めて聴いたものが一番心に深く残ることが多いですね。74年にロンドンを離れ日本に来たので、そのブルースのアルバムは東京で買ったと思います。」と明かした。

また、森氏「映画に出てくる女の子がスプリングスティーンの名前を聞いたときに『レーガンが聴いてるやつでしょ』と言いましたが、レーガン元大統領とスプリングスティーンには有名なエピソードがあって、『Born in the U.S.A.』が愛国主義的な音楽だと誤解されて広まった事実がありますよね。」と切り出すと、バラカン氏「レーガンがスピーチをしているときに、アメリカの未来は、希望に溢れたこのニュージャージーのブルース・スプリングスティーンの歌にある、みたいなことを言いました。ブルースがそれをTVで見て皮肉ったんですよね。ベトナム戦争から帰ってきた帰還兵の扱いがあまりにもひどくて、『俺だってアメリカ人だ』と歌った(のが「Born in the U.S.A.」)。愛国心の歌ではなかったんですよね。」と続けた。そして森氏「今言った因縁のエピソードだとトランプ大統領がザ・ローリング・ストーンズの曲を使うみたいな感じですかね。 ですが、そこでパキスタン系の少年がスプリングスティーンのメッセージ性のある言葉にはまるっていうのがすごく興味深く、社会背景を存分に描きながら実はとても個人的な青春映画になっているところがすごく面白いなと思いました。」と語った。

最後に映画の舞台になっているイギリス・ルートンという町についての話に及ぶと、バラカン氏「ロンドンの郊外で電車で1時間ほどのところですが、ベッドタウンのようなところでね。僕も行ったことはないです。」と説明。森氏「地理的な感じでいうと北関東というか、そういうニュアンスなのかなと思いましたね。中心部に遠くはないけど何か脱出願望を募らせるような土地かなと…」と述べると、「基本的に何もないところですね(笑)。」とバラカン氏。続けて森氏「だからこそいろんな抑圧がからみあっているところで、スプリングスティーンの言葉というのは強かったんだなと思いましたね。スプリングスティーンの言葉に触発されて自分の声を見つけるという物語で、主人公が作家になりたいというのが面白いなと思いました。」と語ると、バラカン氏「彼らがブルースの曲の言葉に感じたものは自分が抱えている悩みの解決や取っ掛かりをくれるものだと感じたんだと思いますね。主人公の少年は自分の体験に基づいたものを書くという、まさにブルースと同じようなことをしているんですよね。ブルースは映画のようにキャラクターになりきって、その人の立場から自分の体験に基づいて作られた曲が多いですね。すごく映像的なんですよね。」と述べ、本作についても「笑えるところもあり、考えさせられるところもある映画です。」と時間いっぱいブルース・スプリングスティーンと本作について語り、夜遅い時間にもかかわらずトークショーに参加していた客席からは大きな拍手が沸き起こりイベントが締めくくられた。

Blinded by the Light

ストーリー
1987年、ロンドン郊外の町ルートンで暮らすパキスタン系の少年ジャベド。人種差別や経済問題に揺れる時代に、自分が暮らす街の人からの偏見や、パキスタン家庭の伝統やルールなどから抜け出したくてたまらない彼は、ある日ブルース・スプリングスティーンの音楽と出会う。なんとその音楽は、ジェベドが今まで感じてきた自分の気持ちがそのまま表現されていたのだった。ブルース・スプリングスティーンの音楽に大きな衝撃を受けるとともに勇気をもらったジャベド。彼の世界は180度変わり始めていく――。

作品タイトル:『Blinded by the Light』(原題)
出演:ヴィヴィク・カルラ、アーロン・ファグラ、ヘイリー・アトウェル
監督:グリンダ・チャーダ(『ベッカムに恋して』)
2019年/イギリス/117分/カラー/原題:Blinded by the Light
配給:ポニーキャニオン

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2020年、全国ロードショー

 

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