【レポート】『CLOSE/クロース』ルーカス・ドン監督登壇のジャパンプレミア開催!「4年後にもまた日本に来たいです!」

カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した話題作『CLOSE/クロース』(7月14日(金)公開)にて、ルーカス・ドン監督登壇のジャパンプレミアが新宿武蔵野館で開催された。

イベント概要

日程:5月9日(火)
イベント実施:20:45~21:15
場所:新宿武蔵野館 スクリーン1(東京都新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F)
登壇者:ルーカス・ドン監督

本編上映後、目を真っ赤にし感動の涙に染まった多くの観客が溢れる会場に黒のシックなジャケットを羽織り登場したルーカス監督。モデルさながら出で立ちに、会場に詰め掛けた多くのファンからは拍手が起こり、ルーカス監督は「こんにちは。これが唯一知っている日本語です。あ!あと観てね!もですね。でもここにいる方はもう観ているから、観てねしてくださって、ありがとうございます」とお茶目な挨拶。続けて『Girl/ガール』以来2度目となった来日について「4年ぶりの来日でまた日本に来れてうれしいです。またこの映画を映画館で、スクリーンで、皆さんが楽しんでくださったことが、フィルムメーカーとして何よりの喜びです」と語った。

また本作を制作することになった理由について、「東京が前作『Girl/ガール』のプロモーションでの最後の土地だったんですが、東京から帰って、さあ次に何を書こうかと考えた時に、書き始めるのが非常に困難だと感じました。そのため自分が本当にやりたいことが何なのかを改めて考え、自分が作品ときちんと繋がれるために故郷に戻りたいと思いました。自分の育った街に戻り、学校やかつて行った遊び場に行きました。そしてその時に自分の少年時代を思い出したんです。僕は自分が生まれてきた身体に付随する社会のルールや期待されるものに応えられず葛藤した思い出がありました。当時の年齢で起こったその出来事がいかにリアルなものだったかを思い出し、そこからこの映画が始まったように思います。最初に何かを壊す人、そしてその壊れた物のインパクトを知らずに壊してしまう物という考えが先にありました。そして僕は主人公と同じくらいの年齢の頃、自分から人を避けてしまっていたんです。それは若い男性がたくさんいる中で親密であるということが、他者にとって性的に捉えられる可能性があるということにも気付き始めてた時期でもありました。だからこそ当時たくさんの人と近い関係で一緒に過ごしたかったけれど、自分から避けてしまったという後悔が僕の中にあり、そこから脚本を書き始め、それが今観ていただいた本作のレオとレミというキャラクターになっていきました。二人で一人のような融合する友情を持っている関係であり、愛という確かな名前がついていないけれど愛を持っている二人のキャラクターになったんです。そして中学に進むと二人の間にある関係に名前を付けようとする、ラベルを貼ろうとする他者の行動が起こり、そこで二人の関係がおかしくなっていくというのが、この映画のスタート地点となりました」と自身の幼いころの感情を思い出すように、映画のスタート地点の話を明かしてくれた。

さらに会場に詰め掛けたファンからの質問に答えるティーチインでは、「演じる役者たちの言葉と言葉の間を意図的にあけているように感じたのですが、その演出が非常にエモーショナルだなと思いました。監督からの細かい指示はあったんでしょうか?」という質問に対し、「人間は会話をする時どうしても沈黙を恐れてしまいます。会話の中での沈黙の力というものを許容するには、ある種の成熟であったり、勇気が必要なんではないかなと思います。僕は役者さんに演出する際は振付師がダンサーに振りを入れるのと同じようなかたちで指示を出すんですね。身体の言語、眼差しの言語というかたちで分けて話をします。もともと脚本で感情であったり、動きであったり、綴られていないものでもしっかりと感じられるようなものになっているので、役者さんが脚本を読む段階で、行間の中にある感情を汲み取ってくれているのだと思います。そして現場では時間がとても大事だと思っているので、まず役者さんたちには時間はたっぷりあるんだと伝えて、様々なかたちでその時間を演技に使ってもらいます。もちろん後から編集もできますが、それでも現場でのテンションはすごく重要なので、レオとレミの間の会話が二人があるべき姿であるようなペースになるように、本当に最後に編集で整えていくというかたちになります」と細かい演出方法を解説。

次の「劇中にアイスホッケーのシーンがありますが、コンタクトスポーツは男性の象徴と言われていることがあると思いますが、なぜホッケーを選んだのか。そして監督の中でのアイスホッケーのイメージはどんなもので、何を描きたかったのでしょうか」という質問に対しては、「『Girl/ガール』と本作の脚本の最初に同じシーンを入れていたんです。撮影はしていないのですが、空を黒い鳥の群れが同じ方向に飛んでいるという映像で、遠くから見ると美しいなと思えるのですが、近づいていくと恐ろしい、何か危険性を感じるという表現だったのですが、両方ともプロデューサーからカットしたほうがいいと言われました。なぜならばその冒頭のシーンだけでこの映画のサマリーを感じ取れてしまうとからと。一つの方向に群れが飛んでいて、そして主人公はそのうちの一人ではない他者にならんとしている。それは美しくも恐ろしいことで、だからララ(『Girl/ガール』の主人公)もレオもある種、自分自身という個に属するよりも、集団属したいという、鳥の群れの一羽になりたいと思っているキャラクターだと考えて書いたものでした。そしてアイスホッケーに関して言えば、同じ方向に群れのように動くイメージが僕の中にあったので、その中にいるレオが集団の中で消失してしまうという映像的な可能性を見出しての判断と、それから衣装です。『Girl/ガール』の時は全ての身体的な部分が露わになるレオタードを着ていましたが、今回のアイスホッケーも身に着ける防具は甲冑のようで自分を守ることもできるけれど、他の人からもそこに触れることを許さないものにもなっていると思うのです。この映画の前半は消失、後半は罪悪感というのがテーマになっているんですが、その物語を説明するのに、この衣装が効果的だと思って選びました。またオープニングに花畑が登場しますが、花畑は非常に開かれた場所で脆さというのも感じられる場所ですが、それに対してアイスホッケーのリンクは、とても閉鎖的で荒々しい暴力性の高い場所であり、その二つの景色を並べた時に視覚的にも対照的に映るんではないかと思ったのもあります」と、緻密に考えられた設定について語った。

そして「二人の少年の関係性が友情以上ではあるが、愛とは言い表せない、難しい年齢に設定した理由は。またこれはクィア映画だと思って描いていますか?」という質問には、「この映画は自分にとっては愛についての映画だと思っています。ただその愛というのが必ずしも、名前のある愛ではなく、ラベルとかレッテルなどとは関係のない愛を描いた映画だと思っています。人と人とが親密なシチュエーションに対しセクシャリティーが関与すると、我々がなかなかそれをそういう風にみることができない、あるいは親密であるということについて恥ずかしいと思う人が出てきます。本当は繋がりはとても大切で力があるので、我々はむしろその力というのを大事にするべきだと思っています。ただ特に若い男性同士という状況では、僕を含めたわたしたちがある種の眼差しを持つように社会によって教えられてしまっていると思うんです。だからこの映画というのは少年たちのミクロのアイデンティティがどんなものかについての映画ではなく、むしろそういった眼差し、私たちがどうしてそういう風に見てしまうのかということについての映画だと思っています。そして親密さの欠如の映画だとも思っています。社会が彼らが誰であるかということを勝手に理解しようとしてラベルを貼ってしまう、それによって親密さが欠如してしまうということを描きたかったです。そしてこの映画がクィア映画かと聞かれたら、それはそうですと答えます。僕にとってのクィア映画というのは、ジェンダー、セクシャリティーというものに対し、役割やルール、そして振舞いなどについて、勝手に紐づけられてしまうことに関しての映画が、全てクィア映画だと思っています。また本作を実際にクィアの方にも観ていただいたのですが、共感して頂いています。ただ本作で描かれている主人公の傷跡というのは、全ての人が抱える傷跡でもあるとは思っています。すごくパワフルで親密で自由だったものが、突然自分の傷になって、心を痛めてしまう。人によっては壊してしまったことへの罪悪感を抱えて生きている方もいると思うんです。だからそういったことも含めて、この映画はクィア映画でもある、でもクィア映画だけではないと思っています」と力強く語った。

最後に「本当に今日はありがとうございました。皆さんと素敵な会話ができたと思っています。日本にまた戻って来られたことは幸運ですし、とても特別なことです。日曜日までいるので、絶対日本で押さえておくべきだということがあれば是非教えてください。本作は自分にとって大事な作品で、素晴らしい人たちと一緒に作った映画です。心から作られた映画だと受け止めていただけるとうれしいし、皆さんの心に届いていたらうれしいです。7月14日から公開となりますので、是非気に入って頂けたら周りの人にお勧めしていただけるとうれしいです。できれば4年後に新作を持って、また日本に来れたらと思います。それまで良き人生をお送りください」と、会場のファンにオススメの観光地を聞くなどのユーモアも交えつつ、次回作への意気込みも語ってみせた。終始、会場全体は温かい空気に包まれ、大きな拍手の中、ジャパンプレミアは終了した。

イントロダクション
色鮮やかな花畑や田園を舞台に無垢な少年に起こる残酷な悲劇と再生を描いたこの物語は、ヨーロッパ、アメリカ、アジアと世界各国で上映され、海外の映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では94%フレッシュ(2022.5.31時点)と高い満足度を記録。「感情を揺さぶるあまりの強さに打ちのめされた」(Screen)、「涙なしでは見れない傑作」(Los Angeles Times)と多くの映画人や観客を魅了している。さらに、映画ファンから絶大な支持を得る気鋭の映画製作・配給スタジオ「A24」が北米配給権を獲得したことも話題に。世界中を涙に染めた珠玉の一作がついに日本でベールを脱ぐ。

ストーリー
花き農家の息子のレオと幼馴染のレミ。昼は花畑や田園を走り回り、夜は寄り添って寝そべる。24時間365日ともに時間を過ごしてきた2人は親友以上で兄弟のような関係だった。13歳になる2人は同じ中学校に入学する。入学初日、ぴったりとくっついて座る2人をみたクラスメイトは「付き合ってるの?」と質問を投げかける。「親友だから当然だ」とむきになるレオ。その後もいじられるレオは、徐々にレミから距離を置くようになる。ある朝、レミを避けるように一人で登校するレオ。毎日一緒に登下校をしていたにも関わらず、自分を置いて先に登校したことに傷つくレミ。2人はその場で大喧嘩に。その後、レミを気にかけるレオだったが、仲直りすることができず時間だけが過ぎていったある日、課外授業にレミの姿はなかった。心ここにあらずのレオは、授業の終わりに衝撃的な事実を告げられる。それは、レミとの突然の別れだった。移ろいゆく季節のなか、自責の念にかられるレオは、誰にも打ち明けられない想いを抱えていた…。

作品タイトル:『CLOSE/クロース』
出演:エデン・ダンブリン、グスタフ・ドゥ・ワエル、エミリー・ドゥケンヌ
監督:ルーカス・ドン(『Girl/ガール』)
脚本:ルーカス・ドン、アンジェロ・タイセンス
2022年|ベルギー・オランダ・フランス|104分|ヨーロピアンビスタ|5.1ch|原題:Close|字幕翻訳:横井和子|G
提供:クロックワークス 東北新社
配給:クロックワークス/STAR CHANNEL MOVIES

公式サイト:https://closemovie.jp/
公式Twitter:@closemovie_jp
公式Instagram:@closemovie_jp
コピーライト:(C) Menuet / Diaphana Films / Topkapi Films / Versus Production 2022

7月14日(金)より全国公開

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