ロマンス詐欺を題材に、ひとりの女性が大切なものを見つけていく姿を描いた台湾映画『サリー』の特別試写会イベントが1月7日に都内にて開催され、ロマンス詐欺に詳しいITジャーナリストの高橋暁子と台湾カルチャーを発信するWEBメディア「Howto Taiwan」の編集長・田中伶が登壇した。

40歳を目前にした独身女性がマッチングアプリで出会った“運命の人”を追ってパリへ―。近年、世界中で社会問題化しているロマンス詐欺を題材に、ひとりの女性が大切なものを見つけていく姿を描く本作。2019年、台湾アカデミー(台北金馬)の企画コンペで絶賛され、第28回釜山国際映画祭でのワールドプレミアを皮切りに、第19回大阪アジアン映画祭で「来るべき才能賞」「ABCテレビ賞」をダブル受賞。また、第26回台北映画賞では最優秀音楽賞(リー・インホン)を受賞した他、主要5部門にノミネートされ話題となった。
高橋は、本作の感想を訊かれると「魅力的な台湾の風景が素敵な作品でもあったんですけど、専門家として一言。こてこてなロマンス詐欺でした。騙す人が圧倒的に悪いんですが、(主人公が)引っかかりやすい典型的なポイントを全ておさえていたので、こうしちゃだめ!と思いながら、映画を見ていました」とコメント。
続けて、タイトルにもなった“サリー”は、LINEのオリジナルキャラクター、ヒヨコの“サリー”から来ていると指摘。「LINEって世界中で使われているみたいに思っちゃうじゃないですか。実は違うんですよ。日本と台湾、タイ、インドネシアのほぼ4カ国だけなんです。あのヒヨコのサリーといってピンとくるのは、日本人だから。主人公が養鶏場を営んでいて、LINEのヒヨコのキャラを名乗っている女性で、さらに同じLINEを使っているんだと思うと、親近感を持って見られる人物ですよね」と話すと、観客一同も合点した様子。
一方、田中は、本作の魅力のひとつについて「中国語ではなく、全編ほぼ台湾語なんです。台湾の地方のエリアで話される言葉なんですが、主演のエスター・リウさんと、弟役のリン・ボーホンさんは2人とも台湾語はできるけれどそこまで得意ではない。なので、この作品のためすごく練習をした。さらに台湾語の中でも方言があったりするので、台中の方言の先生をつけて、かなり練習をしたみたいです」と語った。

話は、本作の題材となったロマンス詐欺の実情について。高橋は「日本でもSNS型のロマンス詐欺と投資詐欺はずっと増えています。イケメンや美女、社会的地位が高くてお金持ちで、理想の異性の形をして現れて、会ってもないのに愛している、運命の人だ、結婚しようと言われる。でも理想の異性だから舞い上がってしまう。そしてやり取りの中で、信じちゃって、2人の将来のためにお金を増やそうとか、困ってるからお金を出してくれないか、みたいなことを言われて、(お金を)渡しちゃうんです」と被害に遭うまでの経緯を解説。
被害者については「未婚既婚は関係ない。既婚の方でも、うちの夫や妻は…と心の隙間みたいなところをグッと狙われて、お金を搾り取られてしまうこともある」と説明。さらに「年齢は30代から80代まで。被害額も数百万から、酷いときは億を超えます。主人公のサリーもパリに行きましたが、実際に家を売ってその人に会いに行っちゃったというケースもたくさんあるんです」と被害の実情を明かした。
それを訊いた田中は「AIも発達しているじゃないですか。言語の壁もなくなっちゃうと思うと、ターゲットは増えますよね」と話すと、高橋も「そうなんですよ。外国人が日本人のふりをして騙すなんてこともできますし、生成AIでビデオ通話もできてしまう。見分けもつかないんです」と同意。
ロマンス詐欺の被害の「最上位がマッチングアプリですが、その次に女性はInstagram、男性はFacebook。そしてLINEから直接くるケースもあります」と高橋。とは言え、日本でも台湾でもマッチングアプリは出会いの主流となっている。
高橋が「日本でもマッチングアプリはすごく人気で、結婚した人たちの出会ったきっかけ1位が、同僚や同級生を超えてマッチングアプリなんです。それぐらいごく当たり前のこととなっています」と話すと、田中は「台湾でもマッチングアプリで結婚というケースも増えていますし、日本と同じぐらい、もしかするとそれ以上に結婚のプレッシャーもあったりする。会社がお金を出して婚活パーティを開いたりとかもある。必死な感じもある」と台湾の婚活事情を明かした。
こうしたロマンス詐欺に引っかからないためには、高橋は「日本のマッチングアプリは、身分証明書や最近では独身証明書の提出が求められることも。しっかりとしたことを選ぶと、騙されづらい。運営の方も頑張ってますが、自衛も大事」という。「事前にAIじゃないかどうか確認する。しっかりしたマッチングアプリなら、アプリの中でビデオ通話もできたりしますし。とにかく会う前にお金だけは渡しちゃだめです。会ってもいないのに、愛している結婚しようと、そしてお金出してとこの2つが揃ったら基本アウトです。絶対に振り込んだり渡したりしないでください」と注意喚起。「実際に結婚のきっかけNo.1なので、偏見は持たずに、うまく使えば良いツールなんです。なので、しっかりとしたアプリを選んで、事前に見極める。気をつけて会っていただければと思います」と語ると、田中も「映画でもそうでしたが、マッチングアプリイコール悪ではないので」と賛同した。
そして、トークの後半では映画で描かれる家族関係について。田中が「(主人公のフイジュンの)家族たちも結局はすごく優しかったり、あの人間模様が良いですよね」と話すと、それに応える形で高橋は「SNSやネットだとつい本心やコンプレックスを言えて、心を開いてしまうからこそ、その人を信じて好きになってしまう。身近に信頼できる友達や家族を持っておくというのも大事なのかなとも思っています」と述べた。
最後に、高橋は「台湾に行ったこともあり、食べ物は美味しいし、グッズは可愛いし、風景は素敵だし、みんな優しいし、最高ですよね。映画を見ながら、また行きたいなとも思いました。素敵な台湾を楽しみながら、ロマンス詐欺について被害に遭う前に学ぶことができる、非常に良い映画だなと思います」と語り、イベントを締め括った。
さらに、日本での公開にあわせて、リエン・ジエンホン監督が台湾より来日することが決定。1月17日と1月18日に都内劇場にて、舞台挨拶が実施される予定だ。
