1970年代ニューヨークの場末にあった小さなバー「CBGB」が、パンク/ニューウェイヴの震源地へと変貌していく過程を描く音楽伝記ドラマ『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』が、10月23日より公開される。

後に世界の音楽史を揺るがした伝説的ライブハウス、CBGB。創設者ヒリー・クリスタルが掲げた「オリジナル曲のみ」という異例のルールが、行き場を失っていた若いロック・バンドを引き寄せた。テレヴィジョン、パティ・スミス、ラモーンズ、ブロンディ、トーキング・ヘッズ――後にロック史を塗り替える面々が、この小さなステージに立った。壁の落書き、剥がれた壁、汚れたトイレ、天井の水漏れ。混沌とした空間は、若者たちが自分の声を見つける“実験場”として機能し始める。同時期に誕生した自主制作カルチャー誌「Punk Magazine」もまたCBGBと密接に結びつき、音楽・アート・文章が渾然一体となった“パンク文化”を形づくっていった。
監督は独立系作品で知られるランドール・ミラー。主人公ヒリーを演じるのは『ハリー・ポッター』シリーズのスネイプ先生役で知られるアラン・リックマン。頑固さと不器用な情熱を独特の存在感で体現し、混沌と偶然と情熱が交差する中でパンク/ニューウェイヴが形づくられていく瞬間を鮮やかに描き出す。

ヒリーは、パンクの理論家でも戦略家でもない。むしろ破産を繰り返し、経営は常に混乱し、店の運営は決してスマートではなかった。しかし、彼には「新しい音楽を聴きたい」という揺るがない信念があった。その純粋な欲求が、結果として無名の若者たちの未来を開きCBGBを文化の震源地へと変貌させた。
寡黙で猫背気味の姿勢、独特の間合い、時折見せる不器用な優しさ――それらが積み重なり、ヒリーが“場をつくる人”としてどのように機能していたのかが立体的に浮かび上がる。彼はミュージシャンを育てたわけではない。ただ、ステージを開き続けた。その“開かれた場”こそが、若者たちの創造力を解き放つ土壌となった。
映画は、ヒリーの私生活や家族との関係にも触れ、彼がどのようにして混沌の中で店を守り続けたのかを描く。成功を目指したわけでもない人物が、結果として世界の音楽史を動かしたという逆説が、本作の大きな魅力だ。

リックマンはインタビューで、ヒリーに惹かれた理由を“意図せず文化を動かしてしまった人物”だからだと述べている。不器用で、しかし誠実で、アーティストの個性を尊重し続けた結果として、パンクの温床となる場を作り上げてしまった。その“無自覚な革命性”こそが、彼の最も魅力的な部分だったという。
ヒリーには声を荒げるような場面はほとんどなく、派手な振る舞いもない。それでも彼の存在が場を動かしてしまう。その“静かな強さ”をどう表現するかが、俳優としての最大の挑戦だったとリックマンは語る。リックマンの静かな存在感が、CBGBという場所の核心を照らし出している。

ストーリー
相次ぐ店の失敗と離婚で人生のどん底にいたヒリーは、再起を懸けてカントリーバー「CBGB」を開業する。ステージも配線も水回りも、すべてが手作業のDIY。しかし店は客が入らず、閑古鳥が鳴くばかり。そんなある日、無名のロックバンド・テレヴィジョンが店に現れる。ヒリーは“オリジナル曲のみ”を条件に彼らを受け入れ、これを機にパティ・スミス、ラモーンズ、ブロンディら無名の若者たちが次々と集結。夢破れた男が営むちっぽけなバーは、やがて世界のロックシーンを変える“パンクの聖地”へと姿を変えていく。
『CBGB ニューヨーク、PUNKが生まれた場所』
出演:アラン・リックマン、アシュリー・グリーン、ドナル・ローグ、マリン・アッカーマン、ジャスティン・バーサ、ルパート・グリント、テイラー・ホーキンス
監督・脚本:ランドール・ミラー
共同脚本:ジョディ・サヴィン
撮影監督:マイケル・J・オジアー
編集:ダン・オブライエン
2013 年|アメリカ|英語|102分|原題:CBGB|PG-12
提供:ArtSnow、ニューセレクト
配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
© 2013 Film CBGB, LLC. All Rights Reserved.
cbgb-film.com
10月23日FRI シネマート新宿ほか全国ロードショー