洗骨

2018-11-22
(c)『洗骨』製作委員会

照屋年之監督長編2作目にして、世界各国で高く評価されている注目作!死者の骨を洗う風習・儀式を丹念に描いた感動作

洗骨――。今はほとんど見なくなったその風習だが、沖縄諸島の西に位置する粟国島などには残っているとされる。粟国島では西側に位置する「あの世」に風葬された死者は、肉がなくなり、骨だけになった頃に、縁深き者たちの手により骨をきれいに洗ってもらうことで、晴れて「この世」と別れを告げることになる。
沖縄の離島、粟国島・粟国村に住む新城家。長男の新城剛(筒井道隆)は、母・恵美子(筒井真理子)の“洗骨”のために、4年ぶりに故郷・粟国島に戻ってきた。実家には、剛の父・信綱(奥田瑛二)がひとりで住んでいる。生活は荒れており、妻の死をきっかけにやめたはずのお酒も隠れて飲んでいる始末。そこへ、名古屋で美容師として活躍している長女・優子(水崎綾女)も帰って来るが、優子の様子に家族一同驚きを隠せない。様々な人生の苦労とそれぞれの思いを抱え、家族が一つになるはずの“洗骨”の日まであと数日、果たして彼らは家族の絆を取り戻せるのだろうか?

日本に留まらず、海外映画祭での評価が際立つ照屋年之監督。十数年に渡り地道に短編映画を発表し続け、遂に短編『born、bone、骨。』でアジア最大級の国際短編映画祭であるショートショートフィルムフェスティバル&アジアのジャパン部門・優秀賞、SKIPシティ国際Dシネマ・観客賞など数々の賞を受賞し、その才能が認められた。そして長編第二作である本作『洗骨』は、モスクワ国際映画祭を始め、上海映画祭、ハワイ映画祭など数々の国際映画祭に選出。
ニューヨークで開催された北米最大の日本映画祭・第12回JAPANCUTSでは28本の作品の中から見事観客賞を受賞、その評価は確固たるものとして確実に広がりつつある。
主演には日本を代表する名優・奥田瑛二。妻を亡くしたことで酒浸りになった父親が、息子と娘、周囲の人々とのやり取りを経て徐々に現実に向き合っていく様を見事に演じ切った。共演には実力派俳優・筒井道隆、カンヌ国際映画祭出品作『光』で堂々の主演を演じた水崎綾女。わだかまりを抱えた兄妹の繊細な心の動きを熱演した。
その他、大島蓉子、坂本あきら、鈴木Q太郎を始め、個性豊かな実力派俳優陣が集結。そして主題歌には、数々のアーティストによって歌い継がれてきた古謝美佐子の名曲「童神」が起用され、その余韻が涙を誘う。

2019年1月18日(金)より
シネマQ、シネマライカム、ミハマ7プレックス、
サザンプレックスにて沖縄先行公開
2月9日(土)より丸の内TOEI他全国公開

公式サイト

キャスト

奥田瑛二 筒井道隆 水崎綾女/大島蓉子 坂本あきら
山城智二 前原エリ 内間敢大 外間心絢 城間祐司 普久原明 福田加奈子 古謝美佐子
鈴木Q太郎 筒井真理子

スタッフ

監督・脚本:照屋年之
音楽:佐原一哉主題歌:「童神」(歌:古謝美佐子)
製作:『洗骨』製作委員会(吉本興業 ファントム・フィルム 朝日新聞社 沖縄タイムス社)
2018/日本/カラー/スコープサイズ/上映時間111分
配給・宣伝:ファントム・フィルム

レビュー

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母の偉大さと継がれるべき儀式

評価: ★★★★★ (4点) 投稿者:とえ2019-01-25

ゴリ監督らしく、笑えるシーンが満載で、笑って心が温まって、後半は、思わずホロっときてしまうステキな映画だった そもそも、タイトルにある「洗骨」とは何か? 最初にタイトルを見た時にそう思った その「洗骨」とは、沖縄の粟国島に今も残る風習で、死後4年が経ったご遺体を洗う儀式のこと この映画の主人公一家では、お母さんが亡くなってから4年が経ち、「洗骨」のために家族が実家に集まるのだけど、その時には家族がバラバラになってしまっていた そんな状態で、果たして洗骨ができるのかという話 そのバラバラな家族の様子を観ながら思ったのは、 生きていても、亡くなっていても、家族の中心にいるお母さんの偉大さ お父さんも、息子も、娘も、お母さんを頼りにして、お母さんを通じて家族とつながっていた だから、そのお母さんがいなくなってしまうと、家族は急に支えをなくし、バラバラになってしまう そんなバラバラになってしまった家族にやってきた「洗骨」の儀式 それは、まるで家族がバラバラになってしまったのを見計らったかのようにやってくる 「家族がそんな状態では、お母さんは安心してあの世に行けないよ」と言いたいのではと思ってしまう 正直、これまで法事っていうのは、面倒なものだと思っていた しかし、この映画を観ながら、亡くなったご先祖さまに対して 「私たちは、あなたがいなくても、仲良くやっているから安心してくださいね」 という姿を見せるための儀式なんじゃないかなと思った そして、改めて「母の偉大さ」を思う映画だった 私の場合 仕事もプライベートも、うまくいかない時は、いつも愚痴をこぼす相手は母で 父の不調や、兄のプライベートを教えてくれるのは母だ そんな母がもしもいなくなってしまったら、我が家も、この映画の家族のように バラバラになるだろうなぁと思った でも、いなくなってから、その偉大さに気づいても遅いのだ だから、みんなが元気なうちにコミュニケーションをしておきましょうと この映画は気づかせてくれる そしてこの映画では、その「洗骨」がどのように行われるかが描かれている すごくドキドキしながら見ていたけれど、まるで儀式に参加しているような厳かな気分になった その「洗骨」の場面を観るだけでも、この映画を観る価値があるんじゃないかと思った この映画を通じて「洗骨」という儀式を初めて知った 風化させずに残していくべき文化だと思うので、一人でも多くの人に観て欲しいと思った

生きることが愛しくなる映画

評価: ★★★★★ (5点) 投稿者:Shiron!2019-01-20

いっぱい笑って、いっぱい泣きました。 照屋監督のすごいところは、感動のシーンにも笑いを散りばめてくるところ! しかも、その笑いを入れることで感動が切れたり薄れたりすることなく、 むしろその笑いによって、感動のシーンがより豊かに人間らしいシーンとなり、愛しさがこみ上げてきます。 声を出して笑いながら、一つのシーンで二度目の涙が流れていました。 沖縄の持つ俯瞰的な目線と言いますか、大らかさとでも言いますか。 自然が豊かなぶん、生と死が近いのかもしれませんね。(アグリ島にはあの世もあるし) だいたい、普通にヤギがいたり、家の前の道に椅子とテーブルを出して、おじいがサンシンを奏でていたり…私の日常とはかけ離れた風景が驚きですし 美しい海、美しい空。いつも音楽があり、踊りがある。 この風土によって独自の文化が生まれたのだなぁ。と感じました。 その独自文化の最たるものが「洗骨」なのでしょう。 この土地だから出来た風習… ってか、この風土でないと無理〜!!! 今回初めて「洗骨」という言葉を耳にしたのですが、勝手にカタコンベにあるような、完璧に白骨化した古い先祖の骨を洗う儀式を想像していました。 でも映画のなかの説明によると「風葬」で、土に埋めるのではなく、棺に入れたまま冷暗所に置いてミイラ化した骨を洗う行為と知り えっ?ミイラ?? しかも亡くなって4年で洗骨…。 そこそこ新しいのでは? エジプトのミイラは見たことあるけど…4年だと、どんな状態のミイラなのか :(;゙゚'ω゚'): 墓暴きの『ザザンボ』がよぎりました。 いったい監督は「洗骨」のシーンをどのように撮るつもりなのか? まさか、ミイラを画面に写す気なのかしら…(;´д`) でも、その不安とちょっとした恐怖は、主人公家族も同じ。 変わり果てた家族を目にするのですから、なおのことでしょう。 母親の葬儀から4年後。 洗骨の為に故郷に戻ってきた子供達と父親との、洗骨までの日々の出来事を一緒に追ううちに、私にもこの家族の「洗骨」に立ち会う覚悟が出来ました。 むしろ、この家族の「洗骨」に立会いたい!と思えるほど。 ネタバレになるので、これ以上は書きませんが 驚きと愛の詰まった「洗骨」シーンを、ぜひ劇場でご覧いただきたい。 その土地に必要だったから生まれて、その土地に必要だったから受け継がれてきた文化。 よそ者の私ですが、洗骨の儀式を通して島がどれだけ命を大切に育んできたかを感じることが出来た気がします。 そして、エンドロールで『童神』が流れます。 歌声と歌詞が心に響いてまたもや大号泣。 まるで映像にはない、これから先の新城一家が見えるかのようでした。 暖かい涙をたくさん流して、沖縄の空のように晴れやかで清々しい気持ちになれました。 照屋年之監督の次回作にも期待します!