メキシコの民間救急救命事業に迫るドキュメンタリー映画が来年1月より日本初公開!『ミッドナイト・ファミリー』

ミッドナイト・ファミリーメキシコの民間救急救命事業に迫るドキュメンタリー映画『ミッドナイト・ファミリー』がMadeGood Films配給にて、2021年1月中旬よりユーロスペースほか各地ミニシアターにて日本初公開となる。(2020年1月にNHK/BSで短編編集[46分]された放送あり)

メキシコ・シティには、行政が運営する救急車が人口900万人に対して45台未満しかない。そのため、専門訓練もほとんどなく認可も得ていない営利目的の救急隊という闇ビジネスが生まれている。

『ミッドナイト・ファミリー』は、オチョア家族の物語だ。オクラホマから中古の救急車を買い、90年代末から無許可の救急救命ビジネスを始めた。警察関係のネットワークを使い、1件につき300ペソ(17米ドル)の賄賂を支払っていち早く事故の情報を得る。運よく現場に一番乗りできれば、患者に病院への搬送料として3,800ペソ(185米ドル)を請求する。これまでの20年間、陽気で気さくなオチョア家族はこの道で生活を支えてきた。

無力な患者に支払いを強要したり、支払う能力がなければ危篤の患者でも搬送を拒否したりと倫理の限界をはるかに超えてしまう多くの競合救急事業者と違って、オチョア家族はこの問題に満ちた業界の中でもどちらかといえば信頼のおける例外的な救急隊だ。公営の救急車がまったく来ずに重症の患者が何時間も待たされるようなとき、オチョア家族が現場に駆け付けて深刻な医療ニーズ不足の穴埋めをする。彼らは患者が支払いに応じた場合にのみ料金を請求し、手当てもなく放置されるような患者でも時間を惜しまず救助にあたる。

ミッドナイト・ファミリー

この作品では、オチョア家族の稼業が地元警察の取り締まりに脅かされる様子を捉えている。違法で暴力的なやり方に手を染める私営救急事業者がいるなか、警察は個人経営の救急隊を管理する法の強化に力を入れるよりも、私営業者をターゲットに賄賂を要求してくる。救急救命ビジネスの危機に瀕して、オチョア家族は救急車の正式な認可を得るために必要な金を何としても稼がなければならなくなる。さもないと、たった一つの生活の糧である救急車も失うことになるのだ。

高まる圧力と違法で腐敗したこのビジネスの渦中で、思いやりをもって仕事をする事は非常に困難であり複雑な事情を抱えていることが明らかになってくる。警察はさらに高額な賄賂を要求するようになり、オチョア家族もまた他の事業者のようにさらに強引で私利的な仕事のやり方に走らざるを得なくなってゆく。患者の救助と生活を支える稼業の先行きとの間で板挟みとなり、倫理的ジレンマに苛まれながら生きるオチョア家族の姿をカメラは追う。

『ミッドナイト・ファミリー』は、“今できることを精一杯する”をテーマとしている。とりわけ腐敗が蔓延る状況において、ある家族が生きのびるためなら不当な行為も正当化されるのかの是非についても考えさせられる。この作品は、倫理的には疑問視されるある家族の稼業を人間味あふれる視点で捉えつつ、医療事情、行政機能の停滞、自己責任の複雑さといった差し迫った課題について探求している。

ストーリー
メキシコ・シティには、人口900万人に対して公共の救急車が45台未満しかない。そのため、救急救命にあたる闇救急車の需要がある。オチョア家族も同業の救急救命士らと競い合って急患の搬送にあたる私営救急隊だ。この熾烈なビジネスで生計を立てるため、オチョア家族は救助を求める患者から何とか日銭を稼ごうと奮闘する。しかし、闇営業を取り締る名目で汚職警官に賄賂を要求されるようになり、さらに家族は金銭的にも追い詰められていく。倫理的に疑問視されるオチョア家族の稼業をヒューマニズムにあふれる視点で捉えつつ、医療事情、行政機能の停滞、自己責任の複雑さといった差し迫った課題を描いたドキュメンタリー映画。

サンダンス映画祭 米国ドキュメンタリー特別審査員賞受賞
米アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門ショートリスト出演

作品タイトル:『ミッドナイト・ファミリー』
出演:ホアン・オチョア、フェル・オチョア、ホセ・オチョア、マヌエル・エルナンデス
監督:ルーク・ローレンツェン
企画制作:ケレン・クイン、ルーク・ローレンツェン
プロデューサー:ダニエラ・アラトーレ、エレナ・フォルテス
撮影/編集:ルーク・ローレンツェン
2019年/アメリカ、メキシコ/81分/英題:Midnight Family
配給:MadeGood Films

公式サイト:https://www.madegood.com/ja/midnight-family/

1月中旬よりユーロスペースほか各地ミニシアターロードショー

 
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