映画『ベートーヴェン捏造』(9月12日公開)の製作報告会見が8月6日に都内にて行われ、主演の山田裕貴と、古田新太、脚本のバカリズム、関和亮監督が登壇。会見中に本作のメインテーマ曲と本予告が解禁された。

本作は、19世紀ウィーンで巻き起こる音楽史上最大のスキャンダルの真相に迫った、歴史ノンフィクション「ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく」(かげはら史帆著/河出文庫刊)を基に実写映画化。
偉大なる天才音楽家、ベートーヴェン。誰もが知るそのイメージは、秘書による”でっちあげ”だった!耳が聞こえないという難病に打ち克ち、歴史に刻まれる数多くの名曲を遺した聖なる孤高の天才ベートーヴェン。しかし、実際の彼は――下品で小汚いおじさんだった…?世の中に伝わる崇高なイメージを“捏造”したのは、彼の忠実なる秘書・シンドラー。憧れのベートーヴェンを絶対に守るという使命感から、彼の死後、見事“下品で小汚いおじさん(真実)”から“聖なる天才音楽家(嘘)”に仕立て上げる。シンドラーはどうやって真実を嘘で塗り替えたのか。果たしてその嘘はバレるのかバレないのか―?
会見では初公開の本予告編が上映されたのち、ステージ上に設置されたグランドピアノを背景に全員が登場。
愛が重すぎるベートーヴェンの秘書・シンドラーを演じた山田は脚本を読んで「僕らがイメージしていたベートーヴェン像は、(自身が演じた)シンドラーが作り上げたのではないか!?と思った」と衝撃を受けたと語り、また役作りにおいては「劇中で使用される楽曲を毎日のように聴いて、自分の中にベートーヴェンの音楽を刻みました。撮影中は現存するベートーヴェンの会話帳のデータを見ながら想像していきました」と述べた。

耳が聞こえない楽聖ベートーヴェン役の古田は「ドイツ人の役をやるのは初めて…というか、近代のヨーロッパを生きていた人の事を知っている奴なんかいないだろ!?」とぼやきで場の笑いを誘いつつ、「僕はヘヴィーメタルも好きだけれどクラシック音楽も好き。ベートーヴェンは奇才であり、すごく変わっている人というイメージなので、破天荒という意味では役作りはやりやすかった」と話した。

山田と古田は映画『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』(2021年)に続いて2度目の共演。古田について「唯一無二!」と称賛する山田は「古田さんがベートーヴェンの恰好をして座っているだけで面白かった。その雰囲気は出そうと思って出せるものではない」と絶賛。
山田の事を親しみを込めて「や~まだ」と呼んでいるという古田は「や~まだはものすごく真面目。僕は早く帰りたいので監督に言われたことをすぐにやれる準備だけをしておくタイプだけれど、や~まだはちゃんと考えてやってくれる。それはベートーヴェンとシンドラーの関係性的にも正解だった」と相思相愛だった。

そんな二人の関係性について関監督は「シンドラーがベートーヴェンを愛しているように、普段から山田さんが古田さんを愛しているような空気が現場には立ち込めていた」とベストコンビだと評した。
一方、バカリズムは山田と古田が演じたシンドラーとベートーヴェンについて「二人とも完全に人間として何かが欠落している。古田さん演じるベートーヴェンは音楽の才能が無かったら最低な人間としか思えないし、山田さんが演じるシンドラーは爽やか好青年だけれど、時間が経つにつれて異常性が加速していく。でも、それは良いキモさでした」と絶賛。
ノンフィクションである原作を「現代日本の中学生が想像したウィーン」という設定にしたのは、バカリズム脚本のオリジナルだが「そもそもドイツ人の話を日本人がやること自体間違っているので、いかにして観客の違和感をなくすかを考えた。劇中に登場するのは“日本の中学生が想像したウィーン”であり、学校内での知っている人たちで脳内キャスティングをしている、という設定にしました」と明かした。

この方法論に山田は「脚本を読んだ時に、これだったら日本人の僕らがやっても成立すると思った」、そして古田も「中学生が学内の人たちでキャスティングしている。その設定に“バカリちゃん、上手いじゃないの!”と思った」と納得したという。
撮影は全編を日本で行い、ウィーンの風景は大型LEDディスプレイに背景3DCGを表示する最新技術を使用している本作。ロケハンで実際にウィーンに行った関監督が「実際のウィーンで芝居をしている姿が想像できなかった」というと、バカリズムは「本物の場所に行ってしまうと、演じる人たちの“本物じゃない感”が際立つ。そこをどうするか監督と話し合いました。でも役者さんたちは誰も現地に行っていないのに、どうして関監督だけ行ったのか…ウィーンに行く必要があったんですか?」と直球の疑問を呈して笑いを誘っていた。
また会見では本予告と同時に、本作のメインテーマ曲が清塚信也が演奏した「ピアノ・ソナタ第23番 『熱情』第3楽章」であることも発表された。

関監督は「ベートーヴェンの『熱情』は人生の起伏を表している曲だったので、本作のメインテーマにするならばこれしかないと思った。清塚さんはパワフルな方なので、そのパワーと曲のパワーを掛け合わせたかった」と理由を述べた。

またバカリズムは山田の演技について「山田さん演じるシンドラーが真っすぐな目をしている。シンドラーは異常な事をしているのに、間違ったことをしているとは思っていない。本当にオカシイ人ってこういう人のことを言うんだろうなと思った。山田さんはそんなシンドラーを見事に演じていて、憑依していた。だからキモイ。凄い方です」と大絶賛。
古田も「や~まだは真面目で信じる力が強い俳優さん。今回のシンドラーも本当にキモい。信頼できる俳優さんです」と同調すると、山田は「今のお二人の言葉だけが太字で広がればいい…」と集まった報道陣に期待していた。
最後に主演の山田は「『この映画は事実である』とは言っていません。しかし史実に基づいたところから物語を作っているので、本作を観ていただいて今後皆さんがどのようにベートーヴェンを語るのか?それはベートーヴェンに限らず、人の事を語る時に何を本当として、何を嘘とするのか、そういったことを考え直す映画になっていると思います」と本作のメッセージを熱く語り、会見は終了した。
9月12日(金)全国公開