第80回ヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞(審査員グランプリ)を受賞した『悪は存在しない』のジャパンプレミアが広島国際映画祭2023にて開催され、濱口竜介監督、企画・音楽の石橋英子、出演の大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁らが登壇した。さらに、本作が2024年4月26日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2ほかにて公開となることも決定した。
濱口監督にとって『ドライブ・マイ・カー』以降の長編映画最新作品であり、現在、世界中の映画祭、映画館で上映され、世界の映画業界を席巻し続けている本作。司会から国内初のジャパンプレミアを終えた感想を問われた濱口監督は「広島では自分の初期の作品から上映していただき、また『ドライブ・マイ・カー』のメインロケ地として石橋さんと出会い、素晴らしい仕事ができて、その続きとして『悪は存在しない』のジャパン・プレミアでまた広島に来られて本当に心から嬉しく思います」とコメント。
企画・音楽担当の石橋は「『ドライブ・マイ・カー』の時は広島に来ることができなかったのでようやく来ることができたという気持ちでして、こうして広島の地で皆さんと作品を共有できて嬉しいです」と喜びを伝えた。
キャストの大美賀は「いろんな映画祭を巡って映画を紹介していただく経験は初めてで、このような作品に関われて嬉しいです」と語り、大美賀と親子役を演じた西川は「こうやってマイクを持って大勢の前でお話することも初めてで、お弁当を食べたりしてすごく楽しいです」と元気いっぱいにコメント。
続いて、小坂が「この場所でこういう機会を与えてもらって嬉しいです。自分も広島で『ドライブ・マイ・カー』でスタッフとして参加していたので大変嬉しいです」と、渋谷は「初めて広島に来たのですがこんなに広い会場で大きな拍手で迎えていただいて、あたたかい雰囲気ですごく嬉しいです」とコメントした。
『悪は存在しない』が生まれるきっかけを作った石橋は「海外のプロモーターの方から、映像と一緒にライブをやらないか?と言われた時、あまりピンとは来なかったんですが、映像と音楽がそれ自体面白くて独立したものが作れれば、ライブでも毎回演奏の計画とかを色々変えていくことができて飽きずに演奏していけるんじゃないかと思って、人柄もチャーミングで作品も大好きな濱口さんにお願いしました」と振り返った。
濱口監督は「お話をいただいて、初めは「どうしよう!」と思いました。ライブでの映像は結構抽象的な映像のイメージがあったので。その後石橋さんから「濱口さんのいつものやり方で」とおっしゃっていただき、そこから普通に脚本を書いて劇映画を作る、そうすれば自由に使える映像素材が得られると思い、「GIFT」というライブパフォーマンス用映像が完成しました。ただ自分自身が役者さんのセリフの声を聞いてしまうと感動するところもあったので石橋さんに確認を取ってもう1本、『悪は存在しない』を作ることになりました」と明かし、石橋は「すごく嬉しかったですね。それこそ<GIFT>でした」と答えた。
濱口監督は、「このように経緯を説明するだけでかなりの時間がかかってしまうんです。そしてもう一つ入り組んでいることを説明しますと、主演の大美賀さんは、元々スタッフとしてシナハン時の運転手をやってもらってたところ、そのうち「あら!いいじゃない!」という気持ちになりまして(オファーしました)」と語り、場内の笑いを誘った。
大美賀は「こんなふうに映画祭を回るなんて全く想定していなかったんですが、濱口監督の元でそういう経験をするのはすごく大事だなと思って受けました」と答えると、濱口監督は「大美賀さんは来月に監督作が控えてますんで」とフォローした(※大美賀均監督作品『義父養父』は12月15日よりK2にて公開)。
撮影や映画本編で印象に残っていることを聞かれた西川は、「映画の中でうどん屋のシーンがあるのですが、そのシーンに自分は出てなくて、うどんが食べられなかったことです」と答え、場内がアットホームな雰囲気に包まれた。
一方、小坂は映画の中の説明会のシーンを挙げ、そのシーンを演じて以来、「テレビなどの記者会見で叩かれてる人を見ると、気になるようになった」と回答。渋谷も同じく説明会のシーンを挙げ、他の役者の切迫した演技や声のトーンなどに感心したと振り返り、「幸せな時間を過ごせた」と明かした。
また、濱口監督は小坂について、『ドライブ・マイ・カー』の車両部スタッフをやっていた時からチェーホフが好きなドライバーと認識しており、印象に残っていたことを明かした。その小坂は『悪は存在しない』に出演が決まり、当初はサイレント映画だと知らされていたが届いた台本で自身のパートで6ページもあったことに驚いたと語った。
最後に、企画者の石橋は「自分が企画させていただいた作品なんですが、私自身が他人ごとのように大好きな作品なので、こうやってあたたかい時間を過ごさせていただいてありがとうございました」と感謝を伝え、濱口監督は「正直、完成した自分の作品を何度も見ることはあまりないんですが、この『悪は存在しない』は珍しく何度も見てます。本当に飽きがこない作品なので、皆様にもぜひ何度もご覧いただいていただけたら大変嬉しいです」と締めくくった。
ストーリー
自然が豊かな高原に位置する長野県水挽町は東京からも近いため、近年も移住者は増加傾向でごく緩やかに発展している。代々そこで暮らす巧とその娘・花の生活は自然のサイクルに合わせた慎ましいものだ。ある日、巧の家の近くでグランピング場を作る計画が持ち上がる。コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が政府からの補助金を得て、その設営を計画した。しかし、彼らが町の水源に汚水を排水しようとしていることがわかり、町内は動揺し、その余波は巧の生活にも及んでいく。
作品タイトル:『悪は存在しない』
出演:大美賀均、西川玲、小坂竜士、渋谷采郁ほか
企画・監督・脚本:濱口竜介
企画・音楽:石橋英子
製作:株式会社NEOPA/合同会社フィクティヴ
プロデューサー:高田聡
撮影:北川喜雄
録音・整音:松野泉
配給:Incline / MOTION GALLERY
公式サイト:https://aku.incline.life/
公式X:https://twitter.com/Incline_LLP
コピーライト:(C) 2023 NEOPA / Fictive
4月26日(金)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2ほか公開
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