【レポート】映画『裸足で鳴らしてみせろ』トーク付き試写会に工藤梨穂監督と映画執筆家・児玉美月さんが登壇!

裸足で鳴らしてみせろ

『裸足で鳴らしてみせろ』(8月6日(土)公開)のトーク付き試写会が7月20日(水)、シネアーツ試写室にて行われ、映画上映後には映画執筆家の児玉美月さんと、本作で商業デビューを飾る工藤梨穂監督が登壇した。

本作は、未来を担う映画作家の育成を目指し、日本映画の第一線で活躍する監督を多数輩出してきた、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)が行う映画制作プロジェクト「PFFスカラシップ」の第27回PFFスカラシップ作品。

児玉さんは工藤監督を評し、「まだ監督作が2作品めなのに、すでに確固たる作家性を築いている。映像を見れば“これは工藤梨穂の映画だ”と分かる」と絶賛。“日本映画の新たな才能”を発見した観客の興奮と熱気に包まれ、活発なトークが繰り広げられた。

本作の絵作りの特徴として、ファーストショットから度々「背中」のショットが繰り返されることについて聞かれた工藤監督は、「ファーストショットでは人物のすべてを明かしたくないという気持ちがあります。あまり顔は映したくない。この人は誰なんだ、という謎を残したい。背中を映すことで、時に表情を映すことよりも、より雄弁に感情を表現できると思っています。」と語り、本作では最初のワンカットで6回撮り直したというエピソードを披露。

続いて、作品の“音作り”で注力した点として、直己(なおみ)と槙(まき)という青年ふたりの繋がりを象徴する音に「廃品回収のアナウンス」を選んだことを挙げ、「私たちが普段日常で耳に入るであろうアナウンスを使うことで、観客の皆さんが日常生活に戻って、どこかでこのアナウンスを耳にした時に、この映画のふたりのことを思い出してくれれば嬉しい、という意味を込めました。」と意図を明かした。

また、直己と槙のふたりが「格闘」で互いへの思いをぶつける重要なシーンについては、格闘を通じて惹かれ合う男女の愛を描いたジャック・ドワイヨンの『ラブバトル』からの影響を明かし、「このふたりの間で起こる愛を、普通の恋愛映画、セックスに向かうような一般的な成り行きにはしたくなかった。そうはならない形の愛も、この世界のどこかにはあるはずで、このふたりにとって、愛の方法は格闘だったというのを表現したかったんです。」と語った。

それを受けて、児玉さんも「異性同士か同性同士かで意味も変わってくると思うのですが、この映画の場合は男性同士なので、自分の感情を表現する言葉が無かったり、手を繋ぐ、キスする、セックスするという道順にならない、自分自身の感情を自分自身が否定しまうような感情があの「格闘」から発露していて、すごく印象的でした」とその演出を称えた。

裸足で鳴らしてみせろ

「今までどんなクィア映画を観て来ましたか?」という質問に対して、高校生の時に観たというグザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』をはじめ、『アデル、ブルーは熱い色』、『ブエノスアイレス』のタイトルを挙げた工藤監督。「映画の中盤に直己が背泳ぎするシーンは、当初意図していなかったのですが、『アデル、ブルーは熱い色』のアデルが海に浮かぶシーンとリンクすると、撮りながら感じていました。無意識にオマージュをささげてたのかもしれません。直己と槙が架空の世界旅行でイグアスの滝を訪れるシーンは『ブエノスアイレス』です。」と、愛する映画から受けたインスピレーションを明かした。

最後に児玉さんから「工藤監督の映画はラブストーリーを観たい観客にも、純粋に映画を愛するシネフィルにも開かれている、いろんな可能性を秘めている映画だと思います」と、工藤監督のデビュー作となる本作にエールが送られた。

裸足で鳴らしてみせろ

ストーリー
“世界旅行”の果て、二人の青年は凶暴な愛を予感する――。
父の不用品回収会社で働く直己(なおみ)と、市民プールでアルバイトしながら盲目の養母・美鳥(みどり)と暮らす槙(まき)。どこにも行けない彼らは、美鳥の願いを叶えるために、回収で手に入れたレコーダーを手に“世界の音”を記録し始める。サハラ砂漠を歩き、イグアスの滝に打たれ、カナダの草原で風に吹かれながら、同時に惹かれ合うも、互いを抱きしめることができない二人。言葉にならない彼らの想いは、他愛のないじゃれ合いから暴力的な格闘へとエスカレートしてゆく……。

第27回PFFスカラシップ作品

作品タイトル:『裸足で鳴らしてみせろ』
出演:佐々木詩音、諏訪珠理、伊藤歌歩、甲本雅裕、風吹ジュン
高林由紀子、木村知貴、淡梨、円井わん、細川佳央
脚本・監督:工藤梨穂
主題歌:soma「Primula Julian」(dead funny records)
製作:矢内 廣、堀 義貴、佐藤直樹
プロデューサー:天野真弓
ラインプロデューサー:仙田麻子
撮影:佐々木靖之
音響:黄 永昌
音楽:藤井草馬
美術:柳 芽似
アクションコーディネーター:園村健介
編集:山崎 梓
助監督:平波 亘
ヘアメイク:大宅理絵
衣裳:藤原千弥
制作担当:三吉優也
製作:PFFパートナーズ=ぴあ、ホリプロ、日活/一般社団法人PFF
制作プロダクション:エリセカンパニー
2021年/日本/カラー/1.85:1/5.1ch/DCP/128分/英題:Let Me Hear It Barefoot
配給:一般社団法人PFF/マジックアワー

公式サイト:https://www.hadashi-movie.com/
公式Twitter:@hadashi_movie
公式Instagram:@hadashimovie
コピーライト:(C)2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF

8月6日(土)より、ユーロスペースほか全国順次ロードショー

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