【レポート】ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020「合評上映会」で日本の映画界を担う若手作家3作品を一挙初上映

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映像産業振興機構(VIPO)が企画・実施する「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2020」で製作された短編映画3作品が、一般公開に先駆けて合評上映会で披露された。

上映されたのは、監督・脚本を務めた卒業制作『カルチェ』がPFFアワード2018にて入選、第19回TAMA NEW WAVEにてグランプリを受賞し、大学卒業後は石井裕也監督のもとで監督助手を務めた植木咲楽監督作『毎日爆裂クッキング』、日本映画大学在学中からピンク映画や低予算の現場で助監督として働き、卒業制作では「さよならあたしの夜」を16㎜フィルムで制作し、現在は様々な監督のもとで助監督として働く木村緩菜監督作『醒めてまぼろし』、映像制作団体OSAMPOを主催し、NEVER YOUNG BEACHなどアーティストのMVを手がけ、監督作『春みたいだ』がPFFアワード2017やTAMA NEW WAVE正式コンペティション部門などに入選し、海外の映画祭でも出品・上映された志萱大輔監督作『窓たち』の3作品。いずれも35ミリフィルムで撮影・編集された30分の短編だ。

舞台挨拶に登壇した3人の若手監督は、コロナウイルス感染予防対策として座席数が半数に制限されていたものの、多くの観客で埋まった客席を見て、無事にスクリーンで作品を観てもらえることに安堵した様子を見せた。

イベント概要

日時:2月3日(水) 15:30~
登壇者(※敬称略):植木咲楽監督、木村緩菜監督、志萱大輔監督
安田聖愛、肘井ミカ、今里真、駒木根隆介、仁科貴、遠山景織子、小林涼子、関口アナン
場所:丸の内TOEI2

合評上映会は、文化庁・梶山正司参事官の「NDJC:若手映画作家育成プロジェクトは、日本映画の才能の発掘と育成を目的として今年で15年目となります。今回の3人の監督には、是非、国内外で活躍して日本映画界を盛り上げていってほしい」と若手監督たちへの激励ではじまった。

1作品目の『毎日爆裂クッキング』の植木監督は、重いテーマをコミカルな様子で描いた理由ついて「もともと食べ物をテーマにした映画を作りたいと思っていた」といい、「昨今の状況や自分の人生の中で、なにかしら罵倒されたり、不当な扱いを受けることは誰しもが経験のある事で、それをなるべく重い空気を笑い飛ばしてしまえる作品にしようと思ったんです」と明かした。

一番の勝負シーンは「初めて文の本当の感情が表に出る、卵を割るシーン」だそうで、主人公の文役を演じた安田さんも「現場で急遽、監督が今の演出に変えたんです。感情を爆発的に出すことができて良かった」と撮影時のエピソードを明かした。

今後、どんな作品を撮っていきたいかを問われると植木監督は「なるべく誠実な映画を作っていきたい。見過ごされてしまったり、蔑ろにされてしまいそうなもの、そういう経験で感じた悔しい思いや、そこから助けてもらった時の嬉しさとかを忘れないで映画を撮っていきたい」と語った。

また、出演者の渡辺えりさんから「これからも弱い者の味方の映画を撮っていってください」というビデオレターも到着し、植木監督が感謝する様子を見せるひと幕も。

続いて2作品目『醒めてまぼろし』の木村監督は、今回の作品テーマを選んだ理由について「私自身、友達や恋人的な存在もなく、拠り所というか帰るところが無く、自分が一人で生きていくためにはどうしたらいいだろうと思った時に考えた」と説明。

演出については「主演の小野さんとは、どういう気持ちでいくか、その時どういう感情であるかということを中心に沢山話し合った」といい、主人公・あき子の母親役を演じた遠山さんは「監督と話し合う中で、あき子の感情をただの思春期の反抗と見せたくないというのがあり、その気持ちに共感していたので、出来上がった作品を観てあき子の反抗する姿がすごく刺さりました」と完成した作品を観た感想を語った。

ほとんどBGMを使用しなかった理由を問われると、木村監督は「なるべく生の音を使おうと決めていた。音楽である一定の感情を塗りたくって挽回するということをしたくなかった」と答え、今後撮りたい作品について問われると「言葉で説明できない感情をちゃんと映画にできたら」と意気込みを語った。

3作品目『窓たち』の志萱監督は、絶妙な男女のすれ違いを切り取ったストーリーになった理由について「脚本をいろんな人に読んでもらい、何度も直してこの脚本になった」と明かす。

朝子役を務めた主演の小林さんは「それぞれ、少しやましかったり悲しかったりするのが恋愛だが、男性、女性、いろいろな視点を詰め込んだお話しなので、どんな度合いで表現するのがいいのかなど、撮影準備期間には監督とたくさん恋バナをしました」と撮影裏のエピソードを披露した。

印象的なラストシーンについて志萱監督は「最初の脚本では“信号が青に変わっても進めない”としか書いてなくて、一度は別のラストシーンに脚本を直したけれど、また元に戻して“点滅している”という部分を書き足した。引きの映像も撮っていたけれど、赤と青、そして点滅だけで表現できないかなと思い、最終的にこのシーンになった」と説明。

今後、どんなテーマに興味があるか問われると「映画を作ることが好きなので、長く撮り続けていった時に自分はどういった作品を撮っているんだろうということに興味があります」と答えた。

スーパーバイザーの香月純一氏が3人の若手監督それぞれに称賛のメッセージを送り、「今年のndjc2020の3本は、それぞれの作品がリンクしているようでもあり、またバラエティに富んだ作品になった。この3人の監督にますます活躍していって欲しいと思います。皆さまどうぞよろしくお願いいたします」と締めくくると、会場からは監督たちへの期待を込めた温かい拍手が広がり、合評上映会は好評のうちに幕を閉じた。

「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」
公式サイト:http://www.vipo-ndjc.jp/
公式Twitter:@ndjc_project

2/26(金)より、角川シネマ有楽町を皮切りに、名古屋(3/12~)、大阪(3/19~)にて一般公開

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