【レポート】『スパゲティコード・ラブ』丸山健志監督「東京に住むリアルな若者たちの“もがき”を描きたい」TIFF上映後Q&A

スパゲティコード・ラブ

MONDO GROSSO「ラビリンス[Vocal:満島ひかり]」のMVで注目を浴び、数々のトップアーティストのMVや、ナショナルブランドの広告を手がける映像クリエイター・丸山健志の初長編映画『スパゲティコード・ラブ』(11月26日(金)公開)が、第34回東京国際映画祭で上映され、本編上映後に丸山健志監督が登壇しQ&Aが実施された。

アーバンでスタイリッシュな映像美を特徴とする丸山健志が、今を生きる私たちを肯定する物語を創り上げた。フードデリバリー配達員、シンガーソングライター、広告クリエイター、カメラマン……東京でもがく13人の若者たちの日常を追った群像劇。「スパゲティコード」(解読困難なほど複雑に絡み合ったプログラミングコードの意)のようにこんがらがった彼らのドラマは複雑に絡み合い、やがて思いもよらぬエンディングへと辿り着く――。

倉悠貴、三浦透子、清水尋也、八木莉可子、ゆりやんレトリィバァ、土村芳らフレッシュで多彩なキャストを通じて映し出されるのは、まるで私たちの鏡像。観る者は、それぞれの苦悩を抱えながら、愛を模索し必死に生きる13人の誰かに感情移入し、物語を体験する。誰かと繋がりたくて、夢を諦められなくて、この街のどこかに居場所を探している――。エモーショナルな映像×リアルな心情が観る者の共感を増幅する最新鋭映画が誕生した。

第34回東京国際映画祭『スパゲティコード・ラブ』上映後Q&A

■日時:11月7日(日)12:40~13:10
■会場:角川シネマ有楽町
■登壇者:丸山健志監督

東京国際映画祭で今年から新たに新設された、これから世界に打って出るであろうアップライジングな新しい才能に焦点をあて、今一番海外へ紹介したい邦画を上映する「Nippon Cinema Now」に選出された『スパゲティコード・ラブ』。これまで、第24回上海国際映画祭、第15回ニューヨークJAPAN CUTS、第40回バンクーバー国際映画祭など海外の国際映画祭に出品され話題となっていた本作が、日本で初披露された。

満席の会場で、本編を観終えたばかりの観客のあたたかい拍手の中、同映画祭のプログラミングディレクターを務める市山尚三氏からの呼び込みで登壇した丸山監督は、「日本での初上映がこの東京国際映画祭ということでとても誇りに思います」と挨拶。

まずは市山氏から「この作品は色んな登場人物がたくさん出てきますが、うまく構成し群像劇を創り上げていると感じました。現代の日本の雰囲気がとても出ている作品だと思います。」との言葉があり、「オリジナル脚本で、なぜこういった企画を考えられたのか?」という質問には、「はじめに映画を撮ろうと思ったときに、東京に住むリアルな若者たちの“もがき”を描きたいと思ったのがきっかけでした。当初はメインキャラクターは13人ではなく5人くらいだったんですが、プロット化していく過程でその5人の人間性を描くことが映画の主題となってしまったので、脚本家の蛭田さんとも相談しながら一気に13人に増やしてみたときに自分の撮りたいテーマ、コンセプトがうまく伝わると思い構想していきました。」と脚本完成までのプロセスを明かした。

スパゲティコード・ラブ

モノローグで13人の登場人物の心象を表現している意図を観客から尋ねられると、「モノローグは人物を説明する上ですごく有効な手法だと思っていて、特にこの作品は登場人物が13人もいるので、キャラクターの本音が最初にうまく伝わった方がストーリーが展開しやすいと考えました。あとは個人的にモノローグが有効的に使用されている作品が好きということもあります。」と説明。

胸に刺さる台詞が多く感銘を受けたという観客からは、「観客は13人の誰かに感情移入し、自分を重ねて観るのではないかと思いますが、それぞれのキャラクターはどうやって生み出していったのでしょうか?」という質問が。これには、「まずは13人をばらばらの人間性にすること、また僕が日常的に関わっている人たちを参考にするなどしていったらこの13人が生まれました。ただ、13人を被らせないという意図はあったものの、劇中でも全員が「ヤバ」という台詞を連呼するように、個人の価値観がそれぞれあって多様化する現代でも悩んでいることは似ているなと思うことが多くて、たとえ悩んでいる人がいても、ひとりだけじゃないんだよというメッセージも表現できればと思いました。」と人物の造形についてや作品に込めた想いを語った。

東京の街を舞台に13人の若者たちのドラマが交錯する本作。「東京こそが14人目のメインキャラクターに映った」という観客から、渋谷のスクランブル交差点や東京タワーといった典型的な場所を映さなかった理由を尋ねられると、「まさに、東京が主人公のひとつであるといっても過言ではない作品だと思います。世界的にも有名なスクランブル交差点などの、いわゆる記号として分かりやすい場所よりも、とにかく今の東京を切り取りたかったので、例えば渋谷でも、撮影当時開発されたばかりだった新南口のスクランブルスクエアを描くなど、今この時代に東京にある新鮮な場所を探して撮っていきました」と、もうひとつの主人公と語る東京での撮影について振り返った。


ストーリー
フードデリバリー配達員の羽田天(倉悠貴)は、大好きなアイドルへの想いに区切りをつけるため、1000回配達を目指し走っている。シンガーソングライターの夢を諦めた桜庭心(三浦透子)は苦手な友達とダラダラと過ごしている。大森慎吾(清水尋也)はFacebookの友達が5000人を超えるが、本当の友達はいない。広告クリエイターの黒須凛(八木莉可子)は天才と称されるプレッシャーと周囲との距離に苦しんでいる。コミュ力だけで渡ってきたカメラマンの日室翼(古畑新之)は、越えられない壁を自覚している。高校生の赤羽圭(青木柚)と彼が片思いをしている千葉桜(xiangyu)は噛み合わない会話を続けている。モデルの綾瀬夏美(香川紗耶)は、実は仕事よりパパ活の方が忙しくなってきた。不登校の高校生・小川花(上大迫祐希)はインスタで嘘のリア充投稿に明け暮れている。中学生の宍戸一樹(三谷麟太郎)は毎日コンビニのイートインで時間をつぶしている。失恋のショックで引きこもりになった渋谷桃子(佐藤睦)は、復縁を願い電話占いにハマっている。桃子の隣人で同じく引きこもりの目黒梅子(ゆりやんレトリィバァ)は、隣から聞こえる桃子の独り言を聞いている。カフェで働く剣持雫(土村芳)は妻子持ちの男との不倫だけが生きがいだ。現在を生きるリアルな登場人物たちが愛を模索し東京を彷徨う。恋人同士、元カレ・元カノ、すれ違った他人…彼女たちの行動が複雑に連鎖し、思いもよらぬエンディングに向かっていく。

作品タイトル:『スパゲティコード・ラブ』
出演:倉悠貴 三浦透子 清水尋也 八木莉可子/古畑新之 青木柚 xiangyu 香川沙耶/上大迫祐希 三谷麟太郎 佐藤睦/ゆりやんレトリィバァ 土村芳
監督:丸山健志
脚本:蛭田直美
撮影:神戸千木
主題歌:「Never」三浦透子(EMI Records/UNIVERSAL MUSIC)
エグゼクティブプロデューサー:清蓮貴 プロデューサー:三池智之 原田英樹 制作プロデューサー:堀江佳輝
照明:阿部良平 録音:小林圭一 美術:土性綾 キャスティング:長谷川ゆうり スタイリスト:皆川 bon 美絵 ヘアメイク:星野加奈子
編集:中里耕介 VFX:田端俊朗 カラリスト:高橋直孝 サウンドデザイナー:スズキマサヒロ 助監督:佐藤匡太郎
制作担当:津留春花 音楽:オーディオフォース 製作:All Of Creation 制作プロダクション:PYRAMID FILM
2021年/日本映画/96分/5.1ch
配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:https://happinet-phantom.com/spaghetticodelove
公式twitter:SCL_movie
公式instagram:SpaghettiCodeLove
コピーライト:(c)『スパゲティコード・ラブ』製作委員会

11月26日(金)渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開

 

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