【レポート】『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』アンバサダー安東弘樹「戦争という言葉を軽々しく使う人こそ観て」

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

日本との国交樹立100周年を迎えるフィンランド。サンタクロース、ムーミンで知られ、2年連続幸福度世界一となったフィンランドのイメージと言えばとにかくハッピーでファンタジック。しかしフィンランドには知られざる歴史があった。フィンランドと旧ソ連との間で勃発した「継続戦争」では、ソ連に奪われたカレリア地方を取り戻すために、ある者は国家の威信を背負い、またある者は家族の未来を背負って、泥にまみれ雪に閉ざされた戦場へと向かう―。従来のフィンランドのイメージを180度覆す、苛烈な戦闘シーンが連続する『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』が6月22日(土)より公開となる。

待望の日本公開を前にした6月11日(火)、公開直前イベントが開催され、本作のアンバサダーとして実は大のミリタリー・ファンというフリーアナウンサーの安東弘樹が登壇した。

この日の会場には、久々の本格戦争映画にふさわしくほとんどが男性ファンで埋め尽くされた。しかし、登場した女性MCはサンタクロース姿。フィンランドを代表するキャラクターのひとつだが、本作『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』は、そんなフィンランドのイメージとは正反対の史実に基づいた本格的な戦争映画。いつものようにスーツで登場した安東だが、この日のトークは「魂をゆさぶられるような映画だ」と言うほど本作に感銘を受けただけあって、熱のこもったものになった。

先ずMCのサンタ姿に注目した安東は「一言で言えばカワイイですね」とまずはフェミニストぶりを発揮。しかし、そこから先はトーンが全く変わる。「戦争や武器のことについて調べることによって詳しくなればなるほど戦争の愚かさや平和の大切さを実感するんです。しかし勉強不足だったのですが、“平和の国”というイメージが強いフィンランドがソ連と激闘を繰り返した歴史があったとは知りませんでした。YouTubeでこの映画の予告を観てこの映画の舞台となった継続戦争についてもっと調べようとしていた時に、本日のトークショーの話をいただきました。これはまさに運命的な出会いだと思いました」と熱い思いを語った。

特に武器のマニアを自認する安東のトークはさらに加熱。「当時のフィンランドは戦車を作るだけの産業はあったのですが、フィンランド軍の武器はその多くが敵から鹵獲したものでした。フィンランド軍の武器が当時のアメリカやドイツの最先端の装備とは比べると旧式のものが多いのに驚きました。そんなフィンランドが超大国のソ連に挑む。これはもう、切ない戦いですね」と語る安東の目は心なしか潤んで見える。

さらにアナウンサーとして、報道人的な辛口コメントも。「この映画は現代社会の縮図とも思えました。ありのままの戦争を淡々と描いていて、それがかえって胸に突き刺さります。戦争で傷つくのはいつも一兵卒や女性や子供たちというのも現代に通じています。この映画を戦争という言葉を軽々しく使う人にこそ観てほしい。戦争の愚かさを感じられるはずです」と時事問題に踏み込んだ切っ先は、すぐに社会問題に向く。「現場の状況も分からず上から吠えるような人に限って使い物にならない。部下のことを真剣に考える優れた上司が損をしたり、組織の中で上の人間の顔色ばかり伺っている人が認められたりすることもある。現代においても問題のある組織の特徴ではないでしょうか」。

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

観客に向けても安東さんの熱いメッセージは止まらない。「皆さんの人生のどこかの部分と必ず重なる映画です。同時に、戦争、殺し合いでいつも被害を被るのは市井の人であることを訴える映画です。僕はこの映画に出会えて本当に良かったと思います」と最後に語り、大きな拍手に送られトークショーは幕を閉じた。上映前のトークとなった本イベントだが、熱いトークで観客の期待は否が応にも盛り上がり、盛況の中上映はスタートした。

ストーリー
1941年、前年にソ連との“冬戦争”に破れ、領土の一部を失ったフィンランドはソ連から領土を取り戻すためにソ連に進攻、“継続戦争”が勃発する。この戦争でフィンランドは400万の人口に対して50万の軍隊を組織、強大なソ連軍に歩兵中心の戦いを挑む。そんな中、それぞれ異なった背景を持つ4人の兵士たちは最前線で苛烈な戦闘に身を投じる。たとえ戦場で息絶えたとしても戦士たちの生きた証はそれぞれの家族に、そして大地に確実に刻まれていく…

アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場

作品タイトル:『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』
出演:エーロ・アホ(『4月の涙』)、ヨハンネス・ホロパイネン、アク・ヒルヴィニスミ、ハンネス・スオミ
監督:アク・ロウヒミエス(『4月の涙』)
撮影:ミカ・オラスマー(『アイアン・スカイ』)
2017年/フィンランド/フィンランド語/カラー/スコープサイズ/5.1ch/132分(インターナショナル版)/PG-12
原題:Unknown Soldier
後援:フィンランド大使館
配給:彩プロ

公式HP:http://unknown-soldier.ayapro.ne.jp/
コピーライト:(c)ELOKUVAOSAKEYHTIÖSUOMI 2017

6月22日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!!

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