被ばく牛と生きる

2017-10-05
2017 Power-I, Inc.

命の重さに違いはありますか?
存在が許されない声なき命を守りたい―。知られざる畜産農家の決意、軌跡に心を揺さぶられるドキュメンタリー。

2011年、福島第一原発事故から1ヶ月後、国は20km圏内を“警戒区域”に指定、立入りを厳しく制限。同年5月、農水省は放射能に汚染された食肉を流通させないため、20km圏内にいるすべての家畜の殺処分を福島県に通達。強制避難を強いられ明日をも見えない農家は、涙をのんで従うしかなかった。
「3・11」時点で約3500頭いた牛は、牛舎につながれたまま残され約1400頭が餓死。しかし、「自分たちが育ててきた牛が放射能汚染されたからといって、その命を奪うことはできない」という思いから、国が決定した殺処分の方針に納得できず、膨大な餌代を自己負担しながら牛を生かし続けようと決意した農家が現れた。ある農家は被ばくを覚悟で住んではならない居住制限区域で暮らし、別の農家は2日に1回60キロ離れた二本松市の仮設住宅から通い続けた。

研究者たちの挑戦――。「被ばくした牛の命の価値とは?」
被ばく牛を科学的に調査する大学合同チームも動き出した。研究テーマは、「世界初、低線量被曝による大型動物への影響」。しかしながら、国は初期の被ばく量が分からないという理由から価値はないと判断し、人類に有益と思われる研究にさえ協力しない。
事故翌年、被ばく牛に原因不明の白い斑点模様が出現した。事故の痕跡をリセットしたい国にとって、殺処分に応じない農家と原発事故の生き証人ともなる“被ばく牛”はやっかいな存在となっていった。原因不明の白斑を放射能による突然変異と考えたある農家は、国に抗議しようと逮捕されるのを覚悟で斑点牛を東京・霞が関へと連れて行った。
長期にわたる経済負担、避難先での老老介護など止む負えぬ事情のため、被ばく牛を生かし続けてきた農家も徐々に心が折れ脱落していく。原発事故から5年、10数軒あった反対農家は5軒となった。
本作は、故郷も仕事も奪われ、それでも経済価値のない牛を生かし続ける5年余りの畜産農家の静かな闘いとふるさとへの想いを見つめ、生き物の命の尊厳を問う渾身のドキュメンタリー。直視するのが辛い光景や、胸が痛む場面もあるが、どうか目をそらさずに観てほしい。本作製作のきっかけとなった短編版『被ばく牛の生きる道』は、2015年ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》にて最優秀賞受賞。長編版のナレーションを務めるのは俳優・竹下景子。わたしたちが知らなければいけない福島の現実と切なさを映し出した衝撃作がいよいよ公開!

<映画祭出品履歴>
2015年 ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》
短編版『被ばく牛の生きる道』 最優秀賞
2016年 ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》 セレクション上映
2017年 ハリウッド国際インディペンデント ドキュメンタリー映画祭 12月期
最優秀作品賞、最優秀初監督賞
2017年 被爆者の声をうけつぐ映画祭 セレクション上映
2017年 ウラン国際映画祭 セレクション上映(※10月ベルリンにて上映予定)
2017年 山形国際ドキュメンタリー映画祭 「ともにある Cinema with Us 2017」にて上映(※予定)

2017年10月下旬、ポレポレ東中野にてロードショー!
公式サイト

キャスト

吉沢正巳/山本幸男/池田光秀/池田美喜子/柴 開一/渡部典一/鵜沼久江/岡田啓司(岩手大学農学部教授)

スタッフ

監督・編集:松原 保
プロデューサー:榛葉 健
ナレーション:竹下景子
題字:日野松白
音楽:ウォン・ウィンツァン
撮影:名木政憲/田中義久/松原 保
整音:吉田一郎
プロダクション・マネージャー:松原真理子
協力:非営利一般社団法人「希望の牧場・福島」/一般社団法人 原発事故被災動物と環境研究会/ヒューマンドキュメンタリー映画祭《阿倍野》/Tokyo Docs/独立映画鍋/Motion Gallery
製作:株式会社パワー・アイ
配給・宣伝:太秦
【2017年|日本|DCP|104分|カラー|16:9】

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