映画『木の上の軍隊』東京完成披露上映会に堤真一、山田裕貴、平一紘監督が登壇 作品への想い語る

沖縄で先行公開中の映画『木の上の軍隊』の東京完成披露上映会が、沖縄戦から80年の「慰霊の日」にあたる6月23日に新宿ピカデリーにて実施され、W主演の堤真一と山田裕貴、そして平一紘監督が登壇した。

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(左から)平一紘監督、堤真一、山田裕貴

1945年、沖縄県伊江島で激しい攻防戦が展開される中、二人の日本兵が木の上に身を潜め、終戦を知らずに2年もの間生き延びた――そんな衝撃の実話から着想を得た作家・井上ひさしが原案を遺し、こまつ座にて上演された舞台「木の上の軍隊」が映画化。

初の東京上映となったこの日は満員御礼。宮崎から派兵された厳格な少尉・山下一雄役の堤は、上映後の余韻が漂う中「嬉しい反面、緊張感がある。この空気がまるで裁判にでもさらされているような気分」と苦笑いしつつ、「作品を観て感じてもらえたと思うので、沖縄はもちろん大ヒットで嬉しいけれど、全国に広がって欲しいと思います。生きる、前に進む、死は美徳ではないというテーマが含まれているので、神妙にならず今日の舞台挨拶は楽しく過ごしましょう」と呼び掛けた。

沖縄県伊江島出身の新兵・安慶名セイジュン役の山田は、沖縄での大ヒットに触れて「沖縄公開後に監督から電話があり『映画館に行列ができていて、他の作品かと思ったら「木の上の軍隊」でした!』と。戦争に目を向けてくれる人がこんなにもいるのだと、子供たちを含めて本作を観に行こうと思ってくれるのが嬉しい」と語った。

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沖縄公開時に各劇場をチェックしていたという平監督は「劇場の方に聞いたら『安心してください、「木の上の軍隊」ですよ』と言われてホッと胸を撫でおろしました。各劇場で幅広い世代の方々に観てもらえている」と手応えを得ていた。

オファーを引き受けた理由について、堤は「舞台版の脚本を読んだ時は木の上でのセリフ劇だったので映画にしたらどうなるものだろうかと不安だったけれど、平監督による脚本を読んだら見事に映画になっていた。舞台版を崩すことなく素晴らしい脚本で、これはやるべきだと。そしてやって良かったと思ってます」と心境を告白。

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また、山田は「戦争の悲劇についてはもちろん心の片隅にはあるけれど、日常を過ごしていたら忘れてしまいがち。この映画を観ると、戦争の映画ではあるけれど、家があること、食べられること、水があること、それがどれだけありがたい事かを感じられるはず」と述べた。

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沖縄、そして実際に伊江島で1年以上をかけてガジュマルの木を植樹して撮影を敢行した本作。堤は「僕は今年60歳ですが、ガジュマルの上に登って見る景色は綺麗でした。ここに守られているという感覚はあの木でなければ生まれなかったもの」と言い、山田も「3、4日経てば二人してスルスルと登って自分たちが座れるところ、寝転がれるところを自然に探していました。モデルとなった実際のお二人もガジュマルの木に対して家のような感覚を持っていたのではないか」と追体験。

平監督は「この作品はウソのない映画で、本当の物語があって、ほとんどのロケを沖縄の伊江島で出来た。撮影中にはガジュマルを一時保管する場所で、戦争で亡くなったとみられる方のご遺骨が出てきました。改めて僕らが撮っている現場は戦争の現場だと思った。そこで撮っている事で得られる力はあると思ったし、それが映画の大きな力になっています」と実感を込めた。

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堤と山田は意外なことに初共演。山田について堤は「嘘のない人だし、真っすぐでスタッフからも愛されている。彼は減量のために干し芋ばかりを食べていたので、撮影が休みの時は一緒に食事をしたり、現場ではくだらない話をしていました」とすっかり意気投合した様子。

一方、山田も「堤さんは凄くフランクで僕よりお喋り!」と明かし、「僕の方が聞いている事の方が多かった。撮影終わりの車中で『今日はコンビニに行くタイミングだよな?』と聞いてくれるのも凄く嬉しかった」と気配りに感謝すると、堤は「どうしてもお酒を買いたかったから」と照れ笑い。コンビニには役衣装のままで入店したそうで、山田は「日本兵が現れたと思われたはず」と懐かしそうに思い出していた。

最後に平監督は「沖縄では本日は『慰霊の日』といって正午に一分間の黙とうを捧げます。僕らスタッフ一同も黙とうをさせていただきました。沖縄の戦争映画には辛い悲しい苦しいイメージばかりが付いていると思ったので、僕はこの映画を面白いものとして色々な方々に届けたかった。沖縄では小さいお子さんから大人まで色々な世代の方がリピーターになってくれています。本日より東京から全国に発信したいと思っておりますので、是非沢山広めてください」と呼びかけた。

山田は「俳優の仕事を通して、歴史上の事を伝えられるというのは重要な意味があると感じながら本作に携わらせていただきました。生きようとする思いが誰かに伝われ!と思いながら撮影をしていました。戦争ものと聞くと敬遠する方もいると思うけれど、今日こうして逃げずに本作を観てくださった方々に感謝です。年齢制限がないので戦争を知らない世代にも伝えていける作品になると思います。生き残った実話をベースにしたお話なので生きていく力を沢山の人に渡せたらと思っています」と語った。

二児の父親である堤は「この映画を通して戦争の悲惨さはもちろんの事、生き残る大事さを感じました。僕がここにいるのは生き残ってくれた方々がいるからこそ、今ここにいるんだなと。僕には小学生の娘が二人います。僕はあまり自分の映画を娘たちには見せませんが、これは見せようと思います。小学生でも観れますので、戦争の事を知るためというよりも、生きることの大切さが伝えられると思います。『木の上の軍隊』は子供たちにこそ観てもらいたい作品です」と未来を担う子供たちに想いを託していた。


ストーリー
太平洋戦争末期、戦況が悪化の一途を辿る1945年。飛行場の占領を狙い、沖縄・伊江島に米軍が侵攻。激しい攻防戦の末に、島は壊滅的な状況に陥っていた。宮崎から派兵された少尉・山下一雄(堤真一)と沖縄出身の新兵・安慶名セイジュン(山田裕貴)は、敵の銃撃に追い詰められ、大きなガジュマルの木の上に身を潜める。仲間の死体は増え続け、圧倒的な戦力の差を目の当たりにした山下は、援軍が来るまでその場で待機することに。戦闘経験が豊富で国家を背負う厳格な上官・山下と、島から出たことがなくどこか呑気な新兵・安慶名は、話が噛み合わないながらも、二人きりでじっと恐怖と飢えに耐え忍んでいた。やがて戦争は日本の敗戦をもって終結するが、そのことを知る術もない二人の“孤独な戦争”は続いていく。極限の樹上生活の中で、彼らが必死に戦い続けたものとは――。

『木の上の軍隊』
出演:堤 真一 山田裕貴 津波竜斗 玉代㔟圭司 尚玄 岸本尚泰 城間やよい 川田広樹(ガレッジセール)/山西 惇
監督・脚本:平 一紘
原作:「木の上の軍隊」(株式会社こまつ座・原案 井上ひさし)
主題歌:Anly「ニヌファブシ」
企画:横澤匡広 プロデューサー:横澤匡広 小西啓介 井上麻矢 大城賢吾
企画製作プロダクション:エコーズ  企画協力:こまつ座  制作プロダクション:キリシマ一九四五 PROJECT9
後援:沖縄県 特別協力:伊江村
配給:ハピネットファントム・スタジオ
(C)2025「木の上の軍隊」製作委員会

公式サイト:https://happinet-phantom.com/kinouenoguntai/
公式X:@kinoue_guntai

沖縄先行公開中/7月25日(金) 新宿ピカデリー他全国ロードショー

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