アカデミー賞国際長編映画賞のハンガリー代表作品に選出された経歴を持つ、鬼才パールフィ・ジョルジ監督による異色のヒューマンドラマ『雌鶏』より、本編映像が公開された。

搬送中に逃走した1羽の雌鶏(めんどり)の旅を通して人間の尽きない欲望や社会の理不尽さをユーモラスに描き、CGIや特殊効果に頼ることなく8羽の雌鶏の実演による撮影を敢行。その高い芸術性と独特な作家性で世界の映画ファンを唸らせた。
この度公開となったのは、雌鶏と雄鶏との出会い、そしてまるで彼女の胸の内を代弁するかのようなギリシャの名曲が重なる約3分間の本編映像。
レストランオーナーのおじさんが、雄鶏を抱えて車から降りてきた瞬間、ただならぬ気配を感じたのか、じっとその姿を見つめる雌鶏。異国情緒あふれるギリシャのメロディーが鳴り響くと、雌鶏は何かを察したかのように寝床からすくっと立ち上がり、一目散に駆け出す。おじさんが「仲良くしろよ」と小屋に雄鶏を入れると、雌鶏は尋常ではない速さで駆け寄り、雄鶏をフェンス越しにじっと見つめる。そこに重なるのが、「♪― その黒い瞳 見るとめまいがして 胸が激しく高鳴り そして思い出してしまう 昔の恋人を」という歌詞。実は雌鶏は、直前に恋人を失ったのだ。まるで雌鶏の恋心そのものを歌っているかのような歌詞が、言葉を話さない雌鶏の感情を浮かび上がらせるシーンとなっている。
ジョルジ監督は本作を制作する際、自国の政治情勢により、政府の方針にそぐわないアーティストにとって厳しい状況が続いていたことから、資金調達に苦労していた。そこでプロデューサーの提案により、撮影地をギリシャへ移すことに。本作では難民問題への視点も描かれており、北アフリカやアジアからヨーロッパを目指す人々にとって主要な玄関口のひとつであるギリシャという土地は、物語にも必然性をもたらす舞台となった。そして、そのギリシャという土地は“音楽”の面でも本作に独特の魅力を与えている。

雌鶏が雄鶏と出会うシーンで流れる2曲のギリシャの歌「エピシミ・アガピメニ(本命の恋人)」 と、「タ・マヴラ・マティア・ス(あなたの黒い瞳)」は、ジョルジ監督自らが選曲したもの。まるで雌鶏の心情を歌うために作られたのではないかと思うほど映像と歌詞が見事にリンクしている。
映画『雌鶏』は9月25日公開。

ストーリー
養鶏場で生まれ育った1羽の雌鶏が、出荷用トラックから脱走!人生初の自由を手に入れた彼女は、刺激と危険に満ちた世界を走り抜け、ワケあり一家が暮らす家へと辿り着く。庭に建つニワトリ小屋で新生活を送るなか、初恋を知り、初めて産んだ卵を温め育てようと決意する。ところが大切な卵は毎日人間に回収されてしまう過酷な現実に直面。人生とは?生きるとは?雌鶏は我が子がヒヨコになる日を夢見る一方、飼い主一家はとある事件に巻き込まれる。そこには両者にとって思いがけない運命が待ち受けていた――。