第97回アカデミー賞でブラジル映画初の国際長編映画賞を受賞した、ウォルター・サレス監督の最新作『アイム・スティル・ヒア』(8月8日公開)より、本予告映像が解禁された。

『セントラル・ステーション』で国際的評価を築いたウォルター・サレスが、長編としては16年ぶりに祖国ブラジルにカメラを向けた本作は、軍事独裁政権下で消息を絶った政治家ルーベンス・パイヴァと、夫の行方を追い続けた妻エウニセの実話に基づいている。サレス自身、幼少期にパイヴァ家と親交を持ち、この記憶を、喪失と沈黙をめぐる私的な問いとして丁寧に掘り起こした。理不尽な時代に抗い続けたひとりの女性の姿を、美しくも力強い映像で永遠の記憶として刻みつける。
主演を務めたのは、サレス作品の常連フェルナンダ・トーレス。静かな闘志と深い慟哭を織り交ぜたその演技で、アカデミー主演女優賞にノミネートされた。そして、エウニセの老年期を演じたのは、実の母であり『セントラル・ステーション』でブラジル人初のアカデミー主演女優賞候補となったフェルナンダ・モンテネグロ。
解禁された予告は、エウニセが家族との幸せな思い出を記録した8ミリフィルムを、感情を抑えた表情でみつめるシーンから始まる。「ママは世界一の美女だ」―夫から深い愛を注がれ、子どもたちはビーチで無邪気に笑い、ホームパーティでは音楽とダンスに包まれながら、笑顔に満ちた日々。
だが、そこから一転、映し出されるのはその穏やかだった時間が次第に歪んでいくシーン。軍事政権下という時代の影が社会を覆い始め、ある日、エウニセの夫が突然軍部に連行され、消息を絶ってしまう。真実を知ろうともがくエウニセが周囲に助けを求めても「みんなも同じよ」と突き放され、家族への監視も日を追うごとに強まっていく。それでも、エウニセは決して立ち止まらなかった。
やがて、彼女が長い年月をかけて訴え続けた声が、ついにひとりの報道記者を動かす。事件を世界へ伝えようとするその記者は、世間の関心を引くため、悲しげな家族写真を求めた。しかし、エウニセは微笑みながらこう返す。「いえ、笑って」―「何よりも重要なのは、軍事政権の犯罪を明らかにして、裁くこと」そう語るエウニセの信念と行動は、やがてひとつの声から大きなうねりとなり、たった一人の声が、歴史を動かしていく。
ストーリー
1970年代、軍事政権下のブラジル。国会議員のルーベンス・パイヴァとその妻エウニセは、5人の子どもたちと共にリオデジャネイロで穏やかな日々を過ごしていた。だが、スイス大使誘拐事件を契機に、国の空気は一変する。抑圧の波が広がる中、ある日、ルーベンスは軍に逮捕され、そのまま連行された。愛する夫を突然奪われたエウニセは、必死にその行方を追う。しかし、その過程で彼女自身もまた軍に拘束され、数日間にわたる過酷な尋問を受けることとなる。極限の状況の中でなお、彼女は沈黙を貫き、夫の行方を捜し続けた。自由を奪われ、愛する人の消息も知らされぬまま、それでもエウニセは諦めなかった。夫の名を呼び続けたその声は、やがて静かに、しかし確かに、歴史を動かす力へと変わっていく――。
『アイム・スティル・ヒア』
出演:フェルナンダ・トーレス、セルトン・メロ、フェルナンダ・モンテネグロ
監督:ウォルター・サレス
脚本:ムリロ・ハウザー、エイトール・ロレガ
音楽:ウォーレン・エリス
撮影:アドリアン・テイジド
2024年|ブラジル、フランス|ポルトガル語|137分|カラー|ビスタ|5.1ch|原題:AINDA ESTOU AQUI|英題:I’M STILL HERE|字幕翻訳:原田りえ|レイティング:PG12
提供:クロックワークス、プルーク
配給:クロックワークス
(C)2024 VIDEOFILMES / RT FEATURES / GLOBOPLAY / CONSPIRAÇÃO / MACT PRODUCTIONS / ARTE FRANCE CINÉMA
https://klockworx.com/movies/imstillhere/
8月8日(金)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
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