映画『夏の終わりのクラシック』より、ユン・ソクホ監督の日本独占インタビューと監督動画メッセージが到着。あわせて、新場面写真が公開された。

「冬のソナタ」「秋の童話~オータム・イン・マイ・ハート~」「夏の香り」「春のワルツ」など四季シリーズと呼ばれる恋愛ドラマで日本にも韓流ブームを呼び、“恋愛ドラマの巨匠”の異名を持つユン・ソクホ監督が本作で、初韓国長編映画デビューとなった。
描かれるのは、楽園のような夏の終わりの済州島を舞台に、クラシックの名曲が紡ぐ大人の男女の最後の恋。撮影は、『殺人の追憶』、『夜の浜辺でひとり』などポン・ジュノやホン・サンスと数多くタッグを組んできた巨匠キム・ヒョング。
また、劇中曲を手掛けるのは、パク・チャヌク監督作『オールド・ボーイ』や、「冬のソナタ」、「夏の香り」、「春のワルツ」で度々ソクホのドラマ作品の音楽を手掛けてきた作曲家・ピアニストのイ・ジスが担当。韓国を誇る名匠スタッフが揃い踏みとなった。

主人公の傷ついた男女をリアルに演じたのはキム・ジヨンとペ・スビン。多くの映画やドラマで知られる実力派の2人が表現する繊細な心情に、オペラの名作「椿姫」やJ.S.バッハの「アダージョ」などクラシック音楽の調べが寄り添う。原作は伊吹有喜のベストセラー小説「風待ちのひと」で、本作が初の映像化となる。
ユン・ソクホ監督 日本独占インタビュー

ユン・ソクホ監督
Q.韓国映画の長編作品は本作が初めてと伺いました。このタイミングで劇場公開長編作品を撮ろうと思った理由はなんだったのでしょうか?
この作品を作ることになった経緯のまず非常に大きな理由は、時期的なものですね。つまりコロナ禍の時期に、私としては個人的にも、両親の体調が悪かったり、自分が病気になってしまったこともありますし、人々がお互いにコロナ禍で会うことができないような状況でしたので、非常にもどかしさがありました。そんな時期に、原作となった小説を思い出しました。この小説はかなり前に映画化するのに良さそうだと紹介された小説だったのですが、今人々は気持ち的に疲れている状況なので、こういう状況の時には、 癒しになるような映画を作りたいと思うようになりました。もともとそういったタイプの映画が好きだということもありましたので、映画の中には音楽が登場し、 そして人々の心温まる交流があるような、そんな作品を作りたいという思いがいくつも重なって、総合的にそれが原動力になりました。ですから、こういった作品を映画にして作ろうと、その時に決心して準備を始めて、3年がかりで完成させました。

Q.ドラマ撮影とは異なり、良かった点、難しかった点を教えてください。
私は今回映画の作業をしてみて、ドラマの作業よりも良かったなと思っています。自分が撮りたいものを積極的に表現できると思ったからです。 ドラマとなりますとシリーズものが多くて予算も大きかったり、後は放送の回数も多いものなので、どうしても妥協しなければいけない点も多々あるんですけれども、映画の方は企画の段階から私が撮りたいと思う、 私の好みを反映させて、そしてまた作家主義的な作品も撮れるという利点があると思います。もちろんこれは商業映画ではなくて、低予算の映画にのみ可能なことだと思うのですが、そういう点がドラマよりも長所だなと思いました。でもドラマにも長所はありますよね。テレビで放映されるものですので、見ている方たちのリアクションをとても強く感じることができます。多くの方のリアクションを肌で感じることができるので、それも長所だなと思います。映画の方はやはり映画館に足を運んで観ていただくものなので、 リアクションもやはり映画とドラマでは違うものがあると感じます。

Q.本作でもクラシック音楽が物語を牽引していくところが、やはりユン・ソクホ監督の四季シリーズを思い起こさせました。ソクホ監督にとって、クラシック音楽とは?
音楽というものは人間にとって非常に大きな存在であって、人間の人々のいつもそばに寄り添ってくれる友達のようなものだと思っています。私たちは常に音楽を通して感動を味わっていますよね。そして音楽を聴くという行為は自分の体を移動させてどこか遠くに行かなくても身近に聴けるものですよね。そんなふうにして音楽は日常の幸せの機能の一つだと思っています。ですので、音楽が存在してくれていて、幸せだな、よかったなとちょうど思っていた矢先だったのですが、 この原作小説を改めて読んで、映画の中でも音楽をたくさん表現したいと思いました。 そして、観客の方にとっては、大きな画面で、そしてスピーカーを通してその音楽に浸ってほしい、 そして映画の中に流れる音楽を鑑賞してほしいという気持ちで作りました。音楽というものが長所になる映画を作りたいという気持ちもあったんですね。ですので、なおさらこの映画においてはクラシック音楽というものは非常に大切なものでした。

Q.ご自身が特に気に入っているシーンはありますか?
撮影前に、映画に出てくる家を全部作り直したんですが、窓も全面窓ガラスに取り替えることにしました。そしてカーテンにもこだわりました。大きな窓でカーテンが少しずつ開いていくということは、男性主人公が心をそんなふうに少しずつ開いているということに例えられると思ったからです。そしてその窓に佇む彼の後ろ姿をカーテンと窓と一緒に見せたいと思って、家も全部手入れをし直して作り変えることになりました。そしてシーンとしては、ペ・スビンさん演じるジュヌがキム・ジヨンさん演じるヨンヒを訪ねていて、ヨンヒのことを慰めているときにお互い抱き合うんですけれども、あそこで少し2人の間にラブの感情が見えたというふうに思います。でも撮るときにはお互い見つめ合うというところで留めました。あのシーンは実はかなり長い時間撮ったんですけれど、編集の段階ではあのぐらいにしておきました。 確か原作の小説にはお互い愛し合っている2人がキスをするというシーンもあったと思うのですが、私としてはこれくらい見せれば十分だし、観客の皆さんには2人の気持ちは感じてもらえると思っていました。 あのシーンというのはあからさまに表現しているわけではないんですが、2人の愛の気持ちを表現した非常に印象的なシーンになりましたので気に入っています。

Q.本作を特にどんな方に届けたいですか?
この映画の中には中年の主人公が登場するのですが、 映画の中でも触れられているように人生の暑い夏が過ぎて、季節が変わって中年になり、そして人生に疲れている人たち、そして心に傷を抱えている人たちがいらっしゃったとしたら、肩の力を抜いて気楽な気持ちでこの作品を見て、ヒーリング・癒しになってくれたらいいなと思っています。もう一つは、劇中にも出てきますが、今、会いたくても会えない恋しい人というのは誰にでもいると思うんですね。例えば、亡くなってしまった両親だったり、それからもう今は会えない知人などもいると思います。そんなふうに心の中に虚しさを感じている人たちにとっても、これが癒しになればと思います。韓国でもそういう方たちが見てくださって、たくさんのリアクションを見せてくれました。そんなふうにして皆さんにとって癒しになってくれたら嬉しいと思っています。
あわせてユン・ソクホ監督より到着した動画メッセージでは、「こんにちは。『夏の終わりのクラシック』の監督、ユン・ソクホです。 この映画は美しい映像と音楽に加えて、人の心の温もりを描いたヒーリング映画です。日本の皆さん、ぜひ映画館でご覧ください。 ありがとうございました」と呼びかけた。
ストーリー
夏が終わりに近づく頃、ヨンヒは毎年、済州島へとやって来る。一方、母の遺品を片付けるために済州島に来ていたジュヌ。二人が偶然出会った日の夜、ジュヌが海で溺れかけているのを助けたヨンヒは、彼の家で膨大な量のクラシックアルバムのコレクションを目にする。どうしてもクラシック音楽を教えてほしいと、必死になってジュヌに頼み込むヨンヒ。その様子はどこか意味ありげで、断り切れなくなったジュヌは庭の片づけと引き換えにクラシックを教える約束を交わすことに。ソウルでの暮らしに疲れ切っていたジュヌは、お節介でズケズケとモノを言うヨンヒのペースに巻き込まれていくうちに、少しずつ心を開いていく。だが実は、ヨンヒもまた過去に辛い体験をしていて……。人生の道に迷ってしまった2人は次第に想いを寄せ合っていくが、夏は終わりを告げようとしていた――。
『夏の終わりのクラシック』
出演:キム・ジヨン、ペ・スビン
監督・脚本:ユン・ソクホ
撮影:キム・ヒョング
音楽:イ・ジス
原作:伊吹有喜「風待ちのひと」(ポプラ文庫)
2024年/韓国/韓国語/115分/HDサイズ/5.1ch/カラー/原題:여름이 끝날 무렵의 라트라비아타/英題:Adagio/日本語字幕:根本理恵
提供:KDDI
配給:日活/KDDI
(C)2024 Yoon’s Color Inc., All Rights Reserved
https://aisansen.com/natsunoowari/
10月3日(金)シネ・リーブル池袋他全国順次公開