『ホロコーストの罪人』監督インタビュー解禁!「この作品を映像化しないのであれば、映画そのものを作り続ける意味はない」

ホロコーストに加担したノルウェー最大の罪を描いた衝撃の実話『ホロコーストの罪人』(8月27日(金)より全国順次公開)より、ノルウェー生まれであり、この衝撃的な出来事は自分の地元の街の近くで起こった惨劇だったと語るエイリーク・スヴェンソン監督のインタビューが解禁となった。

本作は、ホロコーストにノルウェー警察・市民らが加担していたノルウェー最大の罪を描いた知られざる衝撃の実話。ベルグ収容所で強制労働を監視し、オスロの港に強制移送したのは同じノルウェー人であり、その結果、アウシュヴィッツ行きのドナウ号に乗船したノルウェー系ユダヤ人の多くがアウシュヴィッツでホロコーストの犠牲者となった。

なぜユダヤ人一家、ブラウデ家の幸せは奪われなければならなかったのか…。遠い出来事のように思える歴史的悲劇を、平凡なブラウデ一家を通して描くことで今を生きる人々にも身近な恐ろしさとして訴えかける、感情を大きく揺さぶる壮大なドラマとなっている。

ホロコーストの罪人

エイリーク・スヴェンソン監督インタビュー

1.この映画を監督するきっかけ、経緯を教えてください。

本作はマルテ・ミシュレのノンフィクション作品を基にしており、彼女は執筆にあたり入念なリサーチを行いました。マルテは第二次世界大戦開戦前からオスロに住んでいた実在の家族、ブラウデ家に焦点をあて、この家族の運命がナチス軍や近所のノルウェー人によって引き裂かれる様子を描きました。この出来事はたった数十年前、自分の地元の街の近くで起きたにも関わらず、この本を読みながら私はこういった出来事について無知であった事に気づかされました。ブラウデ家の実話は深く印象に残り、自分の中に不信感に近い不正行為に対する強い想いが沸き起こりました。自分がこの作品を映像化しないのであれば、映画そのものを作り続ける意味はないのではないかと思ったほどです。

2.自国ノルウェーの過去のあやまちを描くにあたって、難しかった点や気をつけた点は?また、ノルウェーでの顧客の反応はどうでしたか?

私は比較的若い世代になると思うので、上の世代の方々と比べて一連の出来事に対してより客観的に好奇心と広い視野を持ってこの題材に取り組めたと思います。この作品が取り上げた題材は自国ノルウェー内でも多くの論争があったので、その点については映画制作でも特に意識していました。作中では歴史学者たちによって語られている内容やその他重要資料など物語の真実の部分について細心の注意を払いました。結果、本作はノルウェーの観客、批評家、歴史学者たちから好評を得ることができました。同時に多くの人たちからはノルウェー人たちを無実な英雄として描くのではなく、ほかの視点から描く作品が増えても良い頃だろうという声が上がりました。

3.本作は原作に基づく映画になりますが、映画化にあたり変更した点や、強調されたシーンなどはありますか?

私は実際に起きた出来事、特に本作が基となっている内容について誠実でありたいと思いました。もちろんいくつかの場面は映画的表現を意識して観客にとってわかりやすく感情移入しやすいよう構成しました。私は本作では大きな政治的内容や戦争映画の‘お決まり’ではなくブラウデ家、そして登場人物一人ひとりに近いものにしようと思いました。観客にはノルウェーで実際起こったホロコーストの一部の出来事の被害者に寄り添えるようにしたかったのです。何ひとつ悪いことをしていない無実の普通の人々が自宅から引きずり出され、逮捕され、移送の果てに殺害されました。そしてこの一連の出来事に加担していたのは同じノルウェーの人たちでした。本作の制作にあたり非常に大事だったのはリサーチで訪れたアウシュヴィッツでした。ガイドの方が森の中にあるノルウェー系ユダヤ人が到着した日に殺害された収容所のある場所に案内してくれました。それは彼らの移送が始まってわずか数日後に起きた出来事でした。

4.ホロコーストをテーマにした作品や、同時代に描いた作品はたくさんありますが、参考にされた作品などはありますか?

自分たちの映画を撮影する前にもちろんたくさんの作品をみて、インスピレーションを受けました。しかし同時に私たちは独自の切り口で物語を語らなければいけないと思い、ブラウデ家とその他の個人に焦点をあてることにしました。『戦場のピアニスト(原題:The Pianist)』に出てくるいくつかの場面、特に家族間で行われた議論や彼らが抱えたジレンマは本作にも通じる部分があると思います。しかし私たちの映像作品での語り口はそれよりも現代的かもしれません。私は本作を歴史上の出来事だからといって過去形で語らず、常に現在形で語ることを意識していました。

5.1941年から約80年経った今も、世界では迫害や差別が起こっていますが、このような現状をどう感じていますか?

これについては何度も制作中によぎり、今我々が生きている世界との類似点について考えました。私とあなたのように希望や夢、家族や愛する人を持った普通の人たちなのに、すべてを奪われてしまった人々が今もいます。ホロコーストと直接的に比較できるものなどありませんが、私たちは生きている間は人権を侵害する現代の残虐行為に対して敏感である責任があると思います。たとえそれが自分たちや家の近くで行われていようと、それがはるか遠く地球の反対側で行われていようと。

6.前作「HARAJUKU」では、日本のアニメにあこがれる少女を描かれましたが、日本のカルチャーは好きですか?

はい。日本には3回訪れたことがあります。うち1回はHARAJUKUの撮影でした。私は日本が大好きです!特に電車に乗るのが好きで、新幹線での旅行は素晴らしかったです!東京、京都、奈良、別府、そして広島に行きました。私を魅了したのは古い文化と新しい文化の融合、お風呂、自然、神社、東京のネオン街です。日本で一番印象に残ってる経験はユニークなアートの島、直島です。

7.現在コロナ禍ですが、コロナの前後で何か心境、制作に変化はございますでしょうか?

もちろんです。私たちはみな新型コロナで疲弊していると思います。私自身、以前の人が溢れかえったバーや友人たちとのハグ、劇場で隣同士に座る、など恋しいものはたくさんあります。ただ世界を見るとノルウェーよりも酷い状況のなか苦しんでいる人たちがいます。このパンデミックを乗り越え、私は友人、家族、同僚といった近しい人達だけでなく、世界規模で人と人が大きな意味で近くなれることを願っています。なぜならば今地球も人類もとても繊細で壊れやすいものでそれを当たり前として受け入れてはいけないからです。私はすべての国々が手を取り合い、助けを必要としている人たちを助けることができればと願っています。とりわけワクチンについては経済強者が支配するのではなく各国に平等に行き渡って欲しいです。

8.日本のファンに向けてメッセージをお願いいたします。

作品を見てくださりありがとうございます。日本人としてどのような感想を抱いたか、私自身非常に興味を持っています。そしていつの日か近いうちにまた日本を訪れることができればと願っています!

作品タイトル:『ホロコーストの罪人』
出演:ヤーコブ・オフテブロ、クリスティン・クヤトゥ・ソープ、シルエ・ストルスティン、ピーヤ・ハルヴォルセン、ミカリス・コウトソグイアナキス、カール・マルティン・エッゲスボ
監督:エイリーク・スヴェンソン
脚本:ハラール・ローセンローヴ=エーグ、ラーシュ・ギュドゥメスタッド
製作:マーティン・サンドランド
音楽:ヨハン・セデルクヴィスト
2020年/126分/カラー/ビスタ/5.1ch ノルウェー語・ドイツ語/ノルウェー/日本語字幕:高橋澄
PG-12
原題:Den største forbrytelsen 英題:Betrayed
後援:ノルウェー大使館
配給:STAR CHANNEL MOVIES

公式サイト:https://holocaust-zainin.com/
公式Twitter:@holocaustzainin
公式Facebook:@holozainin
コピーライト:(c)2020 FANTEFILM FIKSJON AS. ALL RIGHTS RESERVED.

8/27(金)、新宿武蔵野館 ほか全国順次公開

 

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