
冒頭の挨拶では、原作「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」をプレイした感想から。監督を受けるかどうかを判断するためにプレイを始めたと明かすも、苦戦した思い出を披露。「早くクリアして、この企画をやれるかどうかを判断したいのに、全然クリアできない。会社から帰ってきたら家で『SEKIRO』を始めて、鬼庭形部が倒せないのにまた朝になっている。それが繰り返されるんですよね」と苦笑した。ここで沓名監督が「『SEKIRO』をプレイしたことがある人、手を挙げていただけますか」と客席に問いかけると、会場のほとんどの手が挙がり、来場者の“SEKIRO愛”が垣間見える一幕も。
続いて、映画化にあたって最も時間をかけた点について、沓名監督が真っ先に挙げたのが“脚本”。「この長大なゲームの要素を本当に全部やったら、映画5本分くらいになってしまうと思うので、それをまとめる作業が非常に難しい」。膨大な物語を一本の映画に落とし込むにあたり、狼と九郎の2人に焦点を絞ることを選んだという。「おはぎを作るくだりだったり、この狼と九郎の2人の時間というのをどう扱っていくか」。ゲームと違うと怒られるかもしれないとヒヤヒヤしながらも、2人に穏やかな時間を用意することが「1つの役割なのかなと思っていて」と、狼(CV:浪川大輔)と九郎(CV:佐藤みゆ希)の孤独な主従の物語を描いた本作のストーリー制作の裏側について明かす。

さらにキャラクター造形の話題では、寡黙な狼について沓名監督は「基本的に狼は、もう最初から腹の座っているキャラとして描いた」と説明する。対する九郎は「ゲーム原作よりもちょっと気持ちの上がり下がりが多いと思います。ゲームの印象だと、もっと落ち着いた対応をしていたと思うんですけど、これもゲームと映画の翻訳の違いというところで、九郎にはちょっと苦労してもらおうかなという……ダジャレになっちゃったんですけど」と笑顔を見せた。

また、アフレコ現場の話題では、ベテラン勢との収録が強く印象に残ったという。梟役・土師孝也、仏師役・浦山迅、葦名一心役・金尾哲夫について、沓名監督は「本当の大ベテランとアフレコすることが自分もあまり経験のなかったことなんですけど、ほぼワンテイクで全部行ったかなというくらいの勢いで、キャラ作りも芝居作りも完璧にしてきていただけて。息遣いだったり、たたずまいだったり、芝居で醸し出すみたいな、そのレベルの高い、声の芝居を目の当たりにできて、すごい幸せな時間だったなと思います」と感慨深げに振り返った。

主人公・狼役の浪川大輔の起用については、意外なエピソードが飛び出した。「『SEKIRO』の構造って、ちょっと『ターミネーター2』に似ているところがあると思うんですね。シュワちゃんとジョン・コナーの関係みたいな。浪川さんが子役時代にジョン・コナーの声優をやってるんですよ。だから『ジョン・コナーの浪川さんの頃からファンです。ただ、今回はシュワちゃんが浪川さんです』という話をして、ぜひお願いしますと」。寡黙な狼の芝居については「感情を込めて喋るキャラクターでは当然ないので、感情を込めない中に感情を込めるという、微妙な差異みたいなところをうまく演じていただいたので、非常にありがたかったです」と語った。

音楽の話題では主題曲に坂本龍一の「Blu」(『The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’』)が起用された理由として、「まずもって、自分が坂本さんのファンでした。いつか自分が作品を作る時に坂本さんの音楽を使えたらなというのは、ずっと夢として持っていたものです」と熱い想いを吐露。複数の候補を挙げ、完成した映像に当てながら検討を重ねた末に「Blu」に決まったという。「音楽の構造で言うと、クラシックの『ボレロ』の構造を取っていて、クライマックスに向かうに従って壮大になっていくという構造が、映画のエンディングに合うなと感じました。そして坂本さんの持つ、ただエモいだけではないというか、ただ悲しいだけではないという複雑な感情を描くというところにおいて、この作品に合うなと感じたので、選ばせていただいたという感じです」。

劇伴を担当した蓮沼執太の起用理由も明かされた。「坂本さんとシームレスに接続できる音楽家は、日本にそんなに数は多くないと思います」。加えて、沓名監督には音楽の使い方についての明確な考えがあったという。「キャラクターの感情の添え物のような音楽の使い方をしたくないという思いがずっとあって。音楽って本来いろんな使われ方があったはずで、そこをうまく噛み砕いて音楽にしてくれそうな人を探していたんです」と、本作とマッチングする劇伴制作の仕事ぶりを絶賛。

原作ゲームである「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」では3Dによる映像が用いられていた中、アニメーション化するにあたって全編手描きのフル2Dアニメーションで描かれた本作。トークの終盤ではこの制作の裏側について、予算という現実的な問題を挙げつつも、「2Dならば日本のトップレベルの現場も色々見てきていて、世界にちゃんと通用するクオリティを出せるかな、という思いがありました。原作に失礼のないように、自分が出せるものを最大限ぶつけるしかなかろうというところで、そういう選択をして、フロムさんに提案させていただいたところがあります」と、本作へ真摯に向き合った結果としての制作手法の選択であったと明かした。

トークの後には、この場にて最新情報が発表された。
まずはイベント情報。公開2日目にあたる9月5日、渋谷にて「葦名の水」天然水の配布イベントを実施することが決定。数量限定での配布となるほか、狼と九郎のフォトスポットも設置される予定だ。
続いてコラボ情報。『SEKIRO: NO DEFEAT』×東京タワーのプロジェクションマッピングショーが、9月11日より実施されることが発表された。クリエイティブ制作は株式会社ネイキッドが担当。本編のバトルを東京タワーの夜景ガラスを通して追体験できる内容となっている。

イベントの最後には、沓名監督から来場者へメッセージが贈られた。「今は口コミが大事な時代になってきておりまして。面白いなと思っていただけたら、何かしらのリアクションをネット上に痕跡として残していただけると、3週間がひょっとしたら4週間になったりということもあるかもしれませんので、ご協力いただけると嬉しいなと思っております。なんですけど、つまらなかったと思った人は、書いてもらった方がむしろいいと思っていて。完全にみんなが良かったというのは、このゲームが原作だとあり得ないとは思うんです。私は私なりに最大限やってみました。なので、何の忖度もなく、素直なご意見を表明いただけると非常に嬉しいなと思っております。本日はお越しいただきありがとうございました」と語り、大きな拍手の中、イベントは幕を閉じた。
『SEKIRO: NO DEFEAT』
声の出演:浪川大輔 佐藤みゆ希 津田健次郎 浦山迅 伊藤静 高瀬右光 土師孝也 金尾哲夫
原作:SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(株式会社フロム・ソフトウェア)
監督:沓名健一
脚本:佐藤卓哉
キャラクターデザイン:岸田隆宏
副監督:福井俊介
総作画監督:茂木海渡
アクション作画監督:向田隆
美術監督:金子雄司
色彩設計:佐々木梓
撮影監督:野澤圭輔
編集:村上義典
音楽:蓮沼執太
主題曲:坂本龍一「Blu」(『The Best of ‘Playing the Orchestra 2014’』より)
レーティング:PG12
プロデュース:ARCH
アニメーション制作:Qzil.la
配給:ANIMEC
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(C)KADOKAWA/Sekiro: No Defeat PARTNERS
http://sekiro-anime.jp/
2026年9月4日(金)より3週間限定上映