5人の男女の視点から描かれる『悪なき殺人』ドミニク・モル監督、黒澤明監督の『羅生門』スタイルを採用

悪なき殺人

2019年東京国際映画祭にて観客賞と最優秀女優賞(ナディア・テレスキウィッツ)を受賞したドミニク・モル監督によるミステリー『悪なき殺人』が12月3日(金)より公開される。

フランスの山間の人里離れた町で、吹雪の夜にある女性が行方不明となる事件が発生。この失踪事件を軸にした5つのストーリーを通し、ある5人の男女が思いもよらない形で繋がっていき、フランスからアフリカにまたがる壮大なミステリーに絡んでいた事実が次第に明らかになっていく…。人間の本能と滑稽さを、幾重にも重なる「偶然」という「必然」を通して描き、極上のサスペンスドラマが繰り広げられる。

本作で、ドミニク・モル監督が採用しているのが黒澤明の『羅生門』スタイルだ。黒澤明監督の映画『羅生門』(1950)では、被害者、被害者の妻、加害者の盗賊が三者三様の証言をし、事件の捜査が行き詰まってしまうという、同じストーリーが3つの異なる視点で描かれている。この手法をクエンティン・タランティーノ監督が“羅生門スタイル”と呼び、彼の作品『ジャッキー・ブラウン』(1997)にも採用されている。

本作はこのスタイルを取り入れながらも、「5つの視点は不揃いで絡み合っている。だが、必ずしもすべてを同じ時間を描いている訳ではない。あるチャプターでは時系列を遡る等、同じ時間を繰り返し描くというよりも、ストーリーに遊び心を持たせ、より洗練された作品に仕上げることができた」とドミニク監督は語っている。

3つの視点を5つの視点にした上、時間を遡るという新しい手法が加わり、真実に対して違った角度からスポットライトが当たっていく。登場人物の視点が変わっても、基準点として<吹雪の夜に姿を消したエヴリーヌの失踪事件>という軸がどのチャプターにも共通に存在している。すべての伏線は最終的に回収され、5つの異なる視点が見事に集結する構成力は秀逸だ。

『ジャッキー・ブラウン』に、時間を遡るデイヴィッド・フィンチャーの『ゴーン・ガール』の要素を彷彿とさせながら、小さなミステリーがやがて世界を跨ぐストーリーに発展していく様は、ハリウッド・レポーターに<『ファーゴ』と『バベル』を掛け合わせた作品>と評されている。サスペンスでありながら、人間の性(さが)をシニカルに描き出す一級の人間ドラマとしても見応え十分である。

悪なき殺人
悪なき殺人
悪なき殺人
悪なき殺人

この物語は、ある女性の殺人事件から始まる…はずだった。
ストーリー
フランスの山間の人里離れた町で、吹雪の夜にある女性が失踪し、殺された。
疑われたのは農夫・ジョゼフ。
ジョゼフと不倫する女・アリス。
そしてアリスの夫・ミシェル。
そう、我々はまだ知らない…
たったひとつの「偶然」が連鎖し、悪意なき人間が殺人者になることを。
この失踪事件を軸にして、男女がリアルタイムで繋がっていることが紐解かれていき、壮大なミステリーに絡んでいた事実が次第に明らかになっていく…。
フランスの雪深い山間の田舎で起きた事件は、遠くアフリカのコートジボワールと繋がっていたのだった。
偶然は奇跡にもなり得るが、絶望にもなり得る。
幾重にも重なる「偶然」という「必然」を目の当たりにし、私たちは“神の目”で人間の本能、滑稽さ、そして運命の危うさの一部始終を目撃することになる。

作品タイトル:『悪なき殺人』
出演:ドゥニ・メノーシェ(『エンテベ空港の7日間』『ジュリアン』 )/ロール・カラミー (『女っ気なし』)/ダミアン・ボナール(『ダンケルク』『レ・ミゼラブル』 )/ナディア・テレスキウィッツ/バスティアン・ブイヨン/ギイ・ロジェ・ “ビビーゼ ”・ンドゥリン/ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
監督:ドミニク・モル(『ハリー、見知らぬ友人』セザール賞受賞 『マンク 破戒僧』)
2019年/116分/カラー/シネスコ/5.1ch/R15+/フランス語、ヌシ語/フランス、ドイツ合作/原題:Seules les Bêtes/英題:Only the Animals/日本語字幕:高部義之
配給:STAR CHANNEL MOVIES

公式サイト:akunaki-cinema.com
コピーライト:(c) 2019 Haut et Court – Razor Films Produktion – France 3 Cinema visa n° 150 076

12月3日(金)新宿武蔵野館ほか全国順次公開!
12月4日(土)デジタル公開

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