『戦争と女の顔』女性兵士に関する関連書籍の著者・監修の逢坂冬馬、小梅けいと、速水螺旋人ら、各界著名人コメント到着

戦争と女の顔

カンヌ国際映画祭で監督賞・国際批評家連盟賞のW受賞を果たし、アカデミー賞(R)国際長編映画賞ロシア代表にも選出され、世界の映画祭を席巻した映画『戦争と女の顔』(7月15日(金)より全国順次公開)に各界著名人よりコメントが到着した。

1945年、終戦直後のレニングラード(現サンクトペテルブルグ)。荒廃した街の病院で、PTSDを抱えながら働く看護師のイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)は、ある日後遺症の発作のせいで、面倒をみていた子供を死なせてしまう。

そこに子供の本当の母で戦友のマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還する。彼女もまた後遺症を抱え、心身ともにボロボロの二人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建するための闘いに意味と希望を見いだすが…。

本作の原案であり、ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのデビュー作である元・女性兵士たちの証言集「戦争は女の顔をしていない」(岩波現代文庫)は、現在、ロシアによるウクライナ侵攻などもあり、日本でも話題となっている。

また、この女性兵士たちの証言集を小梅けいとにより漫画化された「戦争は女の顔をしていない 1~3コミック」(KADOKAWA)、さらに、本作と同様、「戦争は女の顔をしていない」から着想を得て、独ソ戦の女性狙撃兵に焦点をあてた、逢坂冬馬のデビュー作「同志少女よ、敵を撃て」(早川書房)は2022年本屋大賞/第11回アガサ・クリスティー賞大賞を受賞し、直木賞にもノミネートされた。

そして、今回、こちらの関連書籍の著者・監修である、逢坂冬馬、小梅けいと、速水螺旋人の他、各界著名人より本作へのコメントが到着した。

コメント一覧 *順不同

壊れた精神、歪みゆく心。それでも「戦後」を生きる女二人。
戦闘シーンでは描けない戦争の姿を観た。
逢坂冬馬(「同志少女よ、敵を撃て」著者)

序盤の終戦直後のレニングラードの様子、イーヤとパーシュカが暮らすアパートでの生活描写の解像度の高さにまず心を奪われました。しかし戦友のマーシャがアパートにやってきてからの全てのシーンに強い緊張感を感じ圧倒されていきます。耐え難い圧迫感。この二人に心の安らぐ時はいつかきてくれるのか、祈るようにみている自分がいました。
小梅けいと(コミック版「戦争は女の顔をしていない」著者)

戦争で受けた傷や自らの罪は癒えるのか、赦されるのか。安易に答えさせてくれない映画だ。僕はそれでも生きていたほうが良いと言いたいが、どんな顔をして言えば良いのだろう。世界ではまさにこの瞬間にも傷と罪が作り出されている。
速水螺旋人(漫画家)

目に見えない戦争の傷跡はある意味で肉体の負傷よりも悲惨なものかも知れません。
勝者も敗者も関係なく、精神のトラウマは皆共通するもの。
その中からいかにして希望を持てるか、それを考えさせる深い作品です。
ピーター・バラカン(ブロードキャスター)

フェルメールの絵画を思わせるような美しさ!
バラーゴフ監督が描きたかったのは、戦争のリアルでも生活の苦しさでもなく、トラウマを抱えた女たちのドラマである
沼野恭子(東京外国語大学教授)

戦争は、戦後もずっと存在している。生き残ることは、終わりのない苦難を受け入れることだ。
命を抱えてもがく姿に、人間の強さと希望を感じた。
今日マチ子(漫画家)

戦争は戦場だけで起きているのではない。
100人いれば100通りの苦しみや哀しみに満ちた人生が続くのだ。
それは今まさに私たちが目の当たりにしていることでもある。
浜田敬子(ジャーナリスト)

予測不能な女性ふたりの振る舞いは、戦争によって奪われた感情を取り戻す闘いだ。戦争は肉体と感情を破壊する。全身全霊をかけてその修復に挑むふたりの姿が永遠に心に刻まれる。傑作。
矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)

これは戦争映画であり、トラウマを巡って結ばれうる元兵士の女ふたりによるクィア映画でもある。
女の顔に戦争の惨さが刻印され、血と生の物語が赤と緑のミザンセーヌに仮託された絵画のような照明と色彩は『燃ゆる女の肖像』も想わせる。
児玉美月(映画執筆家)

戦争は生死を理不尽にもてあそぶ。癒えない傷に日々苦しみながら、それでも生きる希望を探し求めるイーヤとマーシャ。今なお同じ運命をたどる人々を思うと苦しくてたまらない。戦争は絶対悪である。
増田ユリヤ(ジャーナリスト)

原案

戦争と女の顔

■「戦争は女の顔をしていない」
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 三浦みどり訳(岩波現代文庫)

500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、ノーベル文学賞受賞作家のデビュー作!
ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し、看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。しかし戦後は世間から白い目で見られ、みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――。

関連書籍

■「戦争は女の顔をしていない 1~3コミック』
小梅けいと, 速水螺旋人監修、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ原作(KADOKAWA)

スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著書の漫画化。第二次世界大戦の真実を明らかにする。
「一言で言えば、ここに書かれているのはあの戦争ではない」……500人以上の従軍女性を取材し、その内容から出版を拒否され続けた、ノーベル文学賞受賞作家の主著。「狼と香辛料」小梅けいとによるコミカライズ。

(c)2022 Keito Koume Based on WAR’S UNWOMANLY FACE by Svetlana Alexievich
(c)2013 by Svetlana Alexievich Japanese comic edition published by arrangement with Sevetlana Alexievich in care of Literary Agency Galina Dursthoff, Koln,Germany through Tuttle-Mori Agency, Inc., Tokyo

■「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬(早川書房)

独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。驚愕のデビュー作。
第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞、2022年本屋大賞受賞

1942年、独ソ戦のさなか、モスクワ近郊の村に住む狩りの名手セラフィマの暮らしは、突如奪われる。日常と家族を奪った敵に復讐をはたすべく、中央女性狙撃訓練学校で、一流の狙撃兵になることを決意したセラフィマ。同じような境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ仲間たちとともに訓練を重ねながら、やがてセラフィマは、赤軍女性狙撃小隊の一員としてスターリングラードの前線へ向かうことに──。


第72回カンヌ国際映画祭W受賞(「ある視点」部門 監督賞/国際批評家連盟賞)
第92回アカデミー賞(R)国際長編映画賞 ロシア代表

作品タイトル:『戦争と女の顔』
出演:ヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴァシリサ・ペレリギナ、アンドレイ・ヴァイコフ、イーゴリ・シローコフ
監督・脚本:カンテミール・バラーゴフ
共同脚本:アレクサンドル・チェレホフ
原案:『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 三浦みどり 訳(岩波現代文庫)
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー、セルゲイ・メルクモフ
音楽:エフゲニー・ガルペリン
撮影:クセニア・セレダ
ロシア/ロシア語/2019年/137分/DCP/カラー/字幕翻訳:田沼令子/ロシア語監修:福田和代/PG12
原題:Dylda 英題:Beanpole
配給:アット エンタテインメント

公式Twitter:@dyldajp
コピーライト:(C) Non-Stop Production, LLC, 2019

7月15日(金)、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ピカデリーほか、全国順次ロードショー

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巨匠アレクサンドル・ソクーロフの下に学んだ新鋭カンテミール・バラーゴフ監督が、ノーベル文学賞受賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチの証言集「戦争は女の顔をしていない」を原案に、戦後の女性の運命を描いた。

プロデューサーは、『ラブレス』(17)や『裁かれるは善人のみ』(14)をはじめ、ハリウッドでも実績のあるウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキー。主演の二人は、新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコヴァシリサ・ペレリギナが見事に複雑な心理状態を演じきった。終戦から77年。これは戦争を知らない世代のスタッフ、キャストらが今も起こっている戦争の恐ろしさを伝える作品である。

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