【レポート】ジョニー・ウィアー登壇!「傷ついた仲間がいたらサポートしていきたい」―映画『氷上の王、ジョン・カリー』

現在公開中のアイススケートをスポーツから芸術の領域にまで昇華させた伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、ジョン・カリーを追った映画『氷上の王、ジョン・カリー』の公開記念イベントが6月11日(火)新宿ピカデリーで行われた。
ゲストは、本作にも出演し、プロスケーター、衣装デザイナー、ファッショニスタ、役者など幅広く活躍する元オリンピック選手、ジョニー・ウィアーが登壇した。

【開催概要】
日程:2019年6月11日(火)
場所:新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3丁目15-15)
登壇:ジョニー・ウィアー(プロスケーター)
司会:蒲田健(MC・パーソナリティー)

元全米五輪代表フィギュアスケーターのジョニー・ウィアーが11日、都内・新宿ピカデリーで開催された映画『氷上の王、ジョン・カリー』公開記念トークイベントに華やかな衣装で出席。本作にも出演し、プロスケーター、衣装デザイナー、ファッショニスタ、役者、さらにはLGBTQ 当事者として率先して発言するなど幅広く活躍する“氷上のポップスター”ジョニー・ウィアーが、カリーから受けた影響や、差別を受けた自らの経験のもとに「自分らしく生きること」の大切さを訴えた。

本作は、アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。アスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

ファンタジー・オン・アイスの公演で多忙を極める中、この映画のために会場に駆けつけてくれたジョニー。自らの衣装だけでなく、羽生結弦選手をはじめとするフィギュアスケーターの衣装デザインを手掛けるほどファッションにこだわりを持つ彼は、この日、神戸の大丸で購入したイッセイ・ミヤケの斬新なドレスに、ドリスヴァンノッテンのスタイリッシュな靴で登場。満面の笑顔を浮かべ、まずは「皆さん、こんばんは!ジョニー・ウィアーです」と日本語であいさつ。本作を観て大いに感銘を受けたというジョニーは、「この世界で、自分らしさを求め、自分らしく生きることはとても大事なこと。その闘いを(ジョン・カリーを通して)この映画で観ることができる」とコメント。

カリーから受けた影響についてジョニーは、「例えば、今、私が斬新なドレスを着て、皆さんを笑わせたり、喜ばせたりしていますが、何か爪痕を残すことは凄く大事だと思います。カリーは音楽や衣装の選択も独特な感覚を持っていましたし、どんなトラブルに見舞われても、クリエイティブな部分を残しつつ、それを実践してきた方なので、とてもリスペクトしています」と称賛する。

そのカリーのDNAを受け継いでいる選手としてジョニーは、「まず、長年の友人であるステファン・ランビエールが頭に浮かぶ」と明言。「ディテールに細かく意識を向けているところ、氷の上でバレエを再現しているところ、そして音楽に合わせた振り付けを完璧にこなしているところを見ると、明らかにジョン・カリーの遺伝子を受け継いでいるな、と思います
ね」と分析する。ちなみに日本人では、「直接的ではないかもしれませんが、町田樹さんと宮原知子選手ですね」と二人の名を挙げた。

また、劇中、スポーツ界のホモフォビアについて触れ、カリーの勇気を称えていたが、ジョニー自身も勇気を持って闘ってきた。「トリノオリンピックでは、自分のセクシャリティは関係なく、国の代表として戦ったが、メダルを取ることができなかった。滑り終わったあとに、パフォーマンスについて質問があると思っていたら、「ジョニー、君はゲイだよね?」という質問ばかりで驚きました」と吐露。
さらに、次のバンクーバーオリンピックでは、「カナダのテレビレポーターが、『ジョニー・ウィアーの性別テストをしよう』と言い出して問題になりましたが、今からわずか9年前の話。これは残念に思いましたね」と表情を曇らせる。
それでも前を向いて選手生活を全うしたジョニーは、「このように自分を隠さず、フィギュアスケートをやって来られたのは、同じ経験をしてきた先輩たちのおかげであり、カリーもその一人」と感謝の意を表す。さらに、「私は強い人間なので耐えることができるけれど、みんなが強い人間ではない。だからその人たちのためにも声をあげ、傷ついた仲間がいたらサポートしていきたい!」と強い意志を見せた。先日、エフゲニア・メドベージェワ選手に対する誹謗中傷に怒りをあらわにしたのも、その正義感ゆえの行動だろう。

そんなジョニーも、2022年にはプロスケーターから引退することを表明したが、これについては、「この道は自分だけで歩んできたのではなく、ファンのみなさんと一緒に歩んできた。良い時も悪い時も、みなさんが支えてくれました。本当に感謝しています。この話をすると涙が出てしまうのですが…自分はフィギュアスケーターをやめたくない、という気持ちは強いです。でも、自分が退いて、今度は若い選手がその場に立つ。またその選手がいずれ自分よりも若い選手を支える。私はその流れを横で見守る立場になると思いますが、自分自身の新しい挑戦も楽しみにしています」と最後は笑顔を見せた。

ジョニー・ウィアー(プロスケーター)
1984年アメリカ生まれ。2004年から2006年、男子シングルで全米選手権三連覇を果たす。2006年トリノ五輪5位、2010年バンクーバー五輪6位。2008年世界選手権銅メダリスト。2013年に競技生活引退を発表。『チャンピオンズ・オン・アイス』ツアーをはじめとして、様々なアイスショーに参加。衣装への関心が強く、自らのコスチュームはもちろん、羽生結弦をはじめとしたフィギュア・スケーターの衣装デザインを手掛けることでも知られる。2011年に出版した自伝で同性愛者であることをカミングアウトし、同性との婚姻関係も経験。LGBTQ当事者としても積極的に発言・活動している。また、2019年配信予定のNetflix新ドラマ『栄光へのスピン(原題:Spinning Out)』に出演。

Twitter:@JohnnyGWeir
Instagram:@johnnygweir


アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、
伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影。

氷上の王、ジョン・カリーアイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。
彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。
しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。
同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。
しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。

映画はアスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。
新たに発掘された、ホームビデオで撮影された彼の最高傑作『ムーンスケート』について監督のジェイムス・エルスキンは「どんなスケートより美しく心を打たれた。
これをみて感動を覚えない人はいないだろう」と語っている。
これは、時代に翻弄され不当な扱いを受けながらも、屈することなく高みを目指し、人を遠ざけながらも愛に飢え、滑り、踊り続けた男の物語。

作品タイトル:『氷上の王、ジョン・カリー』
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
(2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9/原題:The Ice King)
字幕翻訳:牧野琴子
字幕監修・学術協力:町田樹
配給・宣伝:アップリンク

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/iceking/
公式twitter:https://twitter.com/theicekingjp
公式facebook:https://www.facebook.com/TheIceKingJP/
コピーライト:(c) New Black Films Skating Limited 2018 / (c) 2018 Dogwoof 2018

新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国公開中

↑上に戻る