【レポート】映画『氷上の王、ジョン・カリー』町田樹が登壇!「“ジョン・カリー”のノーミス演技は『ロト6』レベルの確率」

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、ジョン・カリーを追った映画『氷上の王、ジョン・カリー』が5月31日(金)に公開となる。このたび、本作の公開に先駆け、新宿ピカデリーにてジャパンプレミアが開催された。

【開催概要】
日程:2019年5月9日(木)
時間:20:30~21:20(予定) マスコミ受付:20:00
場所:新宿ピカデリー(東京都新宿区新宿3丁目15-15)
登壇:町田樹(慶應義塾大学・法政大学非常勤講師)、宮本賢二(振付師)
司会:蒲田健(MC・パーソナリティー)

元フィギュアスケート選手の町田樹さんが9日、新宿ピカデリーで開催された映画『氷上の王、ジョン・カリー』のジャパンプレミアに出席。本編上映後のトークコーナーでは、カリーの魅力はもとより、競技としてだけではない総合芸術としてのフィギュアスケートのあり方や令和に向けてのヴジョンなど、自身の現役時代の経験を交えながら熱く語った。この日は、髙橋大輔さんや羽生結弦さんらトップスケーターの振付師として活躍する宮本賢二も登壇した。

本作は、アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリーの知られざる素顔に迫るドキュメンタリー。アスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。

2018年、プロスケーター引退後は研究者の道へ進み、現在、慶應義塾大学・法政大学非常勤講師を務める町田さん。かつて雑誌の連載でカリーを取り上げたことがきっかけで、今回、本作の字幕監修・学術協力として参加することに。「芸術としてのフィギュアスケート作品を考えたときに、彼の名前が頭の中にパッと閃く」というほどカリーに惚れ込んでいる町田さんは、ジュニア時代に初めて優勝した大会もイギリスで行われた『ジョン・カリー・メモリアル』だそうで、「私とカリーの関係はそこから始まっている」とニッコリ。

カリーの伝記を読んで驚嘆したという町田さんは、「1976年のインスブルック冬季五輪で、フィギュアスケート男子シングルの金メダルをノーミスで獲得しているんですが、伝記によると、その前の練習で約1ヶ月間、ずっとノーミスだったそうです。ここまで完璧なまま本番を迎え、そして金メダルを獲るなんて、『LOTO6(ロトシックス)』を当てるくらい難しい。練習に裏打ちされた結果と美、なんですよね」と独特の表現でカリーの凄さを表現した。

また先日、フィギュアスケートの専門雑誌『ワールド・フィギュアスケート』で、「町田樹セレクション・スペシャルアワード」という新たな連載をスタートさせたという町田さん。「独断で勝手に賞を贈る」という企画だそうだが、もしもカリーに贈るとしたら、町田さんは、「ポラリス賞を贈りたい」と発表。
その理由として、「ポラリスとは北極星のことなんですが、不動の基点として輝いている人、つまり、カリーはフィギュアスケーターの誰もが目標とすべき指標だと思うんですね。目指すべき人であり、学ぶべき人」と惜しむことなく称賛の言葉を贈った。

今年5月1日、ついに新元号「令和」を迎えたが、これからのフィギュアの未来について二人は、さらなる技術の向上を期待する。「4回転半、5回転の時代は間違いなく来るでしょうね。ただ、技術を上げた分、芸術性も上げていかなければならない」と語る宮本さんに対して町田さんは、大いに共感しながらも、「考えなくてはいけないのは、『その技術を使ってあなたは何を表現したいですか?』というところだと思います」と指摘。

さらに、「今後、間違いなくAIが深く関与してくる」と断言する町田さんは、「オリンピック競技になっている以上、勝ち負け、優劣は、客観的でなければならないと思う。ただ、AIが好む演技ばかりしていると、機械的な表現になってしまうので、令和のスターフィギュアスケーターの条件は、『AIに支配されない演技ができること』と言えるんじゃないか」と持論を展開。

「もちろん、テクニカルスコア(技術点)などAIが必要な部分もあるので、AIと人間の相互補完的な演技の評価システムを構築していく時代なのかなと思います」と締めくくった。

プロフィール

町田樹(慶應義塾大学・法政大学非常勤講師)
1990年生まれ。2006年全日本ジュニア選手権優勝。シニア転向後はグランプリシリーズで通算4勝。2014年2月ソチオリンピック出場、団体・個人ともに5位入賞。同年3月の世界選手権では銀メダル獲得。同年12月に選手引退の後は、プロフィギュアスケーターとして自作振付による作品をアイスショーで発表し続けた。2018年10月プロ引退。一方、2015年より早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に進学、現在は博士後期課程に在学中。専門はスポーツマネジメント、スポーツ文化論、文化経済学、身体芸術論。2018年4月より慶應義塾大学・法政大学で非常勤講師も務めている。

宮本賢二(振付師)
シングルからアイスダンスに転向し、全日本選手権優勝などの数々の栄冠を手にした国内トップクラスのスケーター。2006年に現役を引退してからは、振付師として羽生結弦や髙橋大輔、織田信成、町田樹、エフゲニー・プルシェンコ、荒川静香、安藤美姫、宮原知子などの国内外のトップスケーターの他、様々なアイスショーの振り付けからアニメ『ユーリ!!! on ICE』の作中の振付まで数多くの振り付けを担当。テレビ、新聞等での解説も行っている。

アイススケートを「スポーツ」から「芸術」へと昇華させた、
伝説の五輪フィギュアスケート金メダリスト、その知られざる光と影。

アイススケートをメジャースポーツへと押し上げ、さらに芸術の領域にまで昇華させた伝説の英国人スケーター、ジョン・カリー。
彼はバレエのメソッドを取り入れた演技で、1976年インスブルック冬季五輪フィギュアスケート男子シングルの金メダルを獲得する。
しかし、マスコミが真っ先に伝えたのは、表に出るはずのなかった彼のセクシュアリティだった。
同性愛が公的にも差別されていた時代に、ゲイであることが公表されたメダリストの存在は、世界中を驚かせ論争を巻き起こす。
しかし、彼は華麗な滑りで多くの人を魅了し続け、現在の日本人スケーターにも影響を与えている。

映画はアスリートとしてのカリーだけでなく、栄光の裏にあった深い孤独、自ら立ち上げたカンパニーでの新たな挑戦、そして彼を蝕んでゆく病魔AIDSとの闘いを、貴重なパフォーマンス映像と、本人、家族や友人、スケート関係者へのインタビューで明らかにしていく。
新たに発掘された、ホームビデオで撮影された彼の最高傑作『ムーンスケート』について監督のジェイムス・エルスキンは「どんなスケートより美しく心を打たれた。
これをみて感動を覚えない人はいないだろう」と語っている。
これは、時代に翻弄され不当な扱いを受けながらも、屈することなく高みを目指し、人を遠ざけながらも愛に飢え、滑り、踊り続けた男の物語。

作品タイトル:『氷上の王、ジョン・カリー』
出演:ジョン・カリー、ディック・バトン、ロビン・カズンズ、ジョニー・ウィアー、イアン・ロレッロ
ナレーション:フレディ・フォックス(『パレードへようこそ』『キング・アーサー』)
監督:ジェイムス・エルスキン(『パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリスト』)
(2018年/イギリス/89分/英語/DCP/16:9/原題:The Ice King)
字幕翻訳:牧野琴子
字幕監修・学術協力:町田樹
配給・宣伝:アップリンク

公式サイト:http://www.uplink.co.jp/iceking/
公式twitter:https://twitter.com/theicekingjp
公式facebook:https://www.facebook.com/TheIceKingJP/
コピーライト:(c) New Black Films Skating Limited 2018 / (c) 2018 Dogwoof 2018

2019年5月31日(金)、新宿ピカデリー、東劇、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開

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