【レポート】『イン・ザ・ハイツ』スペシャルトークショーに宇野維正が登壇!社会背景も交えて解説「何回見ても今年1番」

イン・ザ・ハイツ

トニー賞4冠(作品賞、楽曲賞、振付賞、編曲賞)とグラミー賞ミュージカルアルバム賞を受賞した傑作ミュージカルを映画化した『イン・ザ・ハイツ』が7月30日(金)日本公開となることを記念して、映画・音楽ジャーナリストの宇野維正によるスペシャルトークショーが行われた。本作を「本年度ベスト」と絶賛する宇野が、原作者や作品背景について熱を込めて解説した。

『イン・ザ・ハイツ』特別トークショー

日時:7月20日(火) 20:55〜21:20(本編上映後)
登壇者(敬称略):宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)
場所:ワーナー・ブラザース 内幸町試写室

<以下、レポート>
■ 『イン・ザ・ハイツ』原作者について
「この作品2回見ているんですけど、何回見ても今年1番だなってくらいに感動してしまった」と語る宇野。まず観客に向けて、「かき氷屋さんの人が劇中で度々出てきますが、なぜか分かりましたか?あれが原作者のリン=マニュエル・ミランダさんなんです。彼はまだ41才なんですけど、ご存知の方も多いと思いますが「ハミルトン」っていうミュージカルでですね、世界中でセンセーションを巻き起こした人なんです。我々の同時代を生きているクリエイターの中で歴史に名を残す5本の指に入ると思います。ケンドリック・ラマーなどと共に、50年後も100年後も語り継がれるであろう人物。そういうクリエイターの当時25歳で作った作品なんです!」と原作者を紹介した。

イン・ザ・ハイツ

■ キャスティングの素晴らしさ
続けて宇野は、リン=マニュエル・ミランダが原作ミュージカルでウスナビを演じていたことを紹介。そして最近観たリーアム・ニーソン主演『ファイナル・プラン」の話題に。理由は『ファイナル・プラン』に本作の主演を演じたアンソニー・ラモスがキャスティングされているからだ。

「あの映画で悪い警察が出てくるんですけど、その1人をアンソニー・ラモスが演じているんです。どういうことかというと、リーアム・ニーソンが出てる映画の5番目くらいに悪い役、そういう役しかヒスパニック系の人ってハリウッドでは基本的に役をもらえないんです。この映画の偉大なところはハリウッド映画なのにも関わらずスター俳優が主役じゃないところ。2012、3年に映画化の話が立ち上がった時、シャキーラやジェニファー・ロペス、の名前が上がったそうです。こういう作品の映画化はスターを出そうと普通なるんですけど、今回は監督がアジア系でキャストを固めた『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ。だから単純に当てればいいんじゃなくて、ハリウッドでこれまで真ん中にいなかった人に光をあてる。それをインディーではなくハリウッドの娯楽作品でやる。とても意義があることだと思います」。

イン・ザ・ハイツ

■ 本作の社会背景について
物語の転換点で停電が起こる。真夏に停電で、エアコンや扇風機も使えない。暑さで大変な状況になる。これは現実にNYで起きた出来事がモチーフになっているようだ。

「これは2003年の8月にNYというかカナダの方も含めた東海岸で大きな停電があったんです。29時間停電が続き、当時、日本でもニュースのトップニュースになったんですけど、当時NYに暮らしていた人は語り草にしています。なぜかというと最初はみんなパニックになったんだけど、10時間15時間たってくると、みんなでロウソクをつけあって、真っ暗な中に一緒にいるコミュニティの一体感があったそう。9.11の2年後に起きたこの出来事で、自分の住んでいるコミュニティに対する信頼を確認したんだと思います」と、社会背景について解説した。

続けて話題はNYの地価の話題に。宇野は「映画で家賃がどんどん高くなっていって、例えば美容院は橋を渡った先に行かなくてはならなくなった。これはミュージカルの初演の2005年と比べても実際にNYの地価はとんでもないことになっているんです。いまマンハッタンで過ごすことが難しくなっている。特に移民の人たちにとっては。ただこれは東京でも上海、ソウルでも世界中で起こっていること。都市の中心に普通の人は住めなくなってきている。こうしたことが進行している中で、本作は地元で生きることを歌い上げた作品。いまコロナでレストランやカフェが大変なことになってますけど、コロナ以前からこういう話はあった。いま行ったら映画に映っているような状況じゃないかもしれない。けど願望やファンタジーも含めて、やはり地元愛を歌っているんですね。ワシントンハイツで撮影しているし、そこに大義があるんです」。

イン・ザ・ハイツ

■ 今年のミュージカル映画ブームの口火となる!
さらに、「日本で当たったらいいなと思うんですよね。よかった人はぜひ人に勧めてください!そして今年はミュージカルの年になると思います。それこそプエルトリコ系の人たちをちゃんと映画で描いたパイオニア的作品の『ウエスト・サイド・ストーリー』が12月に控えています。スピルバーグがリメイクした作品ですね。また、なんとリンが監督デビューします。これもNYを舞台にした『tick,tick…BOOM!』がNetflixで年内に配信。アカデミー賞はこれらの戦いになるかもしれません!」と締めくくった。

ストーリー
“何度でも立ち上がる”――逆境に立ち向かう人々と、夢に踏み出す若者たち。
NY、片隅の街から今の世界に響き渡る歌と熱い夢が魂を揺さぶる、感動のミュージカル

ニューヨーク、“ワシントン・ハイツ”は、道端に置かれたラジカセ、アパートの窓、カーラジオなどからいつも音楽が流れる、実際にある賑やかな移民の街。その街で育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーはつまずきながらも自分の夢に踏み出そうとしていた。ある時、街の住人たちに住む場所を追われる危機が訪れる。これまでも幾度と様々な困難に見舞われてきた彼らは今回も立ち上がるが―。突如起こった大停電の夜、街の住人達そしてウスナビたちの運命が大きく動き出す。

作品タイトル:『イン・ザ・ハイツ』
出演:アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、レスリー・グレース、メリッサ・バレラ、オルガ・メレディス、ジミー・スミッツ
監督:ジョン・M・チュウ
製作:リン=マニュエル・ミランダ
原題:In the Heights
製作国:アメリカ
全米公開:2021年6月11日
配給:ワーナー・ブラザース映画

公式サイト:intheheights-movie.jp #インザハイツ
コピーライト:(C) 2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

7月30日(金) 全国ロードショー!

 

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