【レポート】『トリとロキタ』ティーチイン付プレミア上映にダルデンヌ監督兄弟登壇!物語の背景を熱く語る

トリとロキタ

映画『トリとロキタ』(3月31日(金)公開)のティーチイン付きプレミア上映イベントが2月28日()、ヒューマントラストシネマ渋谷にて実施され、本作のPRのため来日したジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督が登壇した。

およそ6年ぶりに来日を果たしたジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督兄弟。前作の『その手に触れるまで』(20)ではコロナ禍の影響で来日を断念したため、今回は日本の映画ファンにとっては悲願のイベントとなった。また、ダルデンヌ監督作品でチケットを購入すれば参加できるプレミア上映は日本では稀なため、貴重な機会となった。

【プレミア上映レポート】
『トリとロキタ』の上映後、大きな拍手で迎えられた兄のジャン=ピエールと弟のリュック。「日本に来ることができ、こうして観客の皆さんに観て頂けて嬉しいです。たくさん感想や質問をお伺いできればと思います」とコメントし、和やかなムードでティーチインが始まった。

この作品を作ったきっかけは、アフリカからヨーロッパにやってきた保護者のいない未成年の移民難民が多く存在し、ビザが取れなかったために悲しい結末を迎える状況があるということを新聞記事で見たことだというリュック。早速観客から今回のようなテーマで映画を撮ることの意図を問われると、「この現状を告発したいと思いました。そしてこの告発は、トリとロキタというふたりの、裏切られることのない最後まで貫かれる友情を通して描きたいと思いました」と今の社会現状に対する告発と主人公ふたりの友情を通して描いたことを伝えた。

トリとロキタ

また、「主人公ふたりのキャラクターはどのようにして生まれたのか?」と問われると、ジャン=ピエールは「“とある移民”という一つのケースではなく、あくまでも“トリとロキタ”というふたりの登場人物を描くことにこだわりました。トリは小柄で機転が利きよく動く。一方、ロキタは身体は大きいが、心身共に静かに辛いことを一手に引き受ける。この物語の友情はこのふたりでなければ成立しませんでした」と、“動”のトリと“静”のロキタが誕生した制作秘話を語った。

トリとロキタ

長年の監督のファンから「緊迫感のあるショットはいつもどのように決めているのか?」というマニアックな質問が出ると、しばし沈黙が。そして、「その問いは美容師に、髪の毛をどう切るのか聞くのと一緒ですね。もうどう決めているのかわからない」と、35年以上第一線で映画を撮り続けているベテランの名匠らしい、そして観客にとっては意外な答えに会場が沸く展開に。

さらに、「ロキタが置かれた状況そのものが緊迫感を作り出していると思います。また、長回しをすることで、登場人物に起こることを観客も一緒に体験するかのように感じます。そのことが緊迫感に繋がっているのだと思います」とジャン=ピエールが真摯に回答した。

「本作では常連の慣れた俳優を使わず、新人俳優を起用しました。基本的にテイク数が多い監督ですが、今作での最大テイク数はどれくらいですか」という質問には、「今回は子供が主人公だったため、飽きさせないためにテイク数を抑えたので、最大でも13テイクくらい」と言いつつ、「でも、過去には『サンドラの週末』で70テイクくらいだったこともありました」とジャン=ピエールから仰天のエピソードが明かされた。

また、リュックからは「麻薬密売はオランダやアルバニアで多く行われているため、今回はオランダ系の俳優を多く起用しました。次回作で常連組が適しているような物語になったら起用する機会はあります」と、今後を期待させる発言も飛び出した。

沢山の手が挙がるなか、ずっと手を挙げ続けていた観客に監督自ら指名するなど、終始日本の観客に誠実で朗らかに質問に応じたダルデンヌ兄弟。最後に2人とも日本語で「ありがとう、ありがとう」と繰り返し、大盛況のうちにティーチインは終了した。

SNSでは、いち早く映画を見たファンから、「胸を抉られる傑作」「スリリングな展開であっという間の89分だった」と早くも本作を絶賛する感想や、「想像以上にお茶目な方だった」「質問したら目を見て話してくれて嬉しかった!」とダルデンヌ兄弟の明るく誠実な人柄について言及する声があがっている。

トリとロキタ
トリとロキタ

作品タイトル:『トリとロキタ』
出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ、ティヒメン・フーファールツ、シャルロット・デ・ブライネ、ナデージュ・エドラオゴ、マルク・ジンガほか
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
2022年/ベルギー=フランス/カラー/89分/Tori et Lokita
映倫:G
配給:ビターズ・エンド

公式サイト:https://bitters.co.jp/tori_lokita/
公式Twitter:https://twitter.com/Dardenne_cinema
公式Facebook:https://www.facebook.com/Dardenne.cinema/

コピーライト:(C)LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – PROXIMUS – RTBF(Télévision belge)
Photos (C)Christine Plenus

3/31(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー!

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