映画『さとこはいつも』のトークイベントが8月25日に都内で行われ、15歳の聡子を演じた姫野花春が登壇した。

沖田修一監督の長編映画デビュー20周年となるアニバーサリーイヤーに贈る完全オリジナル新作映画。沖田監督が本作で描くのは、年齢も、育った環境も異なる、3人の「さとこ」という女性たち。初めての恋を持て余し、妄想が暴走していく中学3年生、15歳の中井聡子(姫野)。不倫も仕事もスランプ気味、迷走中の映画配給会社勤務、35歳の西田沙都子(有村架純)。子育てがひと段落し、久々の自分時間で夢に目覚めた55歳の飯島里子(石田ひかり)。そんな“さとこ”たちが、自由で、みっともなくて、愛おしい日々を【自分の物語】として書き始めたとき、3人の人生が交差していく。
本作で映像デビューを果たした16歳の姫野にとっては、この日が生まれてはじめての舞台あいさつ。映画上映後、万雷の拍手で迎えられた姫野は「ちょうど1年前に撮影した作品をこうして観ていただいたんだなと思い、それで胸がいっぱいです。今、ものすごいドキドキしています。入る前はどうしようかなと不安だったんですが、皆さまがあたたかい空気というか、あたたかいお顔をしてくださっているので、本当に良かったです」とあいさつ。
約300人が参加したという本作のオーディションだが、その選考過程は、沖田監督作品ならではの独特な空気だったという。「一次審査と二次審査の二回ありました。一次では、お友だちグループの嶋っちょ(大月美里果)と、かなぶん(泉有乃)という3人でのお芝居をやって、二次では寺尾先生(吉田羊)とふたりでの芝居をやったんですが、ところどころで独特なお願いがあって。ネブライザー(吸入器)をつけてもらっていいですかと言われて。プロデューサーさんや沖田監督につけている姿見られていました」と笑う姫野。
さらに制限時間5分で「好きな食べ物について書いてください」という課題もあったそうで、「書いている姿を撮られながら、ガーッと5分で書きました。『芋へ』というタイトルで、ひたすらサツマイモへの愛を書いていました」と明かし、会場の笑いを誘った。

またオーディションや撮影のたびに「記念品としてネブライザーを持ち帰ってください」と言われたそうで、「全部記念品として持ち帰ったので、家に5本くらい溜まっています」と明かし、会場を笑わせた。
そんなオーディションを経て、合格の知らせを受けた時のことを振り返り、「沖田監督の作品に出られたらどれだけ幸せだろうという気持ちでいっぱいだったので、連絡をいただいた時は、いろんな感情が一気にきました。その時、母に連絡したんですけど、私が外で興奮して喋り倒すので、『ああ、よかったね。気をつけて帰ってきて』と言われました」と微笑ましいエピソードを披露。だが作品の公開が近づくにつれて、母親の喜びの気持ちもあふれてきたとのことで、「予告編を観て、ウワーッと喜んでました。興奮して、血がたぎってましたね」と明かし、笑ってみせた。
今回演じた15歳の聡子について、特別な準備はしなかったという。「特別に“聡子をつくらないといけない”ということはしていなくて。沖田監督からも『姫野さんそのままでいいです』と言っていただけたので、自分なりに台本を読んで、髪を切ったり、嶋っちょと、かなぶんと一緒に新大久保に遊びに行って。プリクラを撮って、イエイとやっていました。あとは耳鼻科に行った時に、先生から『ネブライザーをしましょうか』と言われて、本物をやりました」と振り返った。
そんな具合に、沖田監督からは具体的な指示はなかったというが、クランクイン前に手紙をもらう機会があったという。「その手紙にはすごい勢いで『無敵だと思ってやってくれ』と書いてあって。それを“お守り”に撮影をやっていました」と振り返った。
撮影は昨年の5月から7月にかけて行われたが、初めての映画の現場は「いい意味で全部大変でした」という。「最初は『段取りってなんですか?』『リハーサルってなんですか?』というところからのスタートでした。でもいつも沖田監督がいろんなことを教えてくれて、大変なこともあったけど、それ以上に楽しくて仕方ないなという毎日でした」と明かす。
そして、姫野とともに“3人のさとこ”を演じた有村、石田という先輩たちとの共演シーンについて質問されると、「おふたりとの撮影は1日だけ。ラストのシーンだけだったんですけど、現場は『ついにこの日が来たか!』という雰囲気で。カメラマンの芦澤(明子)さんも『これがずっと見たかったの!』と仰っていて。撮影がワイワイとすごく楽しかった記憶があります」と語る。
さらに寺尾先生役の吉田について「本当にすごいお芝居をされていて、本当に寺尾先生そのままだったので、私も演じていて、寺尾先生へのあこがれ、かっこいいなという気持ちがどんどん増してきて。それと休憩時間にはパリパリののりたまのふりかけをくださいました」と振り返る。
また黒田大輔については「待機部屋にいらっしゃった黒田さんが、せっせとあんこを作られていて。それをクラッカーに乗せて、バターも乗せて。『はじめまして、あんこを作ったんです、どうぞ』と振る舞ってくださったんです。徹夜で作ったそうで、『眠れなかった』って仰っていて。本当にすごかったです」と、和やかな現場の空気を伝えた。

そうして完成した映画を観て、姫野自身も大きな感銘を受けたという。「『みんな、自分だけの物語があるかもね』と言ってもらえているような、そんな気持ちになりました。そうして観てくださる方の内側にある“物語”も、全部受け止めてくれる。そういう映画じゃないかなと思います。最後は、すごく胸がいっぱいになります」。
最後に姫野は、「私も本当に大好きな作品なので、少しでもいいところをお伝えできたらなと思って今日は来ました。映画を応援してくださったら、すごく嬉しいです。本日は本当に楽しかったです」と語ると、深々と一礼。そんな姫野に、会場からは温かい拍手が送られた。
『さとこはいつも』は、9月18日より公開。

9月18日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー