映画『FUJIKO』の公開記念舞台挨拶が6月5日にTOHOシネマズ 日比谷で開催され、MEGUMI、片山友希、YOU、渡辺友那、リリー・フランキー、岸本加世子、木村太一監督が登壇した。

渡辺友那、MEGUMI、木村太一監督
本作は、1970から80年代の静岡を舞台に、激動の時代を生きる女性が自らの生き方を模索し、困難を乗り越えながらも力強く歩んでいく姿を描いたヒューマンドラマ。急速な変化に揺れる時代を背景に、既成の価値観や社会規範に抗いながらも、自らの人生を切り拓いていくシングルマザーの姿を描く。
数多くのミュージックビデオを手掛け、2023年の『AFTERGLOWS』で長編映画デビューを果たした木村監督だが、本作では自身の母の半生をベースにした物語を映画にしている。木村監督は「ちっちゃい頃から聞かされてきた話で、すごく大事な話なので、自分の中でいつか映画にしたいと思っていました。僕は、これが2作目なんですけど、すごく大事なタイミングだと思ったので、ここで自分の家族の話を映画にして、キャリアの飛躍につながればいいなと思いました」と語る。
企画・プロデュースを務めたMEGUMIは、木村監督と共に4年の歳月をかけて本作に取り組んできたことを明かし「こんな瞬間をみなさんと過ごせるなんて本当に感無量でございます」としみじみと語る。MEGUMIは木村監督の『AFTERGLOWS』に参加しており、「当時、私はプロデューサーを始めたばかりでしたが、たまたまニュースで『日本人女性の自己肯定感が世界で最下位』というのを見て、自分がつくる作品は、女性を応援できるようなものだったらと色濃く思っていました。そのタイミングで太一さんが、お母さんをモデルにした映画をつくりたいので、ぜひプロデューサーとして参加してくださいと中目黒の居酒屋で言ってくれて、自分がやりたい方向性と太一さんがつくりたいものがフィットしたし、長編映画もつくったことがなかったので、すごいチャンスをもらったなと一緒に伴走してきました」と振り返る。

4年もの月日の中で、ケンカをすることもあったそうで、MEGUMIは「『マジムカつく!』みたいなこともたくさんありましたが(笑)、そういうことがあったから良いものができたと思っています」と感慨深げに語った。

片山は本作が映画初主演で、シングルマザーの役を演じることになったが「初めての母親役でシングルマザーというのが『どうなんだろうな?』と気になっていたんですけど、ここにいる麻理ちゃん(渡辺)もそうですし、赤ちゃんもやっぱり、人形ではわからない重みや泣き声、温かさが伝わってくるものがあって、(渡辺は)天真爛漫で子役っぽくないんですよ(笑)。悲しかったら悲しむし、面白かったら笑うし、自然な表情から、もらえるものがすごく多かったです。だから、自分が母親として『こうやって作りました』というより、本当にみなさんからいただけるものが多かったなって思います」と感謝の思いを口にした。


渡辺は、片山との共演について「友希ちゃんはとってもカッコよくて、優しくて、本物のお母さんみたいでした。いつも優しかったので、怒られるシーンの演技だけとっても怖かったです」と語り、会場はほっこりとしたムードに包まれた。


YOUは、以前から“おばあさん”役に憧れていたとのこと。「以前の作品のせいで、若い時はネグレクト(する母親)役が多くて(苦笑)、最近はバーや喫茶店のおばさん役が多かったんですけど、ちゃんと毎日働いている老人の役に憧れていまして、メグ(MEGUMI)とその話をしたら、こういう役をいただけて楽しかったです」と満足そうに笑みを浮かべる。

YOUと、富士子の母・千代(岸本)の劇中の激しいケンカのシーンが話題を呼んでいるが、リリーはこのシーンを「平成のババアのケンカ、名シーン」。「あれだけ見ると、『ババア・ファイトクラブ』(笑)」と独特の表現で絶賛。YOUは「韓国は(ケンカで)よく髪を引っ張るシーンがあるけど、日本はお茶をかけるということで(笑)、岸本さんに『すみません、おかけします』とお話して、快くかけさせていただきました」と楽しそうに語っていた。
またリリーも、「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」で、自身の母親について小説にしているが、今回木村監督が母親についての物語を映画にしたことについて「僕の場合は、親不孝をして母を亡くした悔恨の念で小説を書いたというところがありますけど、監督はまだお母さんがご存命のうちに、お母さんをリスペクトする映画を撮られて、本当に親孝行だと思います」と木村監督を称える。

さらにリリーが「僕は親不孝の果てに、絞り出したみたいなものなので…」と語ると、隣のYOUが「そうですね」と深くうなずき、MEGUMIも「そう思います」と深く同意し、会場は笑いに包まれていた。

静岡県出身の岸本は、静岡を舞台にした本作への出演について「静岡が舞台の作品って、多いようであんまりないんですよね。なので今回、静岡が舞台ということでものすごく嬉しかったです」と喜びを口にしつつ「私ひとりだけ、静岡弁を軽くやってるんですけど、浮いてないか?と、ちょっと心配だったんですけど…」と語るが、MEGUMIは「静岡の方は大喜びでしたし、イタリア(第28回ウディネ・ファーイースト映画祭)でも、岸本さんのシーンが一番ウケていました」と明かし、片山も「イタリアの人たちは、ママに大爆笑でした」とうなずいていた。

改めて岸本は「私も早くに母を亡くしたんですが、静岡愛がものすごく深かった母に対しての思いがいまでもすごくあります。この映画を通して『お母さんの愛に勝てるものはないな』って本当に思いました」と思いを語った。

本作は第28回ウディネ・ファーイースト映画祭にて、最高賞にあたる「ゴールデン・マルベリー賞(Golden Mulberry Award)」と「ブラック・ドラゴン・特別観客賞(Black Dragon Audience Award)」を受賞した。
現地に足を運んだMEGUMIは、受賞の瞬間、号泣したそうで「友希ちゃんも号泣していて、抱き合って泣きました。人前であまり感情が出ないタイプなんですけど、さすがにこの時は崩壊しました」と興奮を明かす。
木村監督は「受賞したときは、本当に夢のようでちょっと、あんまり感動というよりも、“無の感情”みたいになっちゃって、まずは家族に感謝しようと思っていました」と振り返り、モデルとなった母にも「最初に電話して『おめでとう』と言ってくれて、胸が熱くなりました」と語る。
またイタリア、ヨーロッパの観客の反応に関して、MEGUMIは「5分くらいスタンディングオベーションをいただいて、本当に感激しました」と語り、木村監督は「イタリアの方々の“ママ・カルチャー”に刺さったのかなと思いますし、(イタリアは)食文化も大事にされていて、この映画もご飯がいっぱい出てくるのでそこに共感してくれたのかなと思います」と分析した。

ちなみに、この日の客席には、木村監督の母も来場しているとのこと。これまでに開催されたイベントや試写会などには「大谷翔平を見にロサンゼルスに行っちゃって…(苦笑)」(木村監督)、会場に足を運ぶ機会がなかったそうで、この日、ようやく母に完成した映画を見てもらえたという。
木村監督は、映画を制作するにあたって「(母から)とにかく『暗くするな』とずっと言われていたので、そこは責任を持って、強く突き進むっていう姿を見せなきゃと思っていました。映画というのはポジティブなエネルギーを作り出すものだと思っているので、そこはすごく意識しました」と語った。
片山は、映画初主演となった本作を経て、今後の目標、夢を尋ねられると「2年以上前から自分で韓国語を勉強していてコツコツ続けているんですけど、イタリアに行って『次は英語を勉強したい』と思って、いまは英語を勉強中です。せっかく自分がこんなに素敵な映画に出させていただいたので、英語と韓国語を勉強して、世界の方々とお仕事できるようになったらいいなと思っています」と語った。
舞台挨拶の最後にMEGUMIは本作について「音楽のにおいがすごくしたり、テンポ感であったり、アニメーションが入っていたり、いままでにない映画体験になっていると思います。そして、見終わった後には『自分も新しいことをやってみようかな』とか『動いてみようかな』という、晴れやかな気持ちになるような作品になっております」とコメント。
片山も「日本映画にはない疾走感があります。あらすじだけを聞くと、暗い映画なのかな?と思うかもしれないんですけど、演じている時、私も富士子のパワーをすごくもらって、1か月間、すごくエネルギッシュな自分だったなと思うので、皆様にもそのエネルギーが届いたらいいなと思います」と語る。
木村監督は「自分ではいま、この作品は最高傑作だと思っています。ただ、最高傑作というのは、必ず塗り変えていかなきゃいけないものだと思っているんですけど、でも間違いなく、この作品が人生で一番大事な作品であるというのは不変で、絶対にそこは変わることはないです。役者の皆さん、スタッフの皆さん、関わっていただいた皆さんに感謝しています。見ていただいた方にも楽しんでもらえれば本当に嬉しいです。そして、最後に母に感謝です」と語り、会場は感動に包まれた。

『FUJIKO』
出演:片山友希、YOU、リリー・フランキー、MEGUMI、うじきつよし、竹下景子、イッセー尾形、岸本加世子 ほか
原案・監督:木村太一
脚本:我人祥太、國吉咲貴
企画・プロデュース:MEGUMI
制作プロダクション:エピスコープ
製作:FUJIKOフィルムパートナーズ(KICKY、JR東海エージェンシー、Atemo、ボダパカ)
2026年/日本/シネマスコープ/95分/カラー/日本語/5.1ch/映倫区分:G
配給:Atemo
(C) 2026 FUJIKO Film Partners
https://fujiko-movie.com/
6月5日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開



