【レポート】『影裏』日本外国特派員協会のQ&Aに大友啓史監督登壇!「この2人(綾野&松田)しかいないと思っていた」

NHK大河ドラマ「龍馬伝」、『ハゲタカ』、『るろうに剣心』シリーズ、『3月のライオン』等、日本映画界に新たな挑戦をし続けている大友啓史監督の最新作であり最高傑作の呼び声も高い『影裏』が2020年2月14日(金)公開となる。
そして2月4日(火)、日本外国特派員協会での上映会後に大友啓史監督が登壇した。その土地の気候や素材を活かし、地元の一流の職人によって作られる“クラフトビール”にちなみ、大友監督が“クラフトムービー”と位置付ける本作は、日本の原風景の美しさを切り取った日本だからこそ撮ることができた作品だ。本作は外国特派員の皆様の目にどのように映るのか、ぜひご注目を。

『影裏』 公益社団法人 日本外国特派員協会 Q&A

日時:2月4日(火)※上映後
登壇者:大友啓史監督
会場:公益社団法人 日本外国特派員協会

影裏

<レポート>
Q.勿論、出身が盛岡ということもありますが、30年に及ぶキャリア、メインストリームの作品を作られている大友監督が、なぜ今、本作のような作品を作ったのでしょうか?

大友監督:NHKを辞め、映画で食べていこうと自分の会社を作る決意をした2011年に震災が起きたんです。あの時に故郷のために何もできなかったという思いがありました。盛岡を元気づけるために映画を作らないかというオファーもあったが実現できず、いつか故郷で映画を撮ろうと思っていて、今回色々な状況が整い、この映画を作ることができました。今年、オリンピックが開催されるので、日本中が熱気に包まれます。もしかしたら、人々の記憶から震災が忘れ去られてしまうんではないかと思い、今、あの時感じた東北の人達の想いを、僕自身が丁寧に忘れないように見つめておきたいと考えました。できれば観た人と共感できる作品をしっかりと残したいと思ったんです。震災というのは、朝ふらっと「行ってきます。」と言っていた人が帰ってくることがないということなんです。そういう人の想いはどこに行ってしまうのだろうか。声なき人の声、声を発することのできない人の声を伝えていくべきだと思うし、NHK時代にジャーナリズムをかじった時の名残でもあると思うんです。

Q.芥川賞を受賞した作品を原作に持ち、説明するのではなく繊細に描かれている作品だと感じました。監督自身は今野(綾野剛)と日浅(松田龍平)の2人のキャラクターをどのように解釈されているのでしょうか?

大友監督:今野は、日本の社会で普通に生きている中でも価値観の衝突が起きてしまうキャラクターです。相手がどういう風に振舞うかということにとても敏感であると同時に、彼のことを知らない土地に来ることで、自由になる部分もあります。新しい生活を始めようとしていますが、新しい土地で寂しさや孤独も感じているんです。一方、日浅は地元の人で、小さい時から川での釣りにもなじんでいます。大学は東京でも、地元のことをよくわかっているし、ふらっとスーツで夜釣りにも行くような人物です。地元の自然になじんでいて、自然のメタファーであり、コントロールできない位置づけで風来坊のようなキャラクターです。龍平君がうまく演じてくれました。

影裏

Q.松田龍平さんの演技を見ていて深い部分での演技をされているのと同時に、映画ならではの演技をされていました。撮影前から出来上がっていたのでしょうか。それとも監督と密に話し合って作り上げていったのでしょうか。

大友監督:俳優は演技をするときに何かに寄りかかりたがるんですが、今回僕からは何も与えませんでした。1つでも解釈を与えてしまうと面白くなってしまうんです。彼とは敢えてどのように演じるかを話したくなくて、龍平君もだし、綾野君も演技については話しませんでした。どういう風に演じようとしている彼らを僕はドキュメンタリーチックに撮ったんです。勿論、相違が出てきたら、建物の影に行ってコソコソと話したりはしました(笑)。背景の自然の味をコントロールして、見せ方を変えていきました。綾野君も龍平君も良い役者で、セットを観察してそこから受け止めてくれました。言葉ではなく、セットでキャッチボールをしていました。

Q.綾野さん、松田さんのお2人の役がぴったりなキャスティングですがどのようにされたのでしょうか。

大友監督:キャスティングは原作を読んで脚本を作っている時点で、この2人しかいないと思っていました。綾野君は文学的なまといを感じさせてくれる俳優で、龍平君は映画的なまといを感じさせてくれる俳優。龍平君は何もしなくても映画になる俳優で、本能的にこの2人が見たくなったんです。『影裏』というタイトルにあるように、それぞれの役が裏側に違う感情を持っているのがポイント。今野は社会との軋轢が沢山あって、本当は世の中に対して怒りを抱えていると思うんです。けれども怒りを抑えながら静かに生きているので文学的。怒りをかけながら弱く笑うのは綾野君だからできる。逆に、龍平君は、映画的な俳優で、静かにたたずんでいるだけで瞬間性と永遠性を持っているんです。

Q.地元を舞台にしたいとのことで、とても自然が美しかったのですが、主人公が重たい孤独を抱えているなと感じました。田舎での生活は人との交流がある印象だったので、この孤独について伺わせてください。

大友監督:孤独というのはコンディションではなく、その人の心持だと思うんです。お金持ちだけど、沢山の人に囲まれていても孤独な人もいる。僕も1人が好きで、干渉されるのが嫌いなんですが、人から見たら孤独かもしれない。けれども、本を読んだりするのが好きなので、孤独は場所を選ばないと思います。今回で言うと北国で孤独で、なじめない感じを持っていた2人が吸い寄せられて別れていくことを描きました。

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Q.今回、海南島国際映画祭で本作が上映され、松田さんも最優秀俳優賞をとり話題となりましたが、今後の展開について教えてください。

大友監督:小さなころから僕は盛岡の映画観で映画を観て育ってきました。映画は社会の窓で、映画を通して色々なことを知ることができました。映画はTVや配信とは違って小さな画面で見るのではなく、大きな画面で他の人々と同じものを体験できると思っているので、映画にこだわっていきたい。子供だけでなく、大人を劇場に連れてくることができる映画を作りたいです。また、海外の人たちがどういう風に観てくれるのか、コミュニケーションをとりたいと思っています。海南島(国際映画祭)も人々の受け止め方を知れて面白かったんです。映画はアートとしてだけでなく、コミュニケーションツールなので、海を越えて、人々と出会うツールにしていきたいです。

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イントロダクション
原作は、沼田真佑氏による第157回芥川賞受賞作である同名小説。大友監督が惚れ込み、自ら映画化へと動いたその情熱に応え、日本映画界を代表するキャストが集結。主人公・今野を演じるのは、『そこのみにて光輝く』『怒り』『日本で一番悪い奴ら』などで、数々の映画賞に輝き、映画・ドラマ・音楽と様々な分野で躍進し続ける俳優・綾野剛。今野と強い絆で結ばれながらも突然姿を消す謎の男・日浅には、『御法度』で鮮烈なデビューを飾り、以後、エンタテイメント作品から作家性の高い作品まで話題作に出演、強烈な印象を残し続ける俳優・松田龍平。加えて、國村隼筒井真理子中村倫也永島暎子安田顕など、錚錚たる実力派キャストが脇を固める。

ストーリー
今野は、転勤で移り住んだ岩手で日浅に出会う。慣れない地でただ一人心を許せる存在の日浅だったが、ある日、突然姿を消してしまう。日浅を探し始めた今野は、彼の父に捜索願を出すことを頼むが、何故か断られてしまう。そして見えてきたのは、これまで自分が見てきた彼とは全く違う別の顔。ともに時を過ごしたあの男の“本当”とは?

作品タイトル:『影裏』
出演:綾野剛 筒井真理子 中村倫也 平埜生成 / 國村隼 / 永島暎子 安田顕 松田龍平
監督:大友啓史
脚本:澤井香織
音楽:大友良英
配給:ソニー・ミュージックエンタテインメント 配給協力:アニプレックス

公式サイト:https://eiri-movie.com/
公式Twitter:@eiri_movie
公式Facebook:@eiri_movie
コピーライト:(C) 2020「影裏」製作委員会

2020年2月14日(金) 全国ロードショー

 


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