【レポート】『皮膚を売った男』日本アート界の話題を席巻している3名が、現代アートの裏話を暴露!?トークイベント実施

皮膚を売った男

第77回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門で主演のヤヤ・マヘイニが男優賞を受賞したほか、東京国際映画祭でも正式出品され、さらに第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた話題作『皮膚を売った男』(2021年11月12日(金)公開)のトークイベントが実施され、日本アート界を代表して、現代美術作家の加賀美健氏、アーティストの平山昌尚氏、実業家・アーティストの遠山正道氏が登壇した

主人公サム(ヤヤ・マヘイニ)は、当局の監視下にあり国外へ出られなくなってしまう。海外で離れ離れになってしまった恋人に会うためなんとかして出国したいと考えていた彼は偶然出会った芸術家からある提案を受ける。それは、背中にタトゥーをし、彼自身が”アート作品”となることだった…。芸術品となれば大金を得ることができ、展覧会の度に海外にも行ける。恋人に会うためオファーを受けたサムだったが、次第に精神的に追い詰められてゆく。高額で取引されるサムを待ち受ける運命とは…。

『皮膚を売った男』トークイベント

【日時】11月9日(火) イベント20:00~21:30(1時間30分)
【場所】銀座 蔦屋書店
【登壇者 ※敬称略】加賀美健(現代美術家)、平山昌尚(アーティスト)、遠山正道(実業家、アーティスト) MC:奥浜レイラ

まずは本作の感想として、平山は「意外にギリギリまでトレーラーで見せていますよね。でも核心は隠している」とコメントすると、加賀美は「予告編よりもポスターが核心をついていますね。迫っていますよね」とポスタービジュアルに高評価。遠山は「非常に面白い。ずっと見ていて主人公がダメな奴だなと思っていたんですが、最後に行くにつれて印象も変わりますよね。アート側の視点から見ると、今日本はアートバブルでマーケットが盛り上がっている。コロナの前は芸術祭がブームだった。同じアートでも違っていて、マーケットは売ることで価値を付ける。この主人公の背中はインスタレーションのようなものなのにビジネスにも結び付いてしまう、表現と仕組みが結びつく戦略。そういう意味でも面白かった」とアートに携わる側ならではの感想を述べた。

皮膚を売った男

資本主義的なアーティストともとれる、背中にタトゥーを彫ったジェフリーの手法については「村上隆さんのようにグローバルサーキットで勝ち抜いていくことと、美術館に展示がされる道というのは同じことですが、資本主義と言うほどのことでも無く、日本ではそこまでリーチしていかない」と遠山は話す。加賀美は「日本の流行は二極化していると思う。プチマネーゲーム的なにおいがする。ジェフリーのモデルとなったヴィム・デルボアのインタビューを読んだら、監督とやりたいことが合致している気がした。この映画はアート業界へのアンチテーゼですよね。本人が言っていたのは、排泄物をつくる装置が自分の代表作だが、これじゃ売ることができないので、今は家に飾る画をコレクターが買って鑑賞することが主流だと言っていた。その通りでペインティングのほうが売れる。コンセプチュアルなものが売れたほうがおもしろいと思うけど、買う側もお金を出すので、正にこの作品の背中のようにコンセプチュアルなものだと手元に残らないこともある。考え方にお金を出すような、買う側も頭を使うような多様性が出てくるといいですよね。オークションでピカソのような本物が出た時に盛り上がるべきなのに、値段が高騰した時にしか盛り上がらない現実がある。それも面白いけど」と続けた。

皮膚を売った男

映画のもとになった背中にアートを彫った作品「Tim」を作ったのがヴィム・デルボア。ヴィムについて聞いてみると、加賀美「シニカルな人でしょうね。インタビューでアートは普遍的であるべきと言っていた。作品が時代にコミットしすぎると後世に残っていかないのでそういった作品は作らないと。時代を見て、コンセプトを考えることも大切だと思いますが考え方が今の教育方針と逆ですよね」とその面白さを語る。

本作の主人公サムが求めた”自由”というキーワードについて、平山は「サムは確かに自由を手に入れたけど、その自由と同等の制限をされていると思います。」続けて加賀美は「なんかサムは芸能人になっちゃったみたいですよね。お金を手に入れたけど、『あなたはアート作品だから』と言われて子供とも写真撮っちゃダメって言われてたし。自由になったのかな?僕は逆に不自由になっちゃったんだと思いました」と冷静な分析を話す。

皮膚を売った男

本作のように、自身の作品をアイデアとして映画を作ると言われたら?という質問に対して、遠山は「現実では絶対に出来ない、映画でしか出来ないところが面白いですよね」と話した。平山は「一作品何十億円もする絵画をいとも簡単に殴って壊しちゃったり出来るのも映画でしかできないですよね(笑)」それにすかさず加賀美は「それが面白いですよね。ひやひやする感じが。面白いから僕は全然作品壊されてもいいと思いますもん」と話した。

皮膚を売った男

印象に残ったシーン・共感したシーンの話題になると、加賀美は「全体的にシニカルな映画でいいですよね。アートを全く知らない人が見たらどういうことを思うのか気になりました」と語った。遠山は「アートの道を目指している人はどう思うんだろうね。結構この作品はアート業界の嫌な部分を描いているから、アート業界を嫌だなと思うのか、逆に一獲千金を狙いに行くのかな」と話すと、すかさず平山は「アート業界を目指している若い子の親御んとか、『あなた背中売ってきなさい!』とかなるかもしれませんね」と会場の笑いを誘った。

締めの挨拶では、平山「忘れないように箇条書きにメモしてきて良かったです。楽しかったです」加賀美「結構前に作品をみたので忘れてしまった部分も多いので、もう一回みようと思いました。」さらに続けて「アート界のタブーに切り込んでいっているような暴露映画みてみたいですね」遠山「映画の映像もきれいです。アート好きもそうではない方も楽しめる作品です。最後びっくりしますよ」とそれぞれ思い思いの感想を語りイベントは終了した。


イントロダクション
本作の演技が高く評価されたヤヤ・マヘイニの他、『007 スペクター』『オン・ザ・ミルキー・ロード』のモニカ・ベルッチ、『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』のケーン・デ・ボーウなど、豪華キャストが脇を固める。監督を務めるのは、過去にも「Beauty and the Dogs」(17)でカンヌ国際映画祭「ある視点」音響賞を受賞し、アカデミー国際長編映画賞のチュニジア代表に選ばれたことがある実力派、カウテール・ベン・ハニア。

ストーリー
主人公サムは、当局の監視下にあり国外へ出られなくなってしまう。海外で離れ離れになってしまった恋人に会うためなんとかして出国したいと考えていた彼は偶然出会った芸術家からある提案を受ける。それは、背中にタトゥーをし、彼自身が”アート作品”となることだった…。芸術品となれば大金を得ることができ、展覧会の度に海外にも行ける。恋人に会うためオファーを受けたサムだったが、次第に精神的に追い詰められてゆく。高額で取引されるサムを待ち受ける運命とは…。

作品タイトル:『皮膚を売った男』
出演:ヤヤ・マヘイニ、ディア・リアン、ケーン・デ・ボーウ、モニカ・ベルッチ、ヴィム・デルボア
監督:カウテール・ベン・ハニア(「Beauty and the Dogs(Aala Kaf Ifrit)」(17) 第91回アカデミー賞国際長編映画賞チュニジア代表)
2020年/104分/チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビア/アラビア語、英語、フランス語
英題:The Man Who Sold His Skin 仏題:L’Homme Qui Avait Vendu Sa Peau
配給:クロックワークス

公式サイト:hifu-movie.com
コピーライト:(C) 2020 – TANIT FILMS – CINETELEFILMS – TWENTY TWENTY VISION – KWASSA FILMS – LAIKA FILM & TELEVISION – METAFORA PRODUCTIONS – FILM I VAST – ISTIQLAL FILMS – A.R.T – VOO & BE TV

11月12日(金)Bunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか全国公開

 

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