

「記憶と記録」をテーマにした坂西監督による本作の脚本を「何とも言えぬ色気が漂ってきた」と評する柄本は「結局何が起きているんだろう?とは思ったものの、妙な色気があって。これはどこへ行く映画なんだろか」と興味を深めていったという。撮影では歩くシーンの撮影が多かったというが「そうして歩いて行く中で音がしたり鳥が鳴いたり、周囲の環境に反応して僕も大胆に動いたりするわけですが、それを坂西監督は包容力を持って許してくれて。役者が自由に考えて持って来たものを柔軟に受け止めてくれた」などと振り返った。
柄本が作り上げた雄太としての歩き方について坂西監督は「柄本さんは少しずつ少しずつ違う散歩の様子を見せてくれた。僕としてはそこに違和感さえなければ、それは雄太だと思えた。柄本さんが起こす変化を、この映画の初めての観客として楽しむことが出来ました」と太鼓判を押していた。
偶然にも同じ高校の出身で、柄本は「台本を頂いて読んだ上で一度会いましょうとなった時も、本作についての話はほとんどしませんでした。好きな映画の話や俺の好きなアニメの話ばかりしていました。でもそれが、例え作品の話をしていないにしても、そのコミュニケーションが確実に作品の中には落とし込まれているはず。そのような時間がむしろ大事だったのかな」と手応えを得ていた。

雄太(柄本)の義父はイッセー尾形が演じている。坂西監督は「イッセーさんが観客を楽しませるようなユーモアを入れてくださって、それを柄本さんもナチュラルに受け止める。その関係性は義父と雄太の関係性と全く同じように見えた」と技巧派同士の立ち振る舞いに納得の表情。柄本はイッセーとは初共演になるが「イッセーさんは本当にシャイで、そのシャイさがチャーミング。シーンを深く掘り下げて考えてくださる方でもあるので、その中で僕も発見があったりして助けられた部分も大きくて。良いチームワークが取れていたと思います」とベテランの胸を借りながら演じることが出来た様子だった。

改めて完成作について柄本は「歩いているところや間や前後の空気感があったりしたので、撮影中は『何分の映画になるのだろうか?』と思ったけれど、初号試写では97分になっていた」と驚きながら「実は淡々と狙っていたのか…というのが観終わった時に確信に変わって、意外と策士!坂西だと思った」と唸っていた。坂西監督も「現場でも周囲から『これ3時間になるんじゃないか』と言われていた」と苦笑いしつつ「長く撮っていると、その前後のどちらを使うかみたいな取捨選択が出来る形にはなっていたのかなと。今となっては偉そうに言えます」と話した。
最後に主演の柄本は「ヒーローが宇宙で戦ったりする映画が沢山ある中で、『メモリィズ』は一見何が起こっているかわからないけれども、しっとりと日々の積み重ねの営みをじっくり感じさせてくれる。今、必然的に生まれた映画ではないかとも思っています」と自信を口に。坂西監督も「お客様に観てもらうまで終わっていない感覚がありましたが、今日こうして色々な人に観てもらえて本当に嬉しく思っています。皆さんの感想をインターネットでずっと見ようと思うので、どんな意見でも嬉しいので書いていただけると幸いです」と呼び掛けていた。



