【レポート】『ブライズ・スピリット』トークイベントに映画ライター・編集者のよしひろまさみちさんが登壇!

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

大ヒットTVシリーズ「ダウントン・アビー」のスタッフ&キャストとオスカー女優ジュディ・デンチが贈る、楽しくてやがて切ない英国発ラブシックストーリー『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』が9月10日(金)公開となることを記念して、8月24日(火)に行われたトークイベントに映画ライター・編集者のよしひろまさみちさんが登壇した。

あの世から帰ってきた妻が夫とやり直したいと願うおかしさと切なさが織り交じった本作の原案は、天才エンターテイナー、ノエル・カワードによる1941年の発表当時、約2000回にわたって上演された戯曲「陽気な幽霊」。1945年にデビッド・リーン監督により映画化もされた名作を、現代にフィットする物語として蘇らせたのは、大ヒットTVシリーズ「ダウントン・アビー」の監督のひとりであるエドワード・ホール

そして、同ドラマのマシュー・クローリー役で大ブレイクを果たしたダン・スティーヴンスが、霊媒師の力を借りて亡き妻をあの世から召喚させるベストセラー作家をコミカルに演じ、オスカー俳優のジュディ・デンチが、不思議な力を持つ霊媒師マダム・アルカティを快演。レトロでエレガントなファッションとインテリアで彩られた英国のアール・デコ様式の豪邸を舞台に、タイムリミット付きの切ない再会を描く、ラブシックストーリー。

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

本作の感想について、「ダウントン・アビー」のファンでもあるよしひろさんは、「ダン・スティーヴンスの困り顔から笑顔まで全て観られましたね。マッツ・ミケルセンも、百面相的なところが観られて、それがかわいらしいのが彼のよさですが、ダンもそういう系統の俳優だったのかと…」と驚きを語った。

そして、ノエル・カワードの魅力について問われると、「今でいうところの”ザ・エンターテイナー”です。なんでもできちゃうのと、交遊歴がすごく幅広いんですよね。ウィンストン・チャーチル(元イギリス首相)が友達だったり、イアン・フレミング(『007』シリーズの原作者である作家)も友達で別荘が隣同士だったりと豪華すぎる。いわゆるエンターテイナーというのは、交遊歴の幅広さもひとつの魅力ですが、それの最初のような人ではないかと思います。セレブの走りということです」と語った。

そんなカワードは、友人であるイアン・フレミングから『007 ドクター・ノオ』でドクター・ノオを演じてほしいと言われたオファーを断った逸話を持つ。そのことについて、よしひろさんは「調べたら、その断り方もすごかったんです。“ノーノーノー、1000回言われてもノーだ”と(笑)そこまで頼まれて断れるぐらいの間柄だったということですよね」と驚きを明かした。

さらに、「ガウンやスカーフを巻いたりって、カワードが作り出したスタイルなんです。ガウンはそもそも寝巻なんですが、それを表にも着て出ていけるリラックスできるカジュアルウェアで、しかもオシャレというスタイルをカワードが出してきた。それをこの映画でダン・スティーヴンスがやってる。ある意味でカワードのコスプレと言えますが、それが彼へのリスペクトの現れなんじゃないかと思います」と、本作のファッションに繋げた。

また、本作におけるキャラクターが持つモダン性にも触れ、「時代を越えて語り継がれる戯曲だと思うんです。原案の戯曲でも、例えば幽霊が話しかけてくることで人生が変わっていくことや、奥さんが亡くなってしまったという悲しいエピソードなど、今この時代にリメイクされるということに意味があると思う。デヴィッド・リーン版の映画を観ていただくと分かるんですが、それとは明らかに違う部分がある。そこがすごく今らしい」と語った。

そこに重要な役どころとして関わってくるジュディ・デンチの懐の深さについて、よしひろさんは「なんでもできちゃう人だから。ジュディは、もともとエドワード・ホール監督のお父さんであるピーター・ホールとつながりがあった人なんです。ピーターは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーというシェイクスピアの里である場所があり、それを作った人です。それで、”出てくれない?とお父さんから誘われたのよ”とかジュディから言われてしまったら、監督は緊張しちゃいますよね(笑)」と明かした。

さらに、「ジュディもそうですが、イギリスの俳優にインタビューしていて、アメリカ人俳優と全然違うと感じるところは、度胸の据わり方です。舞台という生で鍛えられた上で”メソッドなんてどうでもいい”と多くが言うんです。お客さんを相手に絶えず変わっていく生ものの舞台をずっとやっているから、台本を渡されてもサッとできてしまう。その器用さでイギリスの俳優が今、ハリウッドで大活躍してるんです。ハリウッドで”この俳優いいな”と思う人は、大体イギリスの俳優か舞台の経験がある人です」と語った。

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

本作の舞台となる1930年代は、ヨーロッパで霊媒師が大ブームの時代だった。「小学校の頃、ものすごい心霊ブームで雑誌ムーを皆で回し読みしていて、その中に出てくるエクトプラズム(霊媒の身体から発出されるといわれる正体不明の物質)の写真は、大体この時代の少し前に撮られてるんです。いまだにこの時代の写真が使われています」と、この時代のブームの“本気度”を明かした。

その上で、本作で霊媒という題材が使われたことについて、よしひろさん「カワードは、その時々の流行を敏感に察知して作品に入れ込んでるんです。だからこそですが、『007』も断ったんだと思うんです。”これは流行のものではなく、永遠に残ってしまうものだ”ということで、刹那でないものにはあまり魅かれないということなんでしょうか」と分析した。

最後に、よしひろさんは「自分のパートナーはシェアしたくないでしょうが(笑)、映画の情報はシェアしてくださいね。オリジナルの映画を知っている方は今は多くないと思うので、これを新作として広げていっていただきたいと思います。その上で、“実はオリジナルの映画もあるんだよ”という楽しみ方ができるんじゃないかと思います」とタイトルにひっかけてメッセージを寄せた。

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

ストーリー
ベストセラー作家として名を馳せるチャールズは、スランプから抜け出すために、霊媒師マダム・アルカティに頼んで、事故死した最初の妻エルヴィラを呼び戻す。実は彼の小説は全て、生前エルヴィラが生み出したアイディアを書き留めただけのものだった。チャールズは、ハリウッド進出のチャンスをかけた初脚本も、彼女の力なしではムリだと思い知ったので、蘇らせたのだ。夫との再会を喜んだのも束の間、エルヴィラは自分が幽霊で、チャールズには新しい妻ルースがいると知ってショックを受ける。それでもチャールズに頼まれるままに“共同”制作するうちに、楽しかった日々がよみがえる。やがてエルヴィラは、このまま脚本が完成しなければいいと願うのだが、この世にいられる期限は刻一刻と迫っていた──。

ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!
ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!
ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!

作品タイトル:『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』
出演:ダン・スティーヴンス、レスリー・マン、アイラ・フィッシャー、ジュディ・デンチ
監督:エドワード・ホール
原案:ノエル・カワード
2020年/イギリス/英語/100分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:BLITHE SPIRIT/字幕翻訳:中沢志乃
配給:ショウゲート

公式サイト:cinerack.jp/blithespirit/
公式Twitter:@BLITHESPIRIT_jp
コピーライト:(C) BLITHE SPIRIT PRODUCTIONS LTD 2020

9/10(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー!

 

関連記事:
『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』気鋭のイラストレーターらによるイラスト&著名人コメント到着
『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』楽しくもふたたび別れの予感…日本版予告編&ビジュアル解禁
『ブライズ・スピリット~夫をシェアしたくはありません!』9/10公開決定!名作戯曲が80年の時を超えて現代に蘇る

↑上に戻る