【レポート】『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督×伊藤亜紗氏×北村匡平氏「『ハッピーアワー』の一歩先を行く作品」

ドライブ・マイ・カー

主演に西島秀俊を迎え、村上春樹の短編を映画化した濱口竜介監督最新作『ドライブ・マイ・カー』が8/20(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開される。公開直前となる8月16日(月)、“文化を喫する、入場料のある本屋”のコンセプトで様々なジャンルの約三万点もの書籍を販売する「文喫 六本木」で、濱口竜介監督、美学者の伊藤亜紗氏、映画研究者の北村匡平氏によるトークセッションが行われた

本作は、第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にて日本映画として初となる脚本賞を受賞。また、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も受賞し、4冠受賞という偉業を達成。さらには、トロント国際映画祭などへの正式出品も決定している。

映画監督、美学者、映画研究者というそれぞれのプロフェッショナルが集まった本イベント。濱口監督と伊藤亜紗氏は大学のゼミの同級生として、学部は違うながらも同じ授業を受けた仲であり、濱口竜介監督と北村匡平氏は今回が初対面だという。

『ドライブ・マイ・カー』を観た感想について、伊藤氏は「3時間の映画ということで大丈夫かなと不安でしたが、びっくりするくらいあっという間。時間が流れていくというよりは、自分の中に時間が溜まっていってシンクロしていくような不思議な感覚でした」と語り、続けて北村氏は「『ハッピーアワー』の上映の時に、間違いなく2010年代映画のナンバー1だと思っていたが、『ドライブ・マイ・カー』が『ハッピーアワー』の一歩先を行っている。『ドライブ・マイ・カー』を観た時に一番思い出したのが、黒澤明の『羅生門』という作品なんです。主題は違えども芥川龍之介の『藪の中』を『羅生門』や『偸盗』を組み合わせて黒澤明が独自解釈したのと同じように、『ドライブ・マイ・カー』では「女のいない男たち」の中の「ドライブ・マイ・カー」、「シェエラザード」、「木野」もあわせて村上春樹的観点を抽出した上で、濱口ワールドが繰り広げられているという点で、“これは21世紀の『羅生門』だ”と感じました」と絶賛。

続けて、『ハッピーアワー』や『寝ても覚めても』にも共通する、“声”のこだわりが感じられる濱口作品のキャスティングについて北村氏から問われると、濱口監督は「率直に話してくれている“声”、嘘をつかないような…今、この人と自分はちゃんとコミュニケーションが取れている、と感じられる人に役をお願いしています」とキャスティングのこだわりを明かした。

ドライブ・マイ・カー

ひたすら役者との本読みにこだわるという通称“濱口メソッド”について、濱口監督は「『ハッピーアワー』くらいからすごく本読みにはこだわっています。ひたすら無感情、無抑揚で何度も何度も読んでもらう。無感情な状態でひたすらテキストを覚えて、何度か寝かせたりしながら、セリフが身体に刻み込まれた状態で口から自然に出てくる。発音が身体化されることによって本番の演技で開放される、リラックスした状態でセリフが放たれるという方法を意識しています」と濱口作品に共通する本読みへの徹底した思いを語った。

濱口作品での他者とのコミュニケーションの描き方について、伊藤氏は「人間関係というより、“存在関係”を描いている。人と人との関係がまるでタバコの煙のような…人が吸っていると自分も吸いたくなるような、誰かの行動によって自分にも繋がっていくという点で共振、共鳴を感じます」と語ると、濱口監督は「自分の映画を人間ドラマだと言われるとどこか違和感があったんですが、人間が関係することで、その存在が影響を及ぼすものをずっと見ている。役者とテキストの関係もそうだと思うし…今までいただいた感想の中でも一等嬉しいです」と伊藤氏の賞賛にはにかんだ。

ドライブ・マイ・カー

最後に一人ずつメッセージを振られると、北村氏は「間違いなく『ハッピーアワー』の一歩先を行く作品。自分の身体と同化した車を手放し、委ねることによって自分の感覚が開かれていくという感覚をぜひ体験していただきたいと思います。可能であればぜひ2回観た方がいいと思います」と熱を込めて語り、伊藤氏は「人と単に分かりあう、共感ということではなく、郷にじっくりと入っていき、自分の心の傷に向き合うということ。濱口監督は人間を違う視点で描いている監督。大学時代の作品を観た時はもっと実験的な監督になると思っていたが、人間の心を描いているというスタンスに同世代としてとても感銘を受けます」と同級生として思いのこもったコメントをかけた。

濱口監督は、最後に「伊藤さんとは、同級生としてやっていた人とこうやって再会が出来てとても嬉しかったです。また、北村さんが今日仰っていた“委ねる”というテーマに関しては正直自分では意識していなかったのですが、今まで撮影したドキュメンタリー作品の中で自分が撮影したものの編集を人に委ねる、手放すということでまた新鮮な作品作りが出来るという過去の経験を思い出し、また違った観点から映画を楽しめるようなお話が聞けたと思います。ついに20日公開なのでぜひ楽しみにしていただければ」とこれから映画を観る方に向けてメッセージを贈った。


ストーリー
舞台俳優であり、演出家の家福悠介。彼は、脚本家の妻・音と満ち足りた日々を送っていた。しかし、妻はある秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまう――。2年後、演劇祭で演出を任されることになった家福は、愛車のサーブで広島へと向かう。そこで出会ったのは、寡黙な専属ドライバーみさきだった。喪失感を抱えたまま生きる家福は、みさきと過ごすなか、それまで目を背けていたあることに気づかされていく…

作品タイトル:『ドライブ・マイ・カー』
出演:西島秀俊
三浦透子 霧島れいか
パク・ユリム ジン・デヨン ソニア・ユアン
ペリー・ディゾン アン・フィテ 安部聡子
岡田将生
原作:村上春樹「ドライブ・マイ・カー」(短編小説集「女のいない男たち」所収/文春文庫刊)
監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介 大江崇允
音楽:石橋英子
製作:『ドライブ・マイ・カー』製作委員会
製作幹事:カルチュア・エンタテインメント、ビターズ・エンド
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
2021/日本/1.85:1/179分/PG-12
配給:ビターズ・エンド

公式サイト:dmc.bitters.co.jp
公式Twitter:@drivemycar_mv
公式Facebook:@drivemycar.mv
公式Instagram:@drivemycar_mv
コピーライト:(C)2021『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

8月20日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

 

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