『嘘はフィクサーのはじまり』ヨセフ・シダー監督のインタビュー到着!フィクサー役にリチャード・ギアを起用した理由とは?

嘘はフィクサーのはじまりリチャード・ギア主演『嘘はフィクサーのはじまり』が10月27日(土)、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMA ほか公開となる。この度、ヨセフ・シダー監督のインタビューが到着した。

『愛と青春の旅立ち』、『プリティ・ウーマン』、『HACHI 約束の犬』など幅広く活躍を続け、〈この世で最もセクシーな男性〉にも選ばれたリチャード・ギア。2枚目ハリウッドスターが厄介事を引き受けまくる自称フィクサーを怪演し、一流の批評家たちが大絶賛。撮影の1年前から役作りを研究し、歩き方から表情、耳の立ち方(!)にいたるまで、お調子者だけど憎めないキャラクターを作り上げた。ノーマンを翻弄する首相役には、現在絶賛公開中の『運命は踊る』で主演を務める、イスラエルを代表する俳優リオル・アシュケナージ。他にも、『クィーン』のマイケル・シーン、コーエン兄弟作品などの個性 派スティーヴ・ブシェミ、女検察官役にシャルロット・ゲンズブールなど国際色豊かな俳優たちが脇を固める。『Pina/ピナ・ バウシュ踊り続けるいのち』や、リオ五輪閉会式での「君が代」のアレンジを手がけた三宅純が音楽を担当。存在を認められたい、偉い人と繋がってあわよくば大金を手にしたい。そんな万国共通の欲望を笑い、自省したくなるブラックすぎる忖度コメディの傑作が、政治的混乱中の日本に上陸する。

NY生まれ、6歳でイスラエルに移住し、二つの文化の間で育ったヨセフ・シダー監督は、デビュー作でいきなりイスラエル・アカデミー賞で6部門を獲得。2作目『CAMPFIRE』でベルリン映画祭ドンキ・ホーテ賞、3作目『ボーフォート レバノンからの撤退』でベルリン映画祭銀熊<監督>賞、アカデミー賞(R)外国語映画賞にノミネート、4作目『フットノート』ではカンヌ映画祭で脚本賞を受賞し、前作に続きアカデミー賞(R)外国語映画賞にノミネートされた。
これまで多数の映画祭受賞歴があり、2作連続でアカデミー賞(R)外国語映画賞ノミネートという快挙を成し遂げた監督は、今回解禁されたインタビューで、リチャード・ギアについて「何ヶ月も役作りについて話した。彼がいたからこの映画ができたと思う!」とコメント、三宅純については「常にユーモラスを感じさせる部分があり、ノーマンにユダヤ人の音色を与えたんだ。」と二人を賞賛。他にも、ノーマンの役柄や衣装、演出方法について語っている。

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『嘘はフィクサーのはじまり』ヨセフ・シダー監督インタビュー

―リチャード・ギアがノーマン・オッペンハイマーを演じるというのが大変に面白いと思いました。主演に選んだ理由をお聞かせください。
本作のプロデューサーであるオーレン・ムーヴァーマンが前に『ロスト・イン・マンハッタン 人生をもう一度』でリチャードと一緒に仕事をしていた。その作品で彼は素晴らしい演技を見せていて、オーレンが紹介してくれたんだ。リチャードがいたからこの映画が実現できたと思う。彼がノーマンを演じることが決まって映画のファイナンスも決まった。彼がノーマンになることを望んでくれて、私はこの上なく幸せだった。
どんな役者でも自然にノーマンのような人物はいないと思う。しかし、私たちの中には間違いなくノーマンたる部分が存在しているし、よい役者というのはその要素をうまく取り出せて見せることができるんだ。リチャードは非常に熟練した役者です。しかし、彼が演じてきた役というのは、ある種似ている役が多かったと思う。この映画は彼の中にある非常に魅力的で深い部分を引き出して演じるという機会を与えることができたと思うし、今まで彼がこのような役を演じてこなかったということが私にとってはとてもエキサイティングに思えた。リチャードが作り上げるノーマンという人物が、彼自身にとって自然になるために何か月も一緒にキャラクターについて話し合った。役作りにはいろんな方法がある。体形を変えたり、見た目を変えたり。しかしこの世界で行き場がなく、自分自身を辱めることを望み、誰かにとって重要でありたい、というノーマンを構成する要素は映画スターとは無縁だ。なのでリチャードは6か月にわたり彼自身とは真逆の世界に生きるキャラクターの所作やボディランゲージを会得しなければいけなかったんだ。

―ノーマンの衣装はどのように決まったのですか?
いくつか試してみて、リチャードを今まで私たちが見ていた姿とは全く違うように見せたかった。誰の目にも留まらず地味で彼のパーソナリティ自体を変えてしまうぐらいに。なので耳にちょっとした細工をして、あのようなスーツを着せたんだ。今までリチャードが演じてきた役は様々なかっこいいスーツを着ていたと思うが、今回は今までと全く違うものだった。ずっと身に着けていたアルマーニのスーツが体に馴染むというようなことは本作では無縁だ。ノーマンは常にコートとカバンを身に着けている。また常に人と距離を保っていて、近くに来られるのを嫌がるんだ。嘘を見破られるからね。そういう雰囲気を出すためにも的確な衣装、それらしいメイクアップ、いかにもというような髪型、仕草でなければならかなった。

―画面を2分割してノーマンの状況を見せているのが印象的でした。
ノーマンは招かれていないにも関わらず、常に他の人のスぺースに入り込もうとする。物語のある時点で彼がエシェルと繋がったことから、他の人にとって必要な存在となるんだ。そしてノーマンは人々の輪の中に入ることができるようになり、そこからさらにもっと奥に入っていこうとする。呼ばれていないところに無理矢理入り込んでいく。それを可能にするのは携帯電話だ。画面を2分割することによってノーマンが誰かのプライベートなところに、入り込んでいく様子を視覚的に表したんだ。

―実際にノーマンのような人物は監督の周りにもいますか?それは映画の関係者ですか?
はい、私自身の経験でもある。説明しがたい行動をする人はたくさんいる。どのような仕事の人でも。いわゆる人と人の間にいる人物たち、例えばアイデアを持っている人とお金を持っている人とか。複雑なんだ。ノーマンから得たマントラ(真言)がある。映画の終盤で「なぜいつも話をややこしくするんだ?」というセリフに対して、ノーマンは「それは悪いことか?」と当たり前のように答えるんだ。人生において私が一番楽しんだことも、実際非常に複雑なことだった。

―日本人の三宅純に音楽を依頼したのは何故ですか?
ちょうど仮の音楽でクルト・ヴァイルの「三文オペラ」を使っていて、ハル・ウィルナーという音楽プロデューサーに「クルト・ヴァイルの音楽を現代に移せるようなミュージシャンを探している」と伝えたら、「パリにひとりいるよ」と言われたんだ。しかも日本人だと。クルト・ヴァイルのようなペーソスとサイズ感のあるサウンドを作りだせる実力を持ちながら、さらりとこなしてしまうような人を見つけることができたんだ。エモーショナルで、ドラマティックでもあり、常にユーモアも感じさせる部分がある。それが彼のスタイルだ。彼は日本人の感受性を似てして、ノーマンにユダヤ人の音色を与えたんだ。それを実現したのは驚くべきことだ。ノーマンの魂には普遍的な部分がある。文化的に特定されているわけではないんだ。しかしノーマンの魂やモチべーションは日本人の作曲家によって、見事に観客へとリンクさせることができたんだ。

―ノーマンがエシェルに靴をプレゼントしましたが、靴をモチーフに選んだ理由はありますか?
もし私がもっと深く考えていたら、靴を選択しなかっただろう。映画が完成した後、なぜ靴を選んだのか改めて思い返してみた。記憶を遡ると過去にアカデミー賞のセレモニーのときに、有名デザイナーからタキシードと靴が送られてきたことがあったんだ。セレモニーが終わり、そのタキシードと靴をどうしたらいいかわからず、私はクローゼットに仕舞ったままにしていた。タキシードはそんなに着る機会がないので欲しいと思わなかったが、靴は内心では欲しいと思っていた。そして、一応妻にどうしたらいいのか相談し、結局はお店に連絡をして返却した方がいいのかと尋ねた。すると「もちろん。返却してください」と、ピックアップの人が私のところにやって来た。返却までの数時間、靴を履いていたら、ピックアップの人が来た時には、なんだか名残惜しく感じてしまった。2000ドルの靴を所有するチャンスだったかもしれない。お店のスタッフはおそらく返却するなんて思ってもいなかったはずなので、自分が馬鹿げたことをしたのではないかと思ったんだ。恐らくそのことが私の頭にずっと残っていて、台本に反映されたのだと思う。

ストーリー
首相と親しくなるには1足の革靴から!?
ニューヨークを牛耳るユダヤ人社会に食い込もうと、自称フィクサーのノーマンは小さな嘘を積み重ねて人脈を広げてきた。ある日、イスラエルのカリスマ政治家エシェルに偶然を装って近づき、高価な革靴をプレゼントする。3年後。首相に就任したエシェルと再会を果たしたノーマンは、“首相のお墨付き”を武器に超大物たちの間で暗躍し始める。しかし過度の“忖度”はさまざまな混乱を巻き起こし、国際紛争に発展しそうな事態を招いてしまう・・・。

作品タイトル:『嘘はフィクサーのはじまり』
出演:リチャード・ギア、リオル・アシュケナージ、マイケル・シーン、スティーヴ・ブシェミ、シャルロット・ゲンズブール、ダン・スティーヴンス
監督・脚本:ヨセフ・シダー
音楽:三宅純
2016/イスラエル・米/英語・ヘブライ語/118分/ビスタ/5.1ch デジタル
原題:Norman: The Moderate Rise and Tragic Fall of a New York Fixer
後援:イスラエル大使館
配給:ハーク
配給協力:ショウゲート

公式サイト:www.hark3.com/fixer
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10/27(土)よりシネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次

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