【レポート】映画『へレディタリー/継承』トークイベントに映画評論家の町山智浩氏登壇!監督から聞いた作品の裏話を披露

へレディタリー/継承

「ホラーの常識を覆した最高傑作」「現代ホラーの頂点」と批評家から最高の評価を受け、全米を震撼させたホラー映画『へレディタリー/継承』が11月30日(金)に公開となった。主演は『シックス・センス』『リトル・ミス・サンシャイン』のトニ・コレット。本作で見せる鬼気迫る怪演で、既に来年のオスカー主演女優賞ノミネートが確実視されている。
この度、映画評論家の町山智浩さんをゲストに迎えたトークイベントが11月30日(金)に開催された。

『ヘレディタリー/継承』 町山智浩さん登壇トークイベント

日程:11月30日(金)
場所:TOHOシネマズ新宿(東京都新宿区歌舞伎町1-19-1 新宿東宝ビル3階)
登壇者:町山智浩さん(映画評論家)

「ホラーの常識を覆した最高傑作」「現代ホラーの頂点」と批評家から最高の評価を受け、“今年最恐のホラー”との呼び声高い映画『ヘレディタリー/継承』。エンディングで流れる「青春の光と影」(歌:ジュディ・コリンズ)の軽快なメロディーに乗って、にこやかに登壇した映画評論家・町山智浩さん。「先日、アリ・アスター監督にお会いして、本作についていろいろと話を聞いてきたんですよ。」と話しはじめ、「本作は様々なホラー映画の要素を取り入れていることはホラー好きの方なら気付かれているかと思うのですが、アリ監督は、『オカルトやホラーのふりをしているけれど、自分はそういったつもりでは作っていない。物語の後半部分が非常に肝となっていて、これは家族ドラマなんだ。』と言うんですよ!」と興奮気味にまくし立てた。アリ・アスター監督は本作を撮るにあたり、“家族の嫌な話の映画リスト”を作ったそうで、「劇中で主人公アニーが息子のピーターに対して『あなたなんて産みたくなかった』と告白するシーン。母親が息子を拒否することがとてもショッキングなのですが、ロバート・レッドフォードの『普通の人々』を観た時にアリ監督がとてもショックを受けたことを自分なりに解釈して具現化したと言っていました。」と町山さん。また、アン・リー監督『アイス・ストーム』を意識している点として、劇中でアニーの夫スティーブンが信号待ちをしながら嗚咽するシーンを挙げた他、アリ監督が好きだと挙げているイングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』やミヒャル・ハネケ監督『白いリボン』、『セブンスコンチネント』、ラース・フォン・トリアー監督『アンチクライスト』等からも多大なる影響を受けていると解説。日本の映画に影響を受けていることにも触れ、「クライマックスでピーターがひどい目に合うシーンは、溝口健二監督『雨月物語』や新藤兼人監督『鬼婆』を彷彿させます。『へレディタリー/継承』は家族の嫌な話の集大成なんですよ。」と本作の真髄を語った。
アリ監督が家族の嫌な話にこだわる点について町山さんは、「アリ監督自身の家族にあることが起きて、とても傷ついたことが影響していると言っていました。プライベートなことなので、と多くは語らないのですが、大切な存在であった弟に遺伝的な疾患か何かがあったみたいですね。」と明かし、「アリ監督は自分自身の傷ついた心を癒すためにこの映画を作ったそうです。劇中でアニーがミニチュアのドールハウスを作っていますが、元々は箱庭療法から始まってるんですよ。アニーは夢遊病という設定でしたよね。自分自身が家族をコントールできないことを治療する目的で箱庭療法を受けていましたが、皮肉にもアニーはもっと大きな箱庭で、運命というものに操られていたんですよ。」と説明した。他にも、劇中のいろいろなところにネタが隠されていると町山は言及。ピーターが学校で受けていた「ヘラクレス」の授業について、「ヘラクレス受難について先生が講義しているのですが、受難を自ら受けることを選ぶしかないという内容がまさにピーターの運命について語られていたんですよね。」と明かした。
本作の見どころについて、「何度見ても発見があると思います。僕自身もまだ気付いていないこともあるんじゃないかな。それぐらい『へレディタリー/継承』は様々な映画の影響を受けている作品です。アリ監督は、シナリオ作成に5年もかかったのは自分のトラウマを克服するのにかかった時間でもあると話していましたが、パーソナルな部分がないと映画って作れないんだと思います。」と町山さんは語り、「パンフレットにネタばらしや皆さんが疑問に思ったことの答えが書かれているので、それを読んだ上でもう一度観てみてください!」とリピート鑑賞を薦め、トークイベントは盛況のうちに幕を閉じた。

ストーリー
この家族の物語は、あなたの永遠のトラウマになる。
グラハム家の祖母・エレンが亡くなった。エレンは気難しく、謎の多い人物だった。エレンの遺品が入った箱には、「私を憎まないで」というメモが挟んであった。エレンの娘アニーは、過去の出来事がきっかけでエレンに愛憎入り交じる感情を抱いていた。自らの人生を精巧なミニチュアで表現するアーティストであるアニーは、エレンとの暗い思い出をミニチュアにし、セラピーにも通う。夫のスティーヴン、内気な高校生の息子ピーター、祖母に溺愛されていた対人恐怖症の娘チャーリーとともに、家族を亡くした哀しみを乗り越えようとしていたのだ。自分たちがエレンから忌まわしい“何か”を受け継いでしまってことに気づかぬまま・・・。
チャーリーの様子がおかしい。祖母が遺した“何か”を感じているのか、不気味な表情で虚空を見つめている。
彼女の部屋を覗くと、アニーがミニチュアを作るように、チャーリーも自分の部屋でこっそりと人形を作り続けていた。それは、動物の生首とガラクタでできた狂気のオブジェだった。
やがて奇妙な出来事がグラハム家に頻発する。不思議な光が部屋を走る、誰かの話し声が聞こえる、暗闇に誰かの気配がする・・・。そして最悪な出来事が起こり、一家は修復不能なまでに崩壊。そして想像を絶する恐怖が一家を襲う。
“受け継いだら死ぬ” 祖母が家族に遺した“何か”とは一体?

作品タイトル:『ヘレディタリー/継承』
出演:トニ・コレット、ガブリエル・バーン、アレックス・ウォルフ、ミリー・シャピロ、アン・ダウド
脚本・監督:アリ・アスター
製作:ケビン・フレイクス、ラース・クヌードセン、バディ・パトリック
撮影監督:パヴェウ・ポゴジェルスキ
編集:ジェニファー・レイム、ルシアン・ジョンストン
音楽:コリン・ステットソン
ミニチュア模型・特殊メイク:スティーブ・ニューバーン
提供:ファントム・フィルム/カルチュア・パブリッシャーズ
原題:HEREDITARY|2018年|アメリカ映画|ビスタサイズ|上映時間:127分|PG-12
配給:ファントム・フィルム

公式サイト:hereditary-movie.jp
公式twitter:@hereditarymoviejp
公式instagram:@hereditary.movie
コピーライト:(c)2018 Hereditary Film Productions, LLC

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