【レポート】『名付けようのない踊り』田中泯&犬童一心監督が東京国際映画祭上映後トーク、Q&Aイベントに登壇!

名付けようのない踊り
(C)2021 TIFF

『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』『のぼうの城』などで知られる犬童一心監督が、世界的なダンサーとして活躍する田中泯の踊りと生き様を追った映画『名付けようのない踊り』(2022年1月28日(金)公開)の東京国際映画祭上映後トーク、Q&Aイベントが実施され、田中泯と犬童一心監督が登壇した。

1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現、そのダンスの公演歴は現在までに3000回を超える田中泯。映画『たそがれ清兵衛』(02)から始まった映像作品への出演も、ハリウッドからアジアまで広がっている。そんな独自の存在であり続ける田中泯のダンスを、『メゾン・ド・ヒミコ』(05)への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影した。また、『頭山』でアカデミー賞短編アニメーション部門に日本人で初めてノミネートされた山村浩二によるアニメーションによって田中泯のこども時代が情感豊かに点描され、ぶれない生き方が紐解かれてく―。

『名付けようのない踊り』東京国際映画祭上映後トーク、Q&Aイベント

日時:11月6日(土)16:20~16:50
場所:角川シネマ有楽町
登壇ゲスト(敬称略):田中泯、犬童一心監督

上映の熱が冷めない満席の劇場で大きな拍手に迎えられ田中泯と犬童一心監督が登壇。ステージに登壇した監督は「撮影を始めてから3年ぐらいが経っていて、編集もとても長い期間がかかり、編集しても編集しても完成しなかった映画でした。ですので、やっとお客さんに観てもらえて、ようやく完成したんだと今日思いました。」と日本で初めての上映に感慨もひとしお。

そして田中は、「終わってよかったと思う気持ちもありますが、いつ区切りがつくのかな?というぐらいに、踊る場所すべて監督やチームの方が来ていたので、それがなくなってしまって、少し寂しい気持ちもします。ですが、こうして皆さんに観て頂けたのは、これからの僕には、さらに先に進めるという事なので、嬉しいことだと思っています。」と今の気持ちを述べた。

本作は田中のポルトガルでの公演に監督が同行した事がきっかけで出来上がったというが、監督は「『メゾン・ド・ヒミコ』のシナリオを読んでもらった時に、“僕は演技はできないけど、撮影する場所に一生懸命いる事はできる。それがダンスでやってきたことだから、それでもいいならやります”と言われて、ずっとその言葉が心に残っていて、その意味を確かめたいと思っていました。ポルトガルでの踊りを作品にするつもりはなかったけど、撮った結果、あの時の言葉を自分の作品の中で確かめみたいと思ったんです。」と、作品の始まりを明かした。

自らの踊りが映画になった気持ちを問われた田中は、「映像の為に踊るという事をしたつもりはなかった」と答えるが、続けて「私の踊りは、踊った場所の為のもの。映像の中の踊りは全くの別物ですが、踊りを見た犬童さんが、皆さんに面白く見えるように、目を惹きつけ、くぎづけになるように蘇らせてくれた。映画の中でも確かに僕が踊っていますが、映像の中の踊りは間違いなく犬童さんに踊りとして作りあげられたものなんです。そしてそれがかっこいい。踊りは見た人の中で生まれ変わりますが、犬童さんが映画作品として蘇らせてくれたのが、本当に嬉しい。これが今日一番伝えたかった事です。」と監督によって映像化された踊りについて熱く語った。

アカデミー賞(R)受賞歴を持つ山村浩二のアニメーションも本作の重要な要素の一つ。監督は「撮影した踊りを見ている間、泯さんの踊りがどういう風に作られているのか考えていました。泯さんの踊りはイマジネーションが連なって、常に変化していくものだと捉えていました。山村さんのアニメーションも同じで常にメタモルフォースしていて通じるものがあると思いました。他の人のアニメだと無理だと思いましたが、山村さんのアニメと泯さんの踊りが噛み合って面白いものができると感じました」と踊りのライブ感とアニメの融合の狙いを明かした。

続いて、写真家の操上和美が撮り下ろしたポスターに話しが及ぶ。“顔で踊る”事をテーマに撮影されたというが、田中は「操上さんのカメラが、顔から10cmぐらいで物凄く近くて、撮られながら顔の中の自分を探していました。操上さんに“旅に出ちゃったね”なんて言われながら、すごく長い時間撮影していましたが、それがとても楽しかったです。操上さんのフレームに切り取られている場所を強烈に感じながら、その中で踊っている感覚がありました。」と撮影秘話を明かし、出来上がったポスターにもとても驚いたと語った。

観客からのQ&Aでは、「1シーン1シーンものすごく豊かな時間が流れていると感じました。多様な時間の重要性が劇中でも語られていますが、時間について編集するうえで意識されたことは?」と質問が寄せられ、監督は「泯さんの踊る場所に行って踊りを見る、そしてその場所から帰ってくる。その感覚を一本の映画で表現したいと考えて編集しました。きっと、滝に打たれ浄化される感じに近い」と、実際に踊りを見て帰るまでの時間を、映画を通して体験してもらう事を意識したと明かす。

そして最後に、構成する中で気づいた事として、監督は「泯さんは“ダンスを踊るために農業で体を作る”という考え方はしていなくて、“農業をして出来上がった体、生まれた体で踊る”という考え方をしていて、ものすごく時間をかけて物事を進めている人だということに気づきました。」と語り、その田中の考え方をとても尊敬していると語った。「効率で進めるのではなく、時間をかけないと生まれないものの輝きや重さを考えて踊りを作る。その泯さんのやり方が今一番大事なことだと作りながら思いました」と、撮影の前には気づかなかったが、作品を作りながら大切な教訓を得たことを明かし、盛況のうちにトークは終了した。

名付けようのない踊り
(C)2021 TIFF

作品タイトル:『名付けようのない踊り』
出演:田中泯
石原淋 / 中村達也 大友良英 ライコー・フェリックス / 松岡正剛
脚本・監督:犬童一心
エグゼクティブプロデューサー:犬童一心 和田佳恵 山本正典 久保田修 西川新 吉岡俊昭
プロデューサー:江川智 犬童みのり
アニメーション:山村浩二
音楽: 上野耕路
音響監督:ZAKYUMIKO 撮影:清久素延 池内義浩 池田直矢
編集:山田佑介
助成:文化庁文化芸術振興費補助金
協賛:東京造形大学 アクティオ
制作プロダクション:スカイドラム
製作:「名付けようのない踊り」製作委員会(スカイドラム テレビ東京 グランマーブル C&Iエンタテインメント 山梨日日新聞社 山梨放送)
2021/日本/114分/5.1ch/アメリカンビスタ/カラー/G
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:https://happinet-phantom.com/unnameable-dance/
公式Twitter:@unnameabledance
公式Instagram:@unnameabledance
コピーライト:(C)2021「名付けようのない踊り」製作委員会

2022年1月28日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿バルト9、Bunkamura ル・シネマ他にて全国公開

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