【レポート】『火口のふたり』荒井氏晴彦×根岸氏吉太郎トークイベント“佑はまさに荒井晴彦が乗り移っているなと思った”

直木賞作家・白石一文による同名小説を原作とした映画『火口のふたり』が8月23日(金)より全国公開となる。本作は、主演に『きみの鳥はうたえる』、『アルキメデスの大戦』など数々の話題作に出演している柄本佑と、『彼女の人生は間違いじゃない』で大胆な演技を披露し、現在OA中のTBSドラマ「凪のお暇」にも出演している瀧内公美を迎え、日本映画界を代表する脚本家・荒井晴彦の監督第3作目となる、男と女の不確実な愛を描いた<R18>衝撃作。

8月16日(金)に、本作のトークイベントが開催され、脚本・監督を務めた荒井晴彦氏と、『遠雷』『ひとひらの雪』などで荒井氏とタッグを組んだ映画監督の根岸吉太郎氏が登壇し、ロマンポルノ時代の思い出や荒井氏の新作である『火口のふたり』ついて、トークを繰り広げた。

『火口のふたり』荒井晴彦×根岸吉太郎トークイベント

日程:8月16日(金)
場所:代官山蔦屋書店(渋谷区猿楽町17-5 代官山蔦屋書店1号館2階)
登壇者(敬称略):荒井晴彦監督、根岸吉太郎監督

トーク会場の代官山蔦屋書店で展開されている『火口のふたり』パネル展が若い女性に評判で、映画にも期待がかかりませんか?と問われた荒井氏は「そうかな(笑)試写室は混んでいるんだけど、よくあるんですよ、実際はお客が入らないってことは。」とバッサリ。皮肉なアンサーを発し会場を沸かせ、イベントがスタート。

本作について、根岸氏は「知り合いがたくさん集まって作っている映画なので、どうしても細かく観てしまうけど、とにかく一番は、今の時代に表現の問題だとか、いろんな事に対する忖度だったりだとか、一般の人が何を観たいと思っているかとか色々と考えるけど、全て取っ払ってこの題材を映画化したことがすごい。とにかく企画が素晴らしいね。」と盟友の新作を大絶賛。

登場人物が2人の本作は、原作より主人公たちの年齢が若くなっているが、荒井氏は「若い二人が演じてくれて、青春映画のようになって良かったよね。」と語り、対して根岸氏は、「遅れてきた青春。自分がそうだからかもしれないけど、スタイルとして「70年代」を感じるね。ひとつひとつの掴み方、あの時代の青春にダブっている感じ。佑はまさに荒井晴彦が乗り移っているなと思った。」と、本作が「70年代」を彷彿とさせ、柄本佑演じる賢治に当時の荒井晴彦氏が重なったと語った。

主演の柄本と瀧内について、根岸氏が、「佑とは三島由紀夫の近代能楽集ものをやっていた時、7年ぐらい前に一緒に仕事をしたことがある。家も近所なのでちょくちょく会います。瀧内さんには試写の後に初めて会って、荒井氏さんの悪口で盛り上がりましたね(笑)」と軽やかなジョークで観客を和ませた。また、本作を鑑賞した映画監督の青山真治氏が、「70代とは思えない瑞々しさを感じた」と絶賛したという話について、根岸氏は「(荒井さんは)見かけがそもそも若いよね(笑)。今回は、過去の青春、荒井晴彦が撮るべき作品、作家としての映画、ある種、自画像として登場人物に乗っかっているなと思った。アーテイスト、シナリオライター、監督しての荒井晴彦の軌跡が、今回はきちんと出ていて、賛否両論あっても、そこがまた良いなと思っています。」と、荒井氏がまた新しい境地に達したと感じたと明かす。

過去2作品に続いて下田逸郎の曲を本作でも使っている事について、「歌詞も脚本の一部だと思っていて、彼の書く詩が良いので今回も使っている。」と、監督1作目の『身も心も』、2作目の『この国の空』でも印象的に使われた下田逸郎の“詞”が本作でも重要な役割を果たしていることを荒井氏は明かした。

荒井監督作品すべての撮影を務め、根岸監督ともタッグを組んだことがある、撮影監督の川上晧市氏について、根岸氏は「川上さんはどこに光があって、どうやって当たっているのか、自然に撮ることにこだわっている。ギリギリ写っているか否かぐらいのものすごく少ない光で撮っているんですよ。川上さんを古くから知るカメラマンも『火口のふたり』を観て、川上さんが原点帰りしていてとても良かったと言っていて、私も撮影が素晴らしかったと思います。」と、撮影監督の川上の撮影についても賛辞を送った。

話題は二人が名を馳せたロマンポルノ時代に及び、当時との違いを問われた根岸氏は、「特に違いは感じない。今も面白ないと興味を引く女優さんはたくさんいる。いつの時代もそうだけど、ないものねだりなんですよ。瀧内公美さんもそうだけど、素晴らしい女優は今もいますからね。瀧内さんはテレビドラマ「凪のお暇」にも出ているけど、あのドラマで演じている役柄と『火口のふたり』では全く雰囲気が違う。すごいなと思いますよ。素晴らしい女優さんだと思います。」と本作の身体を張った全身全霊の芝居が評価されている直子役の瀧内公美に大絶賛を送った。

トークも終盤に差しかかかり、次回作の構想について、荒井氏は「寿命との競争だからね。今はすぐにでも次の作品を撮りたい。昔は二本撮ってもまだ監督ではなくて、三本目でようやく監督と認められたという感じだからね。ようやくスタート。『火口のふたり』がヒットしてくれて、次もまた撮れたらいいなと思っています。」早くも次回作への熱意を見せ、根岸氏も「大学で教えるようになってから、いろいろと忙しくて、何回か準備して、シナリオを描いたりもしたけどなかなか軌道に乗らなかった…。でもここのところ、ようやく時間が作れるようになってきたので、ぜひ撮りたいと思っていますよ。」と、10年振りの新作へ意欲を見せた。

最後に来週に公開を控えた本作ついて、荒井氏が「とにかく映画館に行って観てもらいたい。それしかないね。あ、あと悪口は言わないで(笑)」と語り、再び会場を沸かせ本イベントは終了した。

ストーリー
十日後に結婚式を控えた直子は、故郷の秋田に帰省した昔の恋人・賢治と久しぶりの再会を果たす。新しい生活のため片づけていた荷物の中から直子が取り出した1冊のアルバム。
そこには一糸纏わぬふたりの姿が、モノクロームの写真に映し出されていた。
蘇ってくるのは、ただ欲望のままに生きていた青春の日々。
「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」
直子の婚約者が戻るまでの五日間。身体に刻まれた快楽の記憶と葛藤の果てに、ふたりが辿り着いた先は―。

作品タイトル:『火口のふたり』
出演:柄本 佑 瀧内公美
原作:白石一文「火口のふたり」(河出文庫刊)
脚本・監督:荒井晴彦
音楽:下田逸郎
製作:瀬井哲也 小西啓介 梅川治男
エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎 森重 晃
プロデューサー:田辺隆史 行実 良
写真:野村佐紀子
絵:蜷川みほ
タイトル:町口 覚
レイティング:R18+
配給:ファントム・フィルム

公式サイト:kakounofutari-movie.jp
コピーライト:(C)2019「火口のふたり」製作委員会

8/23(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開


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