【レポート】映画『せかいのおきく』阪本順治監督、第22回ニューヨーク・アジアン映画祭にて生涯功労賞受賞!

せかいのおきく
(C)New York Asian Film Festival

黒木華、寛一郎、池松壮亮らが出演するSDGs時代劇映画『せかいのおきく』(上映中)の監督を務めた阪本順治が、ニューヨーク・アジアン映画祭にて「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント賞(NYAFF Star Asia Lifetime Achievement Award)」を受賞。現地時間7月16日に行われた授賞式に阪本監督が登壇、本作上映後に行われたQ&Aにも出席した。

ニューヨーク・アジアン映画祭(NY Asian Film Festival)は北米でもっとも由緒あるアジア系映画祭で、第22回を迎える今年は7月14日から30日まで開催。「スター・アジア・ライフタイム・アチーブメント(Star Asia Lifetime Achievement)賞」は、「スターアジア生涯功労賞」と翻訳され、「長年優れた作品にて、何世代にも渡る映画製作者と観客に影響を与えてきた、特別な才能の人物に与えられる賞」として、過去には、ツイ・ハーク(2011年)、ジャッキー・チェン(2013年)、レオン・カーフェイ(2017年)、ユエン・ウーピン(2019年)、アン・ホイ(2021年)など錚々たる映画監督たちが受賞しており、日本からは岩井俊二(2016年)、原田眞人(2018年)、清水崇(2022年)に続く、4人目の受賞となる。

阪本順治監督は、ニューヨークで行われた授賞式に登壇。阪本監督は、今までたくさんの海外映画祭から招待されたが、「私個人の賞を頂くのは初めて」と改めて喜びをかみしめた様子。「日本の映画界に入って43年」「映画監督をはじめて35年」「最新作『せかいのおきく』がちょうど30本目の監督作品」と、自身のキャリアを振りかえり、「その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います」と謝辞を述べると、会場から大きな拍手が起こった。

せかいのおきく
(C)New York Asian Film Festival

上映後のQ&Aでは、本作の特徴の一つでもある、糞尿を売り買いし、循環型経済が成り立っていた江戸時代を物語背景として描いた点について、ニューヨークの観客も興味津々の様子で多くの質問があがった。阪本監督は「出演者もこんな「うんち」だらけの映画は初めてです(笑)。作り物ですが廃棄された食材を利用して作っていたので、発酵した匂いがしてきて臭いのは仕方がない。皆さん笑っていましたね。笑うしかない。「うんち」の美術スタッフはいろいろ改良を重ねて、素材も変えたり試行錯誤しました。映画では身体につくシーンもあるので、目や口に入っても害のないものを作るために、廃棄された食材を利用したり。端的にいうと「食べられるうんち」にたどり着いたんです(笑)」と撮影裏話を明かした。

せかいのおきく
(C)New York Asian Film Festival

更には日本のハイテクなトイレ事情にも話題がのぼり、阪本監督は、おしり洗浄付きトイレが日本で発達したきっかけなど、知識を披露する場面もあった。

最後に阪本監督は、「うんちの話ばっかりでしたね(笑)。ありがとうございました」と挨拶すると、会場内は大きな拍手と笑いに包まれた。

せかいのおきく
(C)New York Asian Film Festival

さらに、本作で黒木華演じる主人公おきくの父親役として出演、おきくと恋仲になる中次を演じた寛一郎と親子共演を果たした、阪本組常連俳優の佐藤浩市よりコメントが到着 。佐藤は「知識と経験だけで創作することを潔しとしない阪本順治監督は常にこれまでの自身の作品を超えることを渇望し、チャレンジしています。今回の受賞はそんな阪本監督のもの造りに対する栄誉かと。おめでとうございます!」と受賞を祝福した。

映画『せかいのおきく』は、江戸時代末期を舞台に、声を失った武家の娘おきくと雨宿りで出会った若者ふたりが過酷な青春を共に駆け抜ける――厳しい現実にくじけそうになりながらも、心を通わせることを諦めない若者たちの姿を描き出す恋と青春の物語だ。

4月28日より劇場公開が始まると、主人公のおきくを演じた黒木華の心に迫る声なき演技に多くの称賛の声が寄せられるなど多くの映画ファンの心を鷲掴みにしており、現在も全国の劇場で公開中だ。

阪本順治監督 授与式でのコメント全文

まずはニューヨーク・アジアン映画祭に感謝したいと思います。ありがとうございます。
僕は今年で、映画監督をはじめてから35年になります。
今まで海外の映画祭からたくさんの招待をして頂きましたが、私個人の賞を頂くのは初めてです。
今から43年前、僕が22歳の時に日本の映画界に入りました。
その時の僕のパートは大道具でした。腰にノコギリや金づちをぶら下げて、撮影現場を走り回っていた僕が、将来このような賞をもらえるとは夢にも思っていませんでした。
今から見て頂く『せかいのおきく』はちょうど30本目の作品になります。
その30本の作品に関わったすべての人に感謝したいと思います。そして、映画ファンの皆様にも、ありがとうございました。


イントロダクション
日本映画界を長年にわたり牽引してきた阪本順治の監督30作目は、初のオリジナル脚本による時代もの。社会の底辺を生き抜く庶民に目を向け、苦難に直面しながらもたくましく、したたかな彼らの姿を通し、〈人と人のぬくもり〉と〈いのちの巡り〉を映し出す。主演は黒木華。共演に、寛一郎池松壮亮。さらに眞木蔵人佐藤浩市石橋蓮司らベテラン俳優が絶妙なアンサンブルを見せる。

物語の背景には、糞尿を肥料として農業に用いるなど、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の最先端にあった江戸時代の日本の風景が重ねられている。日本を代表する美術監督であり、本作で企画・プロデュースを務めた原田満生は「この映画で観る人の環境意識が変わるとは思わないが、こんな時代があったことを多くの人たちに、特に若い世代の人たちに知ってもらいたい」と語っている。

ストーリー
日本が世界の渦に巻き込まれていく江戸末期。寺子屋で子供たちに読み書きを教えているおきくは、ある雨の日、厠(寺所有の公衆便所)のひさしの下で、雨宿りをしていた紙屑拾いの中次(ちゅうじ)と、下肥買いの矢亮(やすけ)と出会う。武家育ちでありながら今は貧乏長屋で質素な生活を送るおきくと、古紙や糞尿を売り買いする最下層の仕事につく中次と矢亮。侘しく辛い人生を懸命に生きる三人はやがて心を通わせていくが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ、声を失ってしまう…。

作品タイトル:『せかいのおきく』
出演:黒木華 寛一郎 池松壮亮 眞木蔵人 佐藤浩市 石橋蓮司
脚本・監督:阪本順治
製作:FANTASIAInc./YOIHI PROJECT
制作プロダクション:ACCA
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア

公式サイト:sekainookiku.jp
公式Twitter:@okiku_movie
「YOIHI PROJECT」公式サイト:yoihi-project.com
コピーライト:(c)2023 FANTASIA

4月28日(金)より全国公開中

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