【レポート】『サマーフィルムにのって』松本監督と映画作りに励む高校生たちが熱く語り合う!トークイベント実施

サマーフィルムにのって

伊藤万理華が主演を務める映画『サマーフィルムにのって』(8月6日(金)公開)のトークイベントが実施され、松本壮史監督と映画感想TikTokerのしんのすけ、そして今まさに映画作りに熱を注ぐ高校生(OB含む)3名が登壇した。

本作は、勝新太郎を敬愛する時代劇オタクのハダシ(伊藤万理華)が、自分の書いた脚本の主役にぴったりな青年・凛太郎(金子大地)と出会い、親友のビート板(河合優実)、ブルーハワイ(祷キララ)らとともに、映画づくりに駆け抜ける高校最後の夏を描いた物語。

学生とみる『サマーフィルムにのって』トークイベント

日時:7月26日(月)15:15~16:05
場所:アキバシアター
トークゲスト:松本壮史監督、しんのすけ(映画感想TikToker)、戸梶美雪さん(高知学芸高校卒 二松学舎大学2年)、加藤大空さん(神奈川県立白山高校放送部3年)、埜邑明日加さん(三田国際高校学生団体 PUZZる3年)

まずはこれまで様々なCMやMVで映像作品に携わってきた松本監督が初めての長編映画である『サマーフィルムにのって』を制作した背景について、「もともと青春映画を撮ろうと思っていて、30歳の時に20代に影響を受けたいろんなものを全部詰め込んで作ろうと動き始めました。それが2018年頃のことなのですが、ちょうど同じ頃に30秒~1分くらいのスマホで見る縦型の映像制作の依頼を結構頂いて。2時間で映画を撮りたいと思っているのに、映像業界はそういう方向にシフトしていくのかなという不安もあって、その気持ちが物語に反映されている部分もあります」と振り返る。さらに、短尺の映像に需要があるというだけでなく、倍速再生といった昨今の視聴方法にも触れ、「僕が今撮影しているテレビドラマがあるのですが、先日その感想をTwitterで読んでいたところ、“倍速で見たけどなかなか面白かった”と書かれていて。倍速でも面白いのか!倍速で見る人っているのか!と驚きでした」と明かす。

登壇した学生の友達や知り合いにも倍速再生や、ファスト映画を活用している人が多いようで、埜邑さんは「友達と映画の話をしていたら、“観たことあるよ”と言っていたのになぜか話が噛み合わないことがあった。聞いてみると、ファスト映画を見たことを“映画を観た”と言って話していたんです」と身近なエピソードを披露。

一方、加藤さんは「僕はファスト映画を結構見ていたんです。映画ではより細かい演出や映像などに集中したいから、ファスト映画であらすじを把握してから本編を観るといった予習のような使い方をしていました。先日、問題になるまではファスト映画として見ていたという感覚はなく、YouTubeのひとつのコンテンツとして普通に見ていたという感じです」とファスト映画を一種のツールとして活用していた。

しんのすけさんは「2019年頃からNetflixで倍速再生機能が追加され、つい最近ファスト映画も大きな問題となりましたが、時代性も含めて、今はどこかコスパを重視した方が偉いみたいな文化があるように思います。映像及び映画といったコンテンツも消費する世界になっていってるのかなと」と意見。

こういった現状に対して、映画の作り手としてはどう感じるか問われると、松本監督は「編集室で深夜まで“あと0.5秒だけ間を詰めた方が余韻が…”とかあーだこーだやっているのがまるで意味がなくなってしまうのかと。実際にファスト映画を見てみると、情報の圧縮になっていて好きなシーンの余韻が全部なくなって…これで一本観たことになるのかと疑問でした」とファスト映画への率直な感想を述べた。

戸梶さんは「悲しい気持ちはあります。これで映画一本観た気になられているのは怖いなって思ってしまう」、埜邑さんは「友達になぜファスト映画を見たのか聞いてみたら、映画はあらすじだけを知っていればいいという感覚だったんですね。もちろんストーリーは大事ですが、映画は物語性もありながら視覚的・聴覚的にいろんな要素で成り立っている映像として価値のあるものだと思っています」とファスト映画との違いについて意見。

しんのすけさんは「ファスト映画についてはデメリットとメリットどちらもあるとは思っています。先日、損害額が約956億というセンセーショナルなニュースがありましたが、これは2時間の作品を10分に圧縮し、一本の映画として無料配布したという捉え方でこの金額が出たんですね。でも、視聴者にとってはメリットもある。そして、違う面から見てみると、YouTubeで映画のタイトルを検索した時にその作品のファスト映画がトップに出てくることが問題で、これは映画業界の怠慢だとも思っています。公式の動画がもっとバズる方法を考えなくてはいけないと思います」と映画業界の問題へも言及した。

松本監督から実際に今の若い子たちは映画館で映画をどれくらい観るのか、映画好きの人はどれくらいいるのかと質問が飛ぶと、戸梶さんは「映画館で観るというよりも、家でスマホやテレビでながら見をしている人が多いなという印象」と回答。それに対して、しんのすけさんは「映画ファンが多い僕のアカウントで、映画の視聴形態に関するアンケートを取ったが、スマホやタブレットで観る人と映画館へ行く人のパーセンテージが同じだったんです。映画ファンでもそうなのだから、一般的に見るとかなり多くの人がスマホやタブレットでの視聴を選択しているのだなと感じました」と視聴形態の変化について述べた。

そんな時代にあっても、本作の登場人物である高校生たちはひたむきに映画作りに打ち込んでいく。同じように、誰でも簡単な映像が作れる時代において、あえて映画という形を選んだ学生たちにその理由を聞くと、加藤さんは「僕は放送部に所属していて、はじめはYouTubeをやりたいと思っていたんです。その方が楽だし、始めやすい、費用もかからない。でも、脚本、音響や照明など映画の知識を深めていくなかで、YouTubeの動画制作では味わえない高級感があると感じました。また、ストーリーで感動する、泣けるというのも映画ならでは。子供のような存在の自分の作品で泣いてくれるのは映画しかないと思う」、戸梶さんは「時間もお金も労力もかかるからこそ、映画作りはすごく楽しいんです。簡単に動画が作れるなかで、あえて大変なことをする楽しさというのが映画にはある」、埜邑さんは「大きな違いは消費物かそうでないかだと思っています。YouTubeやTikTokの映像は一回見て終わるものという印象があります。映画は芸術性があるし、そこに作った人と受け取った人の対話があると思うんです」とそれぞれに映画作りへの想いを打ち明ける。

そんな彼らが実際に高校生たちの映画作りを描いた本作を観てどう感じたか問われると、戸梶さんは「私はハダシにかぶるところがあって。高校で映画作りを始めたときは、メンバーが私含め2人しかいなかったんです。とにかく人集めに奔走した記憶があります。ハダシが仲間集めをしているのを見て、これ私もやったなぁと共感しながら観ていました」、埜邑さんも「とにかく面白かった!共感できるシーンもたくさんあって、特に初めての撮影でなかなか思い通りにいかないというシーン。あの撮りたいシーンが撮り切れない絶望感。あった、あった!と思いました」と共感したシーンを語ると、松本監督が「撮りたいシーンが撮り切れなくて絶望というのは大人になってもありますよ(笑)」と回答。

加藤さんは「僕にとっては憧れの映画制作が描かれていました。うちの放送部はすべて緻密に作っていくスタイルなので、打ち合わせも多く、とても細かくて。たまに楽しくなくなってしまうこともある。でも、ハダシたちはみんなが能動的にやりたいようにやっていて、楽しそうでした。まさに、こんなふうにやりたかった!と思う作品でした」と感想を語ると、松本監督はもっと楽しんでやったらいいんだよ!とアドバイスしながらも「僕自身は高校で映画を撮ってなかったので、この作品は妄想。だけど、実際にこの時代に映画を撮ることを選んだ高校生たちにそう言ってもらえて、共感してもらえて嬉しいです」と喜んだ。

最後に、映画の持つ魅力について、戸梶さんは「短い時間ではなく、2時間でしか描けないものがあると思っています。遊園地にいるようなわくわく感は、長い時間にしかない特別なもの」、加藤さんは「映画館で観終わった後に感じる、なんとも言えない疲労感だったり、映画でしか味わえない独特な空気感というのがあると思っています」、埜邑さんは「映画は作った人の想いがあって、それを観た人が自分なりに取り込む。作った人と観た人が映画を通じてコミュニケーションを取っていると思うんです。それが一番の魅力です。上辺だけでなく、その中にあるものをもっと観ようとする。こういう文化は残ってほしいと思います」と映画に対する想いを語り合った。

そして、松本監督は「世の中にはいろんな娯楽が溢れているし、今は何をしていてもスマホを触っちゃう。映画館で映画を観る時って、本当にスマホを触わらずにストーリーに没頭することができる貴重な時間だと思うんです。特にエンドロールはストーリーも何もない、余韻で映画のことしか考えない時間。これは映画館でしか味わえない体験で、特別なものだと思います。ぜひこの作品も映画館で観てほしいです」と熱いメッセージで締めくくった。

ストーリー
時代劇オタクの女子高生監督が主役に抜擢したのはタイムトラベラー!?
勝新を敬愛する高校3年生のハダシ。キラキラ恋愛映画ばかりの映画部では、撮りたい時代劇を作れずにくすぶっていた。そんなある日、彼女の前に現れたのは武士役にぴったりな凛太郎。すぐさま個性豊かな仲間を集め出したハダシは、「打倒ラブコメ!」を掲げ文化祭でのゲリラ上映を目指すことに。青春全てをかけた映画作りの中で、ハダシは凛太郎へほのかな恋心を抱き始めるが、彼には未来からやってきたタイムトラベラーだという秘密があった――。

作品タイトル:『サマーフィルムにのって』
出演:伊藤万理華 金子大地 河合優実 祷キララ
小日向星一 池田永吉 篠田諒 甲田まひる ゆうたろう 篠原悠伸 板橋駿谷
監督:松本壮史
脚本:三浦直之(ロロ)、松本壮史
主題歌:Cody・Lee(李)「異星人と熱帯夜」(sakuramachi records)
制作プロダクション:パイプライン
配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト:phantom-film.com/summerfilm
公式Twitter:@summerfilm_2020
コピーライト:(c) 2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

8月6日(金)より、新宿武蔵野館、渋谷ホワイトシネクイントほか全国公開

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